絵本が原作のすっかり有名になったロシアの人形アニメーション。
映画が公開されたときは第3話までだったそうですが、今回は1983年に製作されたという第4話「チェブラーシカ学校へ行く」も合わせて放送されました。
タイトルロールのチェブラーシカより、ワニのゲーナが活躍するなあと思って見ていたら、元々は『ワニのゲーナと仲間たち』という作品名だそうで、ゲーナの方が主人公なんですね。
ウワサどおりカワイイのですが、作品世界全体を覆う何とも言えぬ哀愁と、いじわるばあさんシャバクリャクの善悪どちらともつかぬトリックスターっぷりがシュールで、どう咀嚼して良いのかわからない作品でした。
またチェブラーシカ(とゲーナ)がピオネールに入りたがるシーンが出てきますが「行進できないんだろう」と言ってピオネールの少年に断られるところ、なんだかちょっと暗澹たる気持ちになりました。不勉強で詳細はまったく知らないのですが、ピオネールはボーイスカウトというよりはヒットラー・ユーゲントのようなイメージが強くて、それでなおさら「うーーーん」と思ってしまったのかもしれません。(奉じているのは独裁者ではなく共産主義ですが)
レギュラー陣で一番魅力的なのは、やはりいじわるばあさんのシャバクリャクですね。
登場と同時に「いいことしたって有名人にはなれない」と高らかに歌い上げる彼女は、スリムな体に質の良さそうなスーツとブラウスに身を包み、とってもおしゃれです。
飼っているのがネズミというのは何かのメタファなのでしょうか。思うさまにいたずらや悪さをして回ったかと思ったら、「チェブラーシカみたいないい子をいじめるなんて誰だい! 許せない!」と、マナーの悪い旅行者たちをとっちめるシーンはスカッとします。一体何者!?と公式ページを見に行きましたら、スパイで、FBIからマークされていてアメリカには入国できない、とか、いきなりエスピオナージュな経歴の持ち主でびっくりしました。スパイがそんなに目立ったらあかんやろ(笑)。
そんなシャバクリャクには悪さの天罰は下らず、マナー違反の旅行者たちは全員罰を受けるという展開もおもしろいなあと思いました。このキャラクターは制作者に愛されているなあ。
ゲーナとチェブラーシカのコンビも良いですね。
チェブラーシカの小悪魔っぷりが炸裂するロシアの小咄みたいなシーンは大笑いしました。
シャバクリャクに切符を取られて、モスクワ→ヤルタ間で途中下車を余儀なくされたゲーナとチェブラーシカ。バカンスに行くはずだったのか、亀さん浮き輪(カワイイ!)やトランクやチョコレートケーキやらの荷物でいっぱいのゲーナはバテ気味。
もしかして荷物が重くてたいへんなの? とゲーナにたずねるチェブラーシカ。
(だって「モスクワまで199km」ですから。)
だったら、ぼくが荷物を持って、ゲーナはぼくを持つといいよ! と言われてそのとおりにするゲーナ。
…人が好いにもほどがあるよゲーナ!! 人じゃないけど!!
またチェブラーシカも、悪気がないところがかえって怖いよ!!
公害など社会問題もさりげに盛り込まれた、ちょっぴりこわいロシアン・アニメーションでした。