『「アメリカ社会」入門 : 英国人ニューヨークに住む 』コリン・ジョイス著/谷岡 建彦訳

(NHK出版生活人新書) 日本放送出版協会

ニッポンの次は、もちろんアメリカだ。
コーヒーより紅茶が好きな英国人が、「無知」と「非礼」に耐える勇気を携えて、ニューヨークに暮らすことを決意した。

『「ニッポン社会」入門』の著者が放つ、待望の第二弾!

ニューヨーカーたちは思いのほか丁寧で愛想もいい。でも、心しなくては。その親切な仮面の下では、何か巧妙な悪だくみが進行しているかもしれないから。「ニッポン社会」への入門を無事果たした英国人ジャーナリストの次なるターゲットはアメリカだった。スポーツ、ユーモア、社交、格差、幸福感…。母国イギリスとのさまざまな比較から見えてきた「アメリカ社会」の意外な素顔とは。 (Amazon.jp)


第2弾だそうですが、第1弾『「ニッポン社会」入門―英国人記者の抱腹レポート 』未読でいきなり第2弾から。
著者は(お名前からも想像がつくように)アイルランド系のイギリス人。オックスフォード大学を卒業後1992年に来日し、2007年に渡米され、そのときどきにそれぞれの国で見聞きしたことを、イギリス人らしいユーモアとアイロニーを込めて書かれたエッセイです。

ジョイスさんは最初、日本の方がアメリカよりカルチャーショックを強く受けるだろうと思っていたそうです。ところが、日本では「人間のやることはそんなに変わらないな」という感想を抱くに至ったのに、イギリスのいとこと言われるアメリカで受けたカルチャーショックの方が大きかったと述べておられます。

これはわかる気がします。
日本人が例えば中国や韓国へ行くと、何となく似ているような先入観をみごとに裏切られた思いがするのと似たような感じなのではないでしょうか。
似ている、共通点がある(はずだ)という先入観があるがゆえに、そのギャップが大きいのだと思います。

また、実は近いがゆえに、近親憎悪というか、他人がしていたら許せることも肉親がしていると許せないことってありますよね。そういう面もあるのかもしれないなあと思いながらこの本を読んでいました。

「どうして、こんな奇妙な信念を抱くにいたったのだろうか?」
「なぜ、あんなに陽気なんだ?」
「あの、根拠のない自信はどこから来る?」
「あまり外国へ出かけたがらないのは、なぜ?」
「どうして、そこまでして働く?」
「あんなに大金をかけておきながら、どうして出来上がった映画はろくでもないの?」
「お互い、いがみ合ってばかりいる国民なのに、愛国心だけは強いというのはなぜ?」
「どうして、なんでもすぐ裁判に持ち込むの?」
などなど、アメリカ以外の国の人がもれなく感じているであろう疑問をジョイスさんも抱き、そして(それこそアメリカ人のようにさしたる根拠もなく自信をもって)安易に結論づけたりはしないけれども、それぞれの疑問に真摯に向き合いつつ描かれる「ジョイスさんの見たニューヨーク」が楽しいです。

最終章「アメリカ社会のおかしなところ」だけが、アメリカ社会に対する批判的見解ということになっていますが、「いやいやオカシイだろ」といったツッコミが著書全体に底流していて、またそれがおかしくて笑えました。笑えたということは、わたくしもジョイスさんに共感しているということだと思われます。

「ネットワーキングにはぞっとした」という章も、いたって健全なジョイスさんの精神に乾杯したくなりました。
ネットワーキングとはつまり、自分の仕事やキャリア作りに役に立つ人脈作りのことなのですが、イギリスでは(あるいはジョイスさんの考えでは)それは「有力者に取り入ってゴマをする行為」であって、少なくともおおっぴらにすることではない。知人や友人が自分の仕事に役に立つのは副次的なことで、もし結果的にそうなりそうだったら、自分の友情が打算に基づくものではないことを示すために、友人の協力の申し出を断ると。
ジョイスさんが「あまりに功利主義的で不誠実」と感じるアメリカでのネットワーキングは、裏を返せば、役に立たないと自分が判断したとき、絶たれてしまう関係であるということですよね。
そういう「必要なときだけ必要なものを(不要になったらもう不要)」という「使い捨て」感覚が人間関係にまで浸透していて、おかしいと思わないとしたら、それはおそろしいことです。

日本でも異業種交流会が流行っていますし、アメリカでもそこから本当の友情を築ける人たちももちろんいるのでしょうが、ジョイスさんから見ると、そんな人は限りなくゼロに近いように見えるから「おかしいんじゃないの」と感じたのでしょう。

著書紹介にあるように「意外」でもなんでもなく、漏れ聞こえてくるウワサからでもある程度想像ができる社会のようだということがよくわかる1冊でした。
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by n_umigame | 2009-08-11 20:14 | | Trackback | Comments(0)

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