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『グラーグ57』 上下 トム・ロブ・スミス著/田口俊樹訳(新潮文庫)新潮社

運命の対決から3年――。レオ・デミドフは念願のモスクワ殺人課を創設したものの、一向に心を開こうとしない養女ゾーヤに手を焼いている。折しも、フルシチョフは激烈なスターリン批判を展開。投獄されていた者たちは続々と釈放され、かつての捜査官や密告者を地獄へと送り込む。そして、その魔手が今、レオにも忍び寄る……。世界を震撼させた『チャイルド44』の続編、怒濤の登場!(出版社HP)


『チャイルド44』の続編。
このレオ・デミドフのシリーズはあと1作、つまり3部作で完結する予定だそうです。
その方がいいと思いましたです。(ちょっと!)
だんだん、いかにも新潮文庫のエンタメ系翻訳ものという感じになってきました。

2部作目になってもいまひとつレオが魅力的になっておらず残念だったことと、『チャイルド44』がデビュー作だったので、まだまだ化けそうな作家さんだなあと思い期待していたのですが、思ったほど化けていませんで、そこも残念した。
前作はかろうじてミステリと言えたかもしれませんが、今作はちょっとそれは苦しいですね。

これはキャラクターの魅力で読ませるお話ではなく、あくまでもプロットで読ませる作品であり、この『グラーグ57』も前作よりさらにハリウッド映画的ジェットコースターエンタテインメントな展開になっており、一気に読めるのでお話はとても巧いのだと思います。

どうして今ひとつ主人公や登場人物たちに魅力がないというか、薄っぺらな印象を受けてしまうのか考えたのですが、主人公以外の登場人物が全員主人公を不幸にするために配置されており、それをレオが掘り下げる間もないほど物語が早く展開してしまうということもあるかと思います。

それにしても主人公がひどい目に遭えば話が盛り上がるってものでもないと思うんですよ。

主人公が踏んだり蹴ったりの目に遭うのはビルドゥングス・ロマンでは珍しいことではなく、このひどい目に遭う主人公とか、夫婦仲がうまくいっていないところとかあとで歩み寄るところとか、何となくローズマリ・サトクリフの『ともしびをかかげて』の主人公アクイラを思い出していたのですが、『ともしびをかかげて』を読んでいるときの圧倒されるような主人公の苦悩や背負ったものの重さのようなものを、こちらではさっぱり感じず、逆に『ともしびをかかげて』では感じなかったサディスティックなものを『グラーグ57』では感じてしまいました。

『ともしびをかかげて』は児童書だからじゃないの、なんていう人は校庭10周おやつ抜き。

また、章の終わりに「え?」と思うような展開を持ってきてページをめくらせるのがうまいのですが、それを何度も何度もやられると残りのページ数で「ああこれ嘘だな」とか「ああもう一回ひっくり返るな」というのが読めてしまうんですよ。どんでん返しがクサいと言うか…(そんなあまのじゃくあんただけです)(すまん)

フラエラのキャラクターはもうちょっと、あと一歩、何とかしたら何とかなったんじゃないかと思わないでもないのですが、いっそドロンジョさまみたいにしたら面白かったのにーとか思いましたね。まったく違う話になりますけれどもね。
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by n_umigame | 2009-09-20 22:22 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
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