*さいはての西*

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『崖の上のポニョ』(2008)

海を臨む崖の一軒家に住む5歳の少年・宗介は、瓶に入り込んで動けなくなっていたさかなの子・ポニョを助けた。一緒に過ごすうちにお互いのことを好きになる2人だが、ポニョの父親・フジモトによってポニョは海へ連れ戻されてしまう。それでも宗介を想い、人間になりたいと願うポニョは、妹たちの力を借りてフジモトの蓄えた魔法の力を盗み出し、再び宗介の元を目指すが……。(goo映画)

地上波にて観賞。
もういいかなと思うのでネタバレ満載です。


こわいです。
エロいです。
そして、こわれてるです。(作ったひとが)(いや物語もだが)

こわかったりエロかったりするのは『千と千尋の神隠し』あたりからはばかりがなくなってきた印象でしたが、それにしても、これは。

体の4分の3寝てる状態で一杯ひっかけながら録画したものを「ほへー」と見て気持ちよく寝る。つもりだったのですが、あまりの怖さにだんだん目がさえてきて、じっと座っていられなくなり、最後にはコップを持ってうろうろ歩きながら見ていました。

あらゆる創作物は排泄物である。
それはわかっていますが、わたくしもいいかげんいい歳こいた人間なのでだからって「フケツよー!!」と叫んだりはしませんが、さすがに、いいのか、こんなん、地上波垂れ流しで。
しかも、良い子のみんなが見るであろう地上波で。
(本編開始時間をゴールデンタイムからずらしたのは、放送側のせめてもの良心なのか、放送責任者が無意識に「よくわかんないんだけど、なんとなく、やばいよコレ」と思ってそうしたのか。いや、視聴率命のTV局が、そんなあやふやな個人の直感で放送時間を操作したりしないだろう。)

ここは「ポニョ、かわいい~v」などと当たり障りのないことを言っておいて逃げるのが無難かと思うのですが、これほど「解釈せよ」というわかりやすいメタファにあふれた作品を突きつけられて逃げるのもいかがかと思いますので、以下はわたくしの脳内の垂れ流しです。

(この作品は「分析(解釈)したい」という欲求に火をつける作品らしく、ちょっと検索しただけでもすばらしい解釈にあふれていますね。
単におもしろくないだけの駄作ならこれほどの「分析(解釈)したい」という衝動を招かなかっただろうと思いますので、それだけでも宮崎駿…老いたりと言え侮りがたしという印象です。)

↓もぐっておきます。(まとまらなくて超長いです)(そしてPG12です)








・インスタントラーメンがおいしそう。ネギ?の小口切りはへたくそすぎるような気がするけど。
・ホットミルクのハチミツを生まれて初めてなめて「うっわぁああ、おいしいいぃぃい! ほっぺた落ちそうー!!」なポニョにキュゥウウゥウウンvvvvv となりました。うんうん。
・波乗りストーカーのポニョのシーンはアニメーションのダイナミズムが楽しかったのですが、同時にものすごく怖かったです。こういう妖怪がいませんでしたか。子どもの頃に見た『日本昔ばなし』に出てきた「船ゆうれい」とか、「さまよえるオランダ人」とか「サルガッソー」とか、海にまつわるこわい話が一気にフラッシュバックしました。「姿が子ども」っつーのが、そして「終始笑っている」っつーのが、さらにこわい。

以上、ふつうの感想3点でした。


さて。
以下はもう言わずもがなな「解釈」になりますので「はいはい。はいはい。はいはいったらはいはい」と聞き流しておいてください。

ファンタジーというのは「行きて帰りし物語」である、と定義された瀬田貞二さんのことばにふかーく頷いたことがありますが、そういう意味で、この『崖の上のポニョ』は「行きっぱなし」です。
「異世界」へ「行って」人間的成長を伴って、あるいは何かを喪失して(その代わりに何かを得て/得ずして)「帰ってくる」というのがファンタジーの定石であるというほどの意味と、わたくしは解釈しています。
そういう意味でもファンタジーとして、そして物語として破綻しています。

舞台は海沿いの町ですが、つまり「岸辺」ですね。
「岸辺」というのは異界との境界線です。
もっと言えば、「彼岸」「此岸」ということばを引き合いに出すまでもなく、「あの世」と「この世」の境界線です。
そこで「ボーイ・ミーツ・ガール」(ただし5歳