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『父からもうすぐ逝ってしまう君へ : 心を揺さぶる37話』ボブ・グリーン著/桜内篤子訳(きこ書房)

新聞で大見出しになったり、テレビのニュースで取り上げられるような話は、
そのときは話題になっても季節が変わる頃にはほとんど忘れられている。
逆に、第一面にはとうてい載らないような出来事が、時間が経つほどに
大事なことのように思われてきて、記憶にあざやかに残る。
ぼくの人生の大半は、このような話を探す旅に費やされた。
この本には政治や政府の政策、経済危機といった話題は登場しない。
その代わりに、アメリカが雲ひとつない青空のように楽天的だった
時代の話が入っている。(中略) ぼくたちが国として、そして人間として
いちばん求めているものを、かつてぼくたちは手にしていたのではないか
という思いがあるのだ。ぼくたちが探している答えは、昔からぼくたちの
目の前にあり、一所懸命に探し続けていれば必ず見つかるとぼくは信じる。
シボレーを乗り回した、デイリー・クイーンで過ごしたあのよき時代は
まったく失われたわけではない。実はすぐそこにあるのに、
ぼくらが気づいていないだけなのだ。(はじめにより)(Amazon.jp)


損してる…邦題で損してるよ、ぜったい…っ!
…と読み終わって思いました。

往年のコラムの名手、ボブ・グリーン。なんだかなつかしい名前だなあ、新刊が出るなんて亡くなったのかな(ちょっと)…と思っていたら、現役でいらっしゃいました。失礼いたしました。

「なつかしい」などと申しましたが、まとまった著作を読むのはきっと初めてです。
楽天的でノスタルジックなコラムを書く人だというイメージがありましたが、そのイメージを壊さないコラム集でした。

ただ。
ただですね。
冒頭にも書きましたように、このタイトル(邦題)はないだろうと。

標題紙裏のテキストの情報を記載するページには"Chevrolet summers, Dairy Queen
nights"とあります。「シボレーの夏、デイリー・クイーンの夜」。いかにもボブ・グリーンといった感じのタイトルですね。(わたくしのボブ・グリーンイメージ代表作=『チーズバーガーズ』)
「シボレー」や「デイリー・クイーン」が平均的な日本人にとってノスタルジーを感じるアイテムでないことは確かなので、日本人にもキャッチーなタイトルに変えるのはもちろんかまわないのですが、なんでそんないかにも泣いてくれというようなタイトルにすんだよと。

日本語版の標題になっているコラムの原タイトルは"A Father's Farwell to His Dearest Friend"です。
このコラムは、病気でもう意識がない3歳半の息子さんへ、病院のベッドのかたわらで書いたという、とある父親の手紙なのですが、タイトルにいきなり「逝ってしまう」と出すのはいかがなものかと思います。
コラムを読んでも冒頭ですぐ、これはもうすぐ逝ってしまう幼い息子へのお別れの手紙であることはわかるのですが、何か、違うんですよー。もっと、こう、さあ。
…とまあ、翻訳について細かいところは多少言いたいこともあるのですが、内容はよかったです。
この標題になっているコラムも、世界中に我が子を愛するお父さんは多々あれど、とりあえず日本人のお父さんはこうは息子に言わないよな、きっと…と思いました。
どちらが良いというわけではなく、もちろん文化の違いです。
なのですが、何となく「子が親に感謝するのは当たり前だが、その逆はない」という伝統(?)がうっすらと残っている社会では、このコラム、子どもがお父さんに感謝の意を述べたものだったらバカ売れするかもだけど、とかひねくれたことを考えました。
「君はお父さんにとって息子であるだけでなく、いちばんの親友であり、相棒でした」と3歳半の息子さんに、本気で言ってるわけです、このお父さんは。
だからタイトルが生きるんですね。
すごいなボブ・グリーン。

この本は、ほかにスポーツ選手の話題や、生物学上の親というだけで親権を要求し、養父母のもとで幸せに暮らしていた幼い子どもを連れていく実の父母の話、レストランで幼い子どもの前でちょっとしたことでキレる母親の話など、アメリカの抱える社会的な問題点も浮き彫りになっています。(今から12年前のコラム集のようですが)

ボブ・グリーンは自分が父親になってから書いたエッセイが、日本でも好評だったようですが、やはり親として自分の国を憂えるという部分も大きく、それが冒頭のコラムでも伺えます。

 ヨーロッパ旅行やディズニーランドに連れて行っても、ろくでもない大人になる子は多い。大邸宅に住み、車を与え、自宅のプールで好きなだけ遊ばせても、まともな人間に育たない子もいる。(中略)
「お父さん、この人たちはどこへ行くの」男の子が聞くと、父親は「世界中だよ」と答えた。
(中略)
 アメリカ社会のたくさんの深刻な問題にみんなが頭を抱えているなかで、ここに息子と土曜日を一緒に過ごそうと飛行場にやってきた父親がいる。

 単純なことだ。親が子どもに時間を割いてやること、子どもの様子を見守ること、そしてできるだけのことをしてやること。


ボブ・グリーンのコラムは「締め」も良いので、あとはお読み下さい。
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by n_umigame | 2009-12-09 18:01 | | Trackback | Comments(0)

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