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*さいはての西*

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『中継ステーション』クリフォード・D・シマック著/山田順子訳(ハヤカワ文庫SF)早川書房


アメリカ中西部、ウィスコンシン州の片田舎にある一軒家――ごくふつうの農家にしか見えないその建物は、じつは銀河の星々を結ぶ中継ステーションだった。その農家で孤独に暮らす、元北軍兵士のイーノック・ウォレスは百年のあいだステーション管理人を務めてきたが、その存在を怪しむCIAが調査を開始していた……異星人たちが地球に来訪していると知っているただひとりの男の驚くべき日々を描く、ヒューゴー賞受賞作
(出版社HP)


クリフォード・D・シマックは長年あこがれの作家でした。
エラリイ・クイーンにハマったときによくお邪魔していたサイト様に、シマックのコーナーもあり、その管理人さんのクイーン作品評が大好きだったので、この方がおもしろいと言うならきっとおもしろいだろうと期待していました。
ところが、当時(も今も)シマックの作品を新刊の日本語で読むことはほとんどできず、たまたまSF短篇集に収録されていた作品を2作ほど読む機会があったのですが、予想どおり自分の好きなタイプの作品でした。

それ以来まったく読むことができなかったところへ、この『中継ステーション』が新訳、しかも山田順子さんの訳で再刊されるなんて! 知ったときは小躍りして、買ってすぐはもったいなくて、読まずにずっと寝かしていました。


シマックの作品は、「田舎SF」とか「田園SF」とか呼ばれているそうです(笑)。
短編を読んだイメージからもそんな感じで、舞台はいつもウィスコンシン州であることが多いようで、おかげでわたくしのウィスコンシン州のイメージはシマックの描く世界です。
言ってしまえば、ど田舎なのでしょう。(映画『マダガスカル』の番外編「ペンギン大作戦」で「ここほんとに南極? ウィスコンシン州では?」というジョークがあって、アメリカでもそういうイメージなんだろうなと思って大笑いしました)

『中継ステーション』は、ウィスコンシン州にある、一見何でもない農家が舞台。宇宙人の中継ステーションを営むことになったイーノックは、宇宙人に見初められて(笑)不老不死になり、このステーションの管理人を務めています。
この宇宙人たちは理性的でおだやかで、ときにちょっとしたトラブルが起きないでもないのだけれど、イーノックはただただ通過していく宇宙人達を受け入れては送り出し、日々はただ静かに過ぎていきます。

宇宙人が出てきますが、まったく派手さはありません。派手なアクションもなし。女性キャラクターも出てきますが、そういうラブもなし。
冷戦の時代に、真の平和とは何かということを真摯に考え、伝えようとした作品だと思います。そしてこれがアメリカの人の書いた作品だというのが、また沁みてきます。
アメリカはときどきとんでもない国だと思うことがありますが、時代の一角に必ず善き心と自分にできることをしようという行動を伴った人が現れる分、日本より自浄作用がある国なのではないかと思うことがあります。

それが幻想だと言ってしまえばそれまでなのですが、いわゆる「古き良きアメリカ」の良心のような、あたたかさや居心地の良さが、シマックの作品にはあります。
どことなくシオドア・スタージョンにも通じるものがあるように感じました。ガジェットや壮大さで読ませるSFではなく、この人の文章や、描く世界にずっといたいと思うような心地よさがあります。読み終わったときに「ここ、これは傑作じゃあ!」と立ち上がってしまうような作品では無く、静かに本を閉じたら自分がにっこり微笑んでいることに気づくような。
これがSFだというのがとても面白い。SFというジャンルの幅の広さ、底の深さを改めて思ってしまいます。






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# by n_umigame | 2016-08-15 21:05 | | Trackback | Comments(0)

『丹生都比売 梨木香歩作品集』梨木香歩著(新潮社)



胸奥の深い森へと還って行く。見失っていた自分に立ち返るために……。蘇りの水と水銀を司る神霊に守られて吉野の地に生きる草壁皇子の物語――歴史に材をとった中篇「丹生都比売」と、「月と潮騒」「トウネンの耳」「カコの話」「本棚にならぶ」「旅行鞄のなかから」「コート」「夏の朝」「ハクガン異聞」、1994年から2011年の8篇の作品を収録する、初めての作品集。しずかに澄みわたる、梨木香歩の小説世界。
(Amazon.jpより)


