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『クライム・マシン』 ジャック・リッチー著/好野理恵ほか訳(河出文庫)河出書房新社

殺し屋リーヴズの前に現れた男は、自分はタイム・マシンであなたの犯行を目撃したと言った。最初は一笑に付したリーヴズだが、男が次々に示す証拠に次第に真剣になっていく。このマシンを手に入れればどんな犯罪も思いのままだ……。奇想天外なストーリーが巧みな話術で展開していく「クライム・マシン」、ありふれた“妻殺し”事件が思わぬ着地点に到達するMWA賞受賞作「エミリーがいない」をはじめ、迷探偵ヘンリー・ターンバックル部長刑事シリーズ、異常な怪力の持ち主で夜間しか仕事をしない私立探偵カーデュラの連作など、オフビートなユーモアとツイストに満ちた短篇ミステリの名手、ジャック・リッチーの傑作17篇を収録したオリジナル傑作集。その簡潔なスタイルと見事なストーリーテリングは、ヒッチコック、クイーン、ウェストレイクら、多くの「目利き」たちから絶賛を浴びている。 (Amazon.jp単行本紹介)


2006年版のこのミス海外編1位を獲得したという『クライム・マシン』。単行本からカーデュラ・シリーズものをすべてカットし、再編して文庫本として刊行された1冊です。

「ミステリ」としてカテゴライズされているようですが、どちらかというとロアルド・ダールやフレデリック・ブラウンの系統を受け継ぐという印象の作品群でした。中には短篇と言うのにも短すぎるような作品もあります。
ダールやブラウンの方が何倍も毒が強いことと、ジャック・リッチーの文章は本当に簡潔で、ほいほいほい、という感じで展開するので、非常に読みやすく、この本もあっという間に読めてしまいました。「ヒッチコック劇場」にも原作を提供していたそうで、そんな感じです。

収録されている作品はほとんどノンシリーズものなのですが、中に2作、ヘンリー・ターンバックル部長刑事と相棒のラルフが活躍(?)する作品があり、これがおもしろいことに、異色作になっています。
ターンバックルはミルウォーキー警察の部長刑事なのですが、クロスワードパズルが好きで(著者のリッチーもそうだったそうです)、あまり切れるタイプとは言い難いのですが、散文的で楽天的で人類滅亡後も生き残るのはまちがいなくこのタイプだろうという、笑える、そして愛すべきキャラクターとして描かれています。

それが如実に表れているのが『縛り首の木』でしょう。
ラスト、ターンバックルに説明せず、「なんでもない。なんでもないんだ」で終わるラルフもいいですね。ターンバックルみたいな幸せなタイプの人は、こういう場合にお守りというか、魔よけの護符みたいな役目を果たすのだろうと思います。
ターンバックルも何だかいいヤツですよね。ビールあんまし好きじゃないからあげる、とラルフにあげたり、椅子で眠りこけたラルフをベッドに運んであげたり。
最終的に危機から脱出できたのは、正しい危機感を感じ取り、素早く行動したラルフのおかげではあったのですが。
このコンビのお話もまたもっと読んでみたいです。

今回カットされたシリーズものだけを集めたものが、同じく河出文庫で近刊予定とか。楽しみです。

晶文社さんや国書刊行会さんが、昔の良い作家の作品をこうやって集めて発行してくれるのは、すごーくうれしいのですが、いかんせん単価が高いので、文庫でばしばしと刊行が続いていってくれるとありがたいです。
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by n_umigame | 2009-09-14 22:26 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
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