*さいはての西*

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『サマーウォーズ』(2009)

小磯健二は少し内気で人付き合いが苦手な17歳。数学オリンピック日本代表の座をあと一歩で逃したことをいつまでも悔やんでいる理系オタクだ。健二はある日、憧れの夏希先輩からバイトを持ちかけられ、一緒に彼女の故郷まで旅行することになる。バイト内容は、「ご親戚」の前で彼女のフィアンセのフリをすること。しかし、仮想空間“OZ”のパスワードを解いてしまったことから、世界を揺るがすトラブルに巻き込まれてしまい…。

2006年に『時をかける少女』で国内外問わず多数の賞を獲得し、多くの観客を感動させた細田守監督待望の最新作。『時をかける少女』と同じく脚本を奥寺佐渡子、キャラクターデザインを貞本義行が務めている。美術監督の武重洋二は『千と千尋の神隠し』などでその実力を存分に発揮した実力派だ。これらの一流スタッフが日本の片田舎と近未来の仮想空間という相反する世界を違和感なく融合させている。主役とヒロインを演じる神木隆之介と桜庭ななみは役とほぼ同年代で、等身大の爽やかな演技を見せているのも見どころだ。本作はどれだけ科学が進歩し、生活の環境が変わろうとも、もっとも大切にすべきものは何か? ということを教えてくれるだろう。(goo映画)



「キレネンコと戦わせたい最強のウサギが出る映画らしい」というウワサを聞き(笑)、近場の映画館で「グッド・モーニング割引1200えん」で見てまいりました。
グッドだけどモーニングだかどうだか微妙な時間帯でありましたがお得でしたありがとう。
しかし割引でなかったらちょっともったいなかったなと思ったかもしれません…。

この作品をおもしろいと思う人の気持ちはよーくわかるのですが、実際映像も美しいし、丁寧に作ってあるし、おもしろくないというほどひどい作品では決してないのですが、2時間もあったのに何だか印象が薄い作品でした。

それで、何でそう思うのかをいろいろと考えたのですが、あまりにもご都合主義的な設定が物語を機能させるのに役に立っていなかったからではないかと。
それぞれの設定、ひとつひとつのご都合主義が浮き彫りになってしまうということは、物語の展開にその設定が生きていないから、だということではないかと思いました。

あらゆるフィクションは閉じた世界です。
現実の世界ほど予測不可能で複雑に絡み合った因子を多数含んだ世界ではない。その物語世界の創造主の手のひらの中だけで成立する世界です。
ですから、フィクションの世界では設定がある程度ご都合主義であっても何ら問題はないと言うか、「物語」を完結させるためにそうならざるをえないと思います。

それを見ている側、読んでいる側が「なんたるご都合主義」と思って白けてしまうか、「なんて巧いんだ」と思って感動したり楽しんだりできるかは、ひとえに創造主の腕ひとつにかかっていると思うのです。



↓以下全面的にネタバレです。













例えば、大家族の良さを歌い上げるというのがこの作品のテーマのひとつだったかと思いますが、この大家族、全然団結してないです。ひとりひとりばらばらに行動してる。

「なんでこの陣内一族の中に都合良く関係者が揃ってるんだよ」ということは気になりませんでした。そういうご都合主義はフィクションの世界では許容範囲内です。
でも、せっかく関係者が揃っているのに、敵が出る、誰かが戦う、敵が出る、誰かが交代して戦う、その繰り返しですね。

