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『読後焼却のこと』 ヘレン・マクロイ著/山本俊子訳(ハヤカワポケットミステリ)早川書房

その手紙は、女流作家ハリエット・サットンの家の庭に、風に舞いながら落ちてきた。目を引く一行の太い文字”焼き捨てること”に続く文章は、ハリエットの背筋を凍らせた。”ネメシスの正体がわかった。ネメシスはわれわれと同じこの家にいる。事故死に見せかけて殺せば、疑われることはないはずだ……”文は途中でとぎれ、署名はなかった。いたずらにしては念がいっている。まさか、本物の殺人計画書では……!
ネメシスとは悪名高き覆面書評家のペンネームだった。
(中略)
それから数日後、自室に戻ったハリエットは一人の男の死体を発見した。彼女の弁護士ジェイベズ・コッパードがのどを切り裂かれて死んでいたのだ。しかも意外なことに、死体のそばにはモロッコにいるはずのハリエットの息子トミーが、茫然と立ちつくしていた!
被害者の名さえわからない殺人計画は、予想外の展開を見せる! 精神科医探偵ベイジル・ウィリングが久々に登場する、第二回ネロ・ウルフ賞に輝く傑作本格推理。(裏表紙より)


ヘレン・マクロイ祭り、引き続き開催中です。(自分内。)

著者が75歳のときに発表されたというこの作品ですが、やはり過去の作品と比べると、筆力やミステリとしての魅力といった点では、弱くなっていると申し上げざるをえないようです。

ただ、とはいえ、他の作品(といってもまだ長編3作と短篇2作しか読んでいないのですが)を読んでいると、トリックよりプロットで読ませる作家のようですので、読み始めると最後まで読ませてくれます。

発表されたのは1980年。
過去の作品と比べてベトナム戦争への批判的なまなざしや、精神科医に対する批判(特に刑事事件への介入)など、かなり現代的な課題ももりこまれております。

ベイジルはニューヨークからボストンへお引っ越ししており、ベイジルの妻、ギゼラさん(本作では「ジゼラ」という表記になっていますが)はすでに亡く、一人娘のギゼラ(やはり「ジゼラ」という表記になっていますが)もとっくに嫁いで、登場したときと同じに一人暮らしになっているのですが、さすがにトシとったかなあという、わびしさを感じました。

この作品を読んで、シャーロック・ホームズのかの有名な犬のお話を思い出さないミステリファンはいないと思われますが、発表された当時はなかなか新鮮なトリックだったのかもしれないトリックも何だかかなり無理がある印象を受けます。
けっこう古式ゆかしく華々しい謎で始まったはずの物語も、ベイジルがネメシスの正体を明かすシーンがいささか唐突に感じてしまうため、あっけなく収束してしまったという感じで、もったいないなあと思いました。

作品自体があまり長くないせいか、けっこう色物揃いのキャラクターもいまひとつキャラが立たないまま退場、という感じで、これももったいないなと思いました。

でもベイジル・ウィリングが登場する最後の作品なので、ファンなら読んでおきましょう、という作品だと思います。

どーでもいいんですけど気になったのは、登場人物紹介のところ、警部の名前が間違っています。(本文は全部グローガンとなっているので”ブローガン”は間違いですよね?)
こーゆーところを間違えると翻訳物苦手な人がさらに遠ざかるんじゃないかと思われますので、気を付けていただきたいです。
(え。翻訳物苦手な人、ポケミスなんか読みません? そ、そうかも………)
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by n_umigame | 2009-10-26 22:18 | ミステリ | Trackback | Comments(2)
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Commented by Yuseum at 2009-11-02 22:08 x
これ、持っているけどまだ読んでいないYuseumです(^^ゞ
お次は短編集(「歌うダイアモンド」)ですか?

あっ、『殺す者と殺される者』。12月中旬刊行で決まりみたいですよ(^^)v
Commented by n_umigame at 2009-11-02 22:35
うん、最後でいいと思います、お読みになるのは(^^;)。(ちょっと。)

『歌うダイヤモンド』も半分以上読んでしまったので(SFもおもしろかったです!)、12月の、『殺す者と殺される者』まで引きに引いてがんばらなくては。
決定なんですね! やりいvvv