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『閉じた本』 ギルバート・アデア著/青木順子訳(創元推理文庫)東京創元社

事故で眼球を失った大作家ポールは、世間と隔絶した生活を送っていた。ある日彼は自伝執筆のため、口述筆記の助手として青年ジョンを雇い入れる。執筆は順調に進むが、ささいなきっかけからポールは恐怖を覚え始める。ジョンの言葉を通して知る世界の姿は、果たして真実なのか? 何かがおかしい……。彼の正体は? そしてやって来る驚愕の結末。ただの会話が、なぜこれほど怖いのか。会話と独白のみで綴られた、緊迫の異色ミステリ。訳者あとがき=青木純子/解説=村上貴史(出版社HP)



ギルバート・アデア、2作目の体験です。
うん、こういう作家さんなんですね。(2作で語られたくないよというご意見もあるかと思われますが)

『ロジャー・マーガトロイドのしわざ』で知ったときに、古典ミステリ的というか懐古趣味的な作家さんなのかなと思っていたのですが、『ロジャー・マーガトロイドのしわざ』がアガサ・クリスティのかの物議をかもしたという作品へのオマージュになっているように、メタ・フィクションということに非常に強い愛着(?)のある作家さんなんだなあと思いました。

正直なところ、言われているほど怖くなかったです。(すまん…)

ジョンの正体が明かされるところ以降ですが、なんだかちょっと、やけっぱちっぽくありませんでしたか?(笑)
ここまでとても丹念に、ひとつひとつブロックを組んできたのに、あとはもう何でもいいじゃんとばかりに適当なものを積みました、というか、ちゃぶ台ひっくり返して出て行くつもりでしたというか…。

先に「古典ミステリ的」と書きましたが、動機は1990年代頃流行ったアレでして(いや現在でも問題は解決していないでしょうが、ミステリとして)、そこも一気に気持ちが萎える一因になっています。
古典ミステリの動機はなんだっていいのです。(暴言)
なんだっていいのですが、だから、コレじゃなくてもいいだろうと声を大にして言いたいところです。ほかに何なとあるやろう、と。
このあたりの設定はアガサ・クリスティはやはりうまかったと申しますか、わかっていらしたんだと思います。だから陳腐だと言われようがメロドラマだと言われようが、動機は、カネであり女であり嫉妬であることが多かったのでしょう。

この作品で一番のトリックは、とっても読みにくいポールの独白部分ですね。
そして、だから「本」なのであり、だからタイトルが生きてくる、という部分はよくできているなあと思います。
しかしそのために、この不愉快な復讐劇を読む価値があるかと問われると、人それぞれです、としか言いようがありません。

もしこの手法…というか、文学作品におけるテキストとは何か、という主題に興味があり、なおかつミステリがお好きな方には、むしろ『アクロイドを殺したのは誰か』(ピエール・バイヤール著・筑摩書房)をオススメいたします。
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by n_umigame | 2010-01-02 21:05 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
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