梨木香歩さんの小説やエッセイが好きでひところよく読んでいたのですが、最近とんとご無沙汰で、久しぶりに読みました。
地味に日本古代史祭りが続いていまして、どうしても表題作が読みたかったのです。

とりあえず表題作だけの感想ですが、以下、ネタバレです。








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# by n_umigame | 2016-08-15 00:07 | | Trackback | Comments(0)

『ハイ・ライズ』(2015)



■映画「ハイ・ライズ」公式サイト


トム・ヒドルストン主演で、「太陽の帝国」「クラッシュ」で知られるSF作家J・G・バラードによる長編小説を映画化。フロアごとに階級が分けられ、上層階へ行くにしたがい、富裕層となるという新築タワーマンション。このコンセプトを考案した建築家アンソニーの誘いで、マンションに住み始めた医師のロバートは、住民のワイルダーと知り合い、マンションの中で起こっている異常事態を知ることとなる。「マイティ・ソー」シリーズのロキ役で知られるヒドルストンがロバート役を演じるほか、「ドラキュラZERO」のルーク・エバンス、「運命の逆転」のジェレミー・アイアンズ、「アメリカン・スナイパー」のシエナ・ミラーらが出演。監督は「ABC・オブ・デス」「サイトシアーズ 殺人者のための英国観光ガイド」のベン・ウィートリー。
(映画.comより)

こちらは映画の感想です。
原作(本)の感想はこちらへ。→

大筋は原作どおりで、やはりネタバレがどうこうという種類の映画ではないと思いますが、真っ白の状態で作品を楽しみたい方は、ここで回れ右でお願いします。
原作との違いについても触れています。








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# by n_umigame | 2016-08-14 23:12 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)

『ハイ・ライズ』J・G・バラード著/村上博基訳(創元SF文庫)東京創元社



ロンドン中心部に聳え立つ、知的専門職の人々が暮らす新築の40階建の巨大住宅。1000戸2000人を擁し、マーケット、プール、ジム、レストランから、銀行、小学校まで備えたこの一個の世界は、10階までの下層部、35階までの中層部、その上の上層部に階層化していた。全室が入居済みとなったある夜起こった停電をきっかけに、建物全体を不穏な空気が支配しはじめた。中期の傑作。解説=渡邊利道
(出版社HP)


こちらは原作の感想です。
映画の感想はこちらへ→


J・G・バラードとの接点は、高校生の時に読んだ短篇集『永遠へのパスポート』と、スピルバーグ監督作品で映画化された『太陽の帝国』の2点くらいでした。
代表作と言われる『結晶世界』も未読で、バラードがどういう作家だったのかはほとんど知りません。
ただ、多感な年頃に読んだはずの『永遠へのパスポート』をしてからほとんど記憶に残っていないところからすると、自分にはあまり刺さらなかったと見え、今回『ハイ・ライズ』を読んでみて、その理由が何となくわかったように思いました。

以下、感想です。
ネタバレがどうこうという種類の小説ではないと思いますが、真っ白の状態で作品を楽しみたい方は、ここで回れ右でお願いします。







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# by n_umigame | 2016-08-14 23:07 | | Trackback | Comments(0)

DWA 2016年~2018年の劇場用新作予定状況



今年のSDCCが、なんだかいまひとつ元気がなくて心配だったドリームワークス・アニメーションですが、劇場公開用の長編は、今後いったいどうなっとるのかい? と思ったので、個人的な備忘録も兼ねてまとめておきます。


2016年7月31日現在で、IMDbでいちおう北米公開日が掲載されているものだけを拾うと、以下のとおり。(公開日時はいずれも北米での予定。)
★(IMDbのDWA作品一覧2016.7.31現在)