そして、その「敵」を倒すチャンスが何度もあったのに、そのたびに邪魔をしているのも陣内一族の中の人です。

最初の方、キングカズマがあと一歩というところで、まだ弱かったラブマシーンをやっつけられなくなったのは、あの子どもたちが邪魔をしたからですよね。
で、ここはまあ子どものやったことだし、ここでやっつけちゃったら話は終わるので、よしとしましょう。
でも次。
アバターを吸収して強大化したラブマシーンをやっつけるために、スーパーコンピュータのような巨大なコンピュータを冷やすために置いておいた氷を、「おばあちゃんが暑いだろうから」と言って持っていってしまう警官の、夏希のまたいとこ。
ただならぬことが起きているということが、なぜわからんか。
「おばあちゃんが死んだっていうのに」って、おばあちゃんが死んだっていうのに、それをそっちのけでやらねばならんこと=大変なこと、ということが、わからんのか。
ことの軽重も計れず、自分がやったことが何か悪かったのかもという反省もなく、佳主馬に殴られておばあちゃんが死んだことまで健二のせいにして逆切れ。それも自分のけちくさい嫉妬から。そんなだから夏希には見向きもされないんだよ。(←大きなお世話だが)一生巡査だ、この人は。健二に嫉妬する前に己を磨け。まったく。
本当にムカつきました(笑)。アニメのキャラクターにこんなにムカついてどーすんだ、ってくらい(笑)。

こういう「ボケ」シーンは、ある程度笑えないとだめだと思うのですよ。
見ている人を本気でムカつかせちゃダメです。

おもしろいのは、陣内一族は公務員が多くて、役所の職員、自衛官、消防官、そして警察官がいるのですが、見るからに使えなさげで見るからにアホなのが警察官の子、というのは制作者側に何か含むものがあるのかしらと思いました(笑)。(うちの地元だけかもしれませんが、消防士さんはお巡りさんよりカッコイイ人が多いのは事実のように思いますが(笑)。鍛えてるからカッコイイとかいうだけでなくて雰囲気とか全然違う。)

で、クライマックスで突然健二にがんばれと言ったりして、なんだか取って付けたように感じました。


そして主人公が誰なのかわかりにくい。
健二が主人公なのかと思っていたのですが、狂言回しではあるけれども、主人公とは言い難い。
膨れ上がったラブマシーンと決着を付けたのは結局夏希で。ふつうそれは主人公の役だろう? と思いました。(あと、アバターの数が最後やっつけられたのに「2」でしたよね。あれはなぜ?)

夏希もちょっとひどいと言うか…健二の気持ちを知っていて利用したのかと思うと、なおさらひどい。
健二がウソついた!と親戚一同に詰られるシーンがありますが、健二が責められることではないと思うんですよ。夏希がウソついて(黙っているのもウソのうちです)強引に連れてこられたのであって。侘助おじさんが帰ってきたら健二の見ている前でべたべたして。ひとこと「身内の騒動に巻き込んで、いやな思いをさせてごめんね」ってくらい言えば? と思いました。

侘助も、栄おばあちゃんに一番似ている子だ、ということが端々で描かれますが、それが物語の伏線として生きていないのがもったいない。
憎まれっ子の役ですが、それもなんだか中途半端な印象でした。
妾腹の子が親族の中で一番頭脳明晰なエリートというのも、頭がいいからほかの人が気がつかないこと、わからないことまで気づいてしまって、でもそれを理解してくれる人がいないからしんどい、で、はみ出てしまう、というのも古典的(笑)。
最初は「オレは作っただけだからオレに責任はないんだよ」とうそぶいていたのに、おばあちゃんが死んだことに間接的に責任があるとわかったとたん、急に心を入れ替えるのもなあ。
まあ、何だかんだ言って、侘助のことを一番理解してくれていたのは栄おばあちゃんだということもわかるのですが。
とはいえ、あの「家」から逃げ出したくなる人の気持ちはよくわかる気がします。合う人はいいけど、そうでない人にとってあの「家」はたまらないだろうなあと。
「栄おばあちゃんが法」という家で、栄おばあちゃんだって人間なんだから間違った判断や、よかれと思ってしたことが本人にとっては悲劇でしかないという判断もあると思うんですよ。
でもあの家では、「それがおかしい」という意見を持つ人間はいられないですよね。
「ここは良い家だ、すばらしい家だ」という考え方の人間しかいられない「家」、批判がましいことを一言でも言うと、ほかの構成メンバー全員から糾弾される「家」。
そんな家が本当にいい家だとはわたしには思えません。

「栄おばあちゃんが言ったことは絶対正しい」と信じ込む家族は、自分で考え、自分で出した結論の責任を自分で取る、ということから逃げいているとも言えるかもしれません。

あと台詞が多いと感じました。
本当に緊張していたら声は出ないと思います。
健二の最後の「Enter」キーを押すシーンも、決め台詞みたいなものを入れたかったのかもしれないけれども、「よろしくおねがいしまあああす!」は長くて緊張感がそげてしまいました。その直前まで目を黄色にして暗算していたのに。
アニメなんだから「絵」と「動き」で十分表現できるのに、なんてもったいない。
(わたしだったら健二の目で表現するなあ…と思いました。目の表情が表現できるものってすごいと思うし。)
宮崎駿監督が、「若い者に絵を描かせたら、すれすれ一杯に水が入っているコップを飲むシーンで、コップを持ち上げて飲む絵を描いてきた。バカかって怒った。そういうとき、人はどうする? コップはそのままで口を持っていって少しすするだろう?」とおっしゃっていましたが、そういう「ちょっとした不自然さ」が作品世界を一気にうそ臭いものにする、そういうことはあると思います。
そういうことがまったく気にならない人もいるのでしょうが、わたしは気になるんですよごめんなさい。

あとこれを言ったらおしまいですが、OZのようなあれだけの電脳世界を実際に構築するとしたら、セキュリティは潜水艦の隔壁のように、ひとつ破られても次のガードがかかるように考えて作ると思うのですね。
あるいは二重三重にバックアップを取って、どこかがアタックされたらそこはサーバの電源を落とせばとりあえずそれ以上被害が広がらないようにするとか。
行財政部門と民間企業はサーバを分けるとか。
特に、水道やガス・電気などのライフラインは絶対に分けておかないと。

そんなこんなで、物語としては気になることだらけだったのですが、OZの世界。あれは楽しいですね。
(最初に地方自治体の例として富山県や砺波市が出るけれど、あれはなんで?)
エンドクレジットで楽天の協力があったことが伺えますが、確かに、楽天がパワーアップした世界ですね。

花札は昔教わったけれどもすっかりルールを忘れてしまっていました。
今花札ってわかる人どれくらいいるんだろう。
しかしこれは海外で公開したら、「なんで台所で支度してるのは女性だけなの?」ってその筋からクレームが来そう(笑)。これが日本の現実なんで仕方ないですが。

キレネンコとを戦わせたいウサギさんとは、キングカズマですね(笑)。
うんうん、確かに。
最初の、金髪じゃない方のキングカズマが好きです。強いよ強いよ!!
でもなぜウサギ。
キングカズマが戦うシーンをもっと見ていたかったなあ。

次回作はカナバン・グラフィックスと共同製作で、『帰ってきたサマーウォーズ キレネンコvsキングカズマ』で、ぜひ!!
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by n_umigame | 2009-09-08 16:05 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(2)
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Commented by まりお at 2009-09-10 23:05 x
アニメ「時をかける少女」に拒絶反応の私はスルーしたのですが、小学生の甥っ子が観に行って「おもしろかった!」そうです。ストーリーやキャラクターを一生懸命説明してくれました。(この子の街が舞台なんですよ)
詳細・冷静な批評、エンタメへのパッションを感じます。現代のシュリーマンと呼ばさせてください。
(一生巡査だ、この人は…アハハ、にせみさんがおっしゃるならきっとそうなんだと思います。)
Commented by n_umigame at 2009-09-10 23:15
自分で読み返す気も起こらないくらい長い記事にコメントありがとうございます。(ちょっと!)
「時かけ」、わたくしもビミョーでした。
あんまり考えなくていい映画が見たいなあと思ってふらっと行ったのに、よけいストレスたまりました。アホですね。