・Trolls(トロールズ):2016年11月4日
→一時期ネット配信のみという情報がTwitter上で流れましたが、どうやら劇場公開になったようです。
・The Boss Baby(ボス・ベイビー):2017年3月31日
・Captain Underpants(キャプテン・アンダーパンツ):2016年6月2日
・The Croods 2(『クルードさんちのはじめての冒険2』):2017年12月22日(日本公開2018年2月2日←IMDbの情報ですのであてになりませんが)
・Larrikins(ラリキンズ):2018年2月16日
・How to Train Your Dragon 3(『ヒックとドラゴン3』)2018年5月18日


公開日については、ドリームワークス・アニメーションが、合併予定だったりCEOが交代するかもしれなかったりと経営が不安定なことと、競合している作品の公開日などで今後もころころと変わる可能性が高いです。

詳細は長くなりましたのでたたみます。
一部、あらすじにも触れていますので、気になさる方はここで回れ右でお願いします。






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# by n_umigame | 2016-08-01 00:14 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)

DWA新作"The Boss Baby" SDCC 2016追加情報




こちらの記事(→)で、ご紹介したドリームワークス・アニメーションの新作"The Boss Baby"について、先日開催されたサンディエゴ・コミコン(2016)にて、ファーストルックが公開され、キャストについてももう少し詳しいことがわかりましたので、追加情報です。

特にネタバレになるような情報は出ていませんが、真っ白の状態で映画を観たい方はここで回れ右でお願いいたします。

いちおうもぐりますね。








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# by n_umigame | 2016-07-31 23:34 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)

【ネタバレあり編】『カンフー・パンダ3』(2016)とりあえず感想+シリーズ総括

ドリームワークス・アニメーション「カンフー・パンダ」公式サイト

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こちらの記事は「ネタバレあり」編です。
「ネタバレなし編」はこちらへ。→


物語の核心部分やセリフ、ラストシーンに触れていますので、未見の方は回れ右でお願いします。
シリーズ総括の感想もありますので、1作目、2作目とも見ていない方もご同様で。

期待が大きかった分、ちょっと辛口めの感想になっています。全面的にべた褒めはしていません。
「カンフー・パンダ」シリーズについて少しでも批判がましいことを言われるのは我慢がならないという方もここで回れ右でお願いします。
(「カンフー・パンダ」シリーズは私は特に「2」が大好きなことと、「マダガスカル」シリーズが回を重ねるごとに段違いの傑作に化けて行くので、「3」についてはものすごく期待していました。その期待の分、見方がなおさら辛口になってしまっているところもあると思います。)

「ネタバレなし編」も読んで下さった方には、一部重複するところがあるかと思いますが、合わせてご了承ください。

一応、決定的なネタバレ部分に関しては文字を反転してあります。











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# by n_umigame | 2016-07-27 00:38 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(2)

【ネタバレなし編】『カンフー・パンダ3』(2016)とりあえず感想


ドリームワークス・アニメーション「カンフー・パンダ」公式サイト

この記事は2016年7月26日現在の情報です。

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***

今年6月28日にリリースされたUS盤Blu-rayで『カンフー・パンダ3』を見ました。
これまで日本未公開のドリームワークス・アニメーション(以下DWA)の映画は、できるだけブログには感想を上げないようにしてきたのですが、思うところあって今回はアップすることにしました。
「すっごい感動しました❤」とか「映像がきれいでした~❤」とかあたりさわりのないことを言ってお茶を濁す方法もなくはなかったのですが、やはりきちんと書いておこうと思います。

英語でざっと一回見ただけ、特典などでの裏・補足情報未見。アートブックはざっと見、ノベライズも一度ざっと読んだだけです。(ところどころ必要があれば再読しています)


***

感想の前になのですが、来ませんねえ、日本での公開情報……。


当ブログでもこちらの記事で「公開決定したようです!」と喜びいさんでご紹介したので、毎日のようにこの記事にヒットしたと思われる方にお越しいただいているのですが、記事を書いた時点で噂されていた「2016年夏公開説」も、残念ながらまた流れてしまった模様です。
いちおうまだ2016年ですし、劇場版ペンギンズのときのように日本盤ディスクがリリースされるときに限定公開という可能性もなきにしもあらずのようですが、やっぱり劇場で正式に公開されないと意味がないと、改めて思うようになってきました。
こんな状態で結局根本的に何も解決されていませんし、「劇場で正式に公開されない」というそのこと自体が、作品のある面での評価になってしまっているからです。
(これには人それぞれご意見があると思いますが、日本で公開されている劇場用海外アニメがコンテンツとしても最大公約数的に大勢の人に人気があるのは、やはり理由があるなあと納得せざるをえません)

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IMDbでは日本は2016年3月18日公開になっていて、
相変わらずいいかげんだなあと
生あたたかい目で見るしかありませんね…。


『ヒックとドラゴン2』やペンギンズのときにふりまわされて疲れてしまった反省から、今回は公式筋から信頼できる情報が出て来ない限りはTwitterでも安易にRTしたりしないと決めていたのですが、あれから本当にうんともすんとも音沙汰なしです。
(できれば、「って書いたとたんに公開情報出ましたよ!」と言いたい…)

2015年末時点での記事は、ソース(情報源)が20世紀FOX映画さんのYouTubeの公式チャンネルですので、この時点ではさすがにデマや噂ではなかったと思うのですよね。夏くらいに公開したいなあという目算があったのだろうと思います。

ですが、「ドリームワークス・アニメーションの新作"The Boss Baby"情報」でも書いたように、もう最近は海外アニメもディズニー/ピクサー一社だけがDWAのライバルなのではなくて、D/P社に追いつくか、興業成績だけなら追い越しているイルミネーション・エンターテインメントやブルースカイ・スタジオ、その他これまでアニメ映画を製作していなかった会社までがアニメ映画を発表してきているので、何も日本での知名度も人気も低めのDWAの作品を無理して公開するリクスを背負わなくても、『ミニオンズ』や『ペット』を公開する方がよほど安全パイだということは、よくわかります。
自分で言ってて、涙が止まりませんけどね!!!
しかもカッツェンバーグCEOが日本の映画の業態を嫌いだと名言してるらしいんですもの。人間関係は鏡ですから、嫌いだと言われて好きになるのは人情として難しいですよ。仕事は人間がしているわけなので、これは軽視できない部分だと思います。
(自分の会社の上司を悪く取られかねないようなことを、社外で、不特定多数の人の前で言ってしまう人がいる、そのこと自体がDWAの会社の状況がうっすら見えるようで、悲しかったです。おかげで現状を把握できたのですけれども)
自分で言ってて、涙が(2回)

***

私はDWAというスタジオ自体が大好きで、一部の作品を除いてはどの作品も好きですが、だからと言って、狂信的になったり、黒を白と言いくるめることは好きではありません。ダメだと感じたところはダメだと言います。
DWAの作品に少しでも批判がましいことを言われるのは我慢ならないという人は、まずここで回れ右でお願いします。


以下、『カンフー・パンダ3』の感想から、その辺りについて思ったことです。
なんだかんだ言ってファンであるがゆえのぜいたく者の愚痴だと思っていただければ。

この記事は、物語の核心に触れるようなネタバレはありませんが、真っ白の状態で映画を楽しみたい人にはおすすめしませんので、ここで回れ右でお願いします。










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# by n_umigame | 2016-07-27 00:07 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)

E.クイーンのジュブナイル『見習い探偵ジュナの冒険』カヴァーイラスト、アップ!

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見習い探偵ジュナの冒険
幽霊屋敷と消えたオウム
エラリー・クイーン/作 マツリ/絵 中村佐千江/訳
ISBN 978-4-04-631588-5-C8297
定価(税込):734円
名探偵エラリー・クイーンの助手ジュナは、幽霊屋敷の調査を始めるが、女の子がいたり、オウムが消えたりと不可解な現象が続く。同じころ町で起こったにせ札事件も気になっていたが──!?
(画像・内容紹介とも、角川つばさ文庫公式サイトより)

誰、このイケメン。


というわけで、こちらの記事でもご紹介しましたように、クイーンが「エラリイ・クイーンJr」名義(貸し)で書いたジュブナイル、「ジュナの冒険シリーズ」が、角川つばさ文庫から刊行です。
同シリーズのほかの作品も出るのかどうかは、見ている限り、現時点では不明ですが、できれば全部出て欲しいですね。早川書房から出ていたものが今手に入りませんし。

いわゆる国名シリーズに登場しているジューナとは別のキャラクターですが、角川文庫から新訳で出た表紙がアレだし、角川さんだし(2回)、表紙、どうなる こと かしら…と そわそわ ドキドキしながら待っておりましたけれども、わりとおとなしいですね?(どうなってほしかったのか)

ジュナの冒険シリーズに出てくジューナって、昔のジュブナイルということもあって、いかにも当時の大人受けしそうな、折り目正しい、適度な冒険をする男の子、という感じなのですけれど、今回の表紙は、ええ感じにいちびり、じゃなくて、どちらかというと国名シリーズの頃のエラリイが子ども時代ってこんな感じ? っていう、小学生のとき下手したらいじめられませんでした? じゃなくて、やんちゃそうでいいですね。
(エラリイの青春時代は暗かったそうですけど、そらあんた国名シリーズのとき20代でもあのいちびりっぷりで、中2(物理)の頃どんなんだったか想像しただけでもう)

自分も小学校3~4年生のときには大人の文庫本読んでましたので、今でも早い子なら、一足飛びに大人の文庫本に手を出すと思いますが、まだまだそれは、という子どもたちにも、これをきっかけに 沼に クイーンを読む読者が一人でも増えてほしいですね。
クイーンのイベントやら拝見していると、そして人のことは言えませんが、失礼ながら、やはり読者やファンが高齢化してきているようですので、ここらでいっちょ、若さはじける読者層にも広がっていってほしいと思います。
あの国名シリーズのときのエラリイって、子どものころや、せいぜい中学生くらいまでにクイーンを読んだ人には「かっこいい」と見えたり、少なくともあんまりアレコレ気にならないようですので、若さゆえに何かが見えない状態での読書も、ある意味大事だと思います。
のめりこめる深さも全然違いますしね。








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# by n_umigame | 2016-07-26 23:08 | *ellery queen* | Trackback | Comments(0)

『世界の辺境とハードボイルド室町時代』高野秀行、清水克行著(集英社インターナショナル)


現代ソマリランドと室町日本は驚くほど似ていた!
世界観がばんばん覆される快感が味わえる、人気ノンフィクション作家と歴史家による"超時空"対談。
世界の辺境を知れば日本史の謎が、日本史を知れば世界の辺境の謎が解けてくる。

【小見出しより】
外国人がイスラム過激派に狙われる本当の理由 / ソマリアの内戦と応仁の乱 / 未来に向かってバックせよ! / 信長とイスラム主義 / 伊達政宗のイタい恋 / 江戸の茶屋の娘も、ミャンマーのスイカ売りの少女も本が好き / 独裁者は平和がお好き / 妖怪はウォッチできない / アフリカで日本の中古車が売れる知られざる理由 / 今生きている社会がすべてではない
(Amazon.jpより・書影も)
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いきなりですが、上の紹介文にあるような
「現代ソマリランドと室町日本は驚くほど似ていた!
世界観がばんばん覆される快感が味わえる」
という本ではないです。

どこかで見たようなタイトル(笑)と、『マッド・マックス』を連想するような山口晃さんの「奨堕不楽圖」に引かれて読んでみました。
対談本ですが、対談されているお二人の波長が合っていて、テンポが良くて楽しく、読みやすかったです。
お一方は、ノンフィクション作家の高野秀行さん。観光旅行などでは人がほとんど行けないような世界各地を訪れて、たくさん著作もある方ですが、実はわたくし、腰痛の本『腰痛探検家』しか読んだことがありません。
清水克行さんはNHKの「タイムスクープハンター」の監修もされていたという、中世史研究家で現役の大学の先生。こちらの方の本も未読です。


この本の誕生のきっかけは、柳下毅一郎さんがTwitter上でお二人の本の共通点を指摘されたからだそうです。帯にも「現代ソマリランドと室町日本、かぶりすぎ!」とありますし、タイトルもタイトルなのですが(私もこのタイトルに釣られましたし)、この本の主眼は「ソマリランドと室町時代、似てるねー!」「ほんとだすごいねー!」と言って盛り上がることではなく(それなら居酒屋でやってくださいという話です)、日本にいても「今」「ここ」以外の場所や時代にも思いを馳せてください、ということだと思います。

同じ時代を生きているけれども、日本以外の世界中の様々な国や人のものの見方、考え方。
同じ国に生まれたけれども、自分が生きている時代とは違う、とある時代の人々のものの見方、考え方。
自分に直接関係のない世界の情勢や、もう過ぎ去ってしまった、この世にいない人達のことも勉強することが大切なのは、自分の視野を広げて柔軟な思考力を養うこと、それに尽きるということが、この本からは伝わってきます。
それぞれに何か理由があったり、大した理由はなかったり(笑)しますが、それすらも、人間って全然考え方が違うこともあってすれ違うことも多いけど、逆に、所が変わっても時代がかわっても変わらないことは変わらないんだなと、にこにこしてしまうところもあります。
それをおもしろおかしく対談で語ってくださっていて、本当に爆笑した箇所も何カ所かありました。

それがたまたま、ソマリランドと室町時代だったということなのですが、ソマリランドにしても室町時代にしても、知識の対象として一般的な日本人の視野に入りにくい、エアポケットのような部分だと思うので、そこに光を当ててくださったことはありがたいと思います。わかりやすいですし。

本書の中で、高野秀行さんは、深刻な事実を重々しく伝えようとすると、その重々しさ、暗さだけで人は顔を背けてしまう。結局その問題や存在自体が丸ごと無視されてしまうので、そこに明るい面を見せて引き込むことも大事だと思うとおっしゃています。そういう意味では、笑いながらこの本を読んだ自分は、まんまとその策にはまったということですね。


本の内容については、雑学的にテーマがぽんぽんと飛んでいくので、興味を持たれる部分は人それぞれかと思います。

私の場合は、いちばん知りたかったのは、応仁の乱はなぜあんなに長い間続いたのかということでした。これは、足軽が戦争に参加するようになったこと、足軽が略奪部隊だったのではないかという説があることなどで、ある程度理解できるようにも思いました。足軽は、農村で食い詰めて兵隊にでもなるかとなった者が多くて、乱暴でなんら泥棒と変わることのない集団だったと。そんな集団がずっと都を荒らして回ると軍規は機能せず、いつまでたっても戦後処理ができませんよね。
これについては、表紙から『マッド・マックス』を連想したのも、あながち間違いではなかったです。

よく言われるあるあるネタに、京都の人が「前の戦争」と言うときは第二次世界大戦のことではなく応仁の乱を指すというものがあります。これは私もネタだと思っていた時期があるのですが、実際に年配の方に言われたことがあり、「ラピュタは本当にあったんだ!」みたいな気持ちになりました。
日本史上で京都が焼け野原になったのは応仁の乱以外にたえてなかったからですが、それだけ京都の人にとってはインパクトの強い戦争だったということでもあるのでしょう。

「外国人がイスラム過激派に狙われる本当の理由」なども、今などむしろ喫緊のテーマなのではないでしょうか。これも、なるほどなと思いました。
刀狩りや、徳川綱吉の功績なども、現在アメリカで銃の乱射事件で毎日のように人が犠牲になるニュースを見ていると、考えさせられることがあります。
刀狩りが失敗していたら、日本でも一般の家庭で銃器を所持しているのが当たり前の世の中だったかもしれません。綱吉も、どちらかというと暗君のイメージがあったのですが、これも新しい見方でした。

などなど、こうやって書くとテーマ自体は重いですが、それが楽しく読んですっとしみてくるように話してくださっています。

一つ、中世と言えばになりますが、「伊達政宗のイタい恋」のところで、清水先生が、大学で
「同性愛の話をすると学生は喜ぶんですよ、特に女の子が。」
っておっしゃってて、すみません先生すみませんってちょうあやまりました。私があやまることではないのですけれどもー!
あと先生、それ、一部の女の子だけだと思いますーーー!!

「同性愛には文化的な側面があって、男らしさや女らしさというものは歴史的に変化していくものなんだって学生にわかってもらうために、僕はこの話をする」と清水先生はおっしゃっています。


おすすめします。


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# by n_umigame | 2016-07-20 00:07 | | Trackback | Comments(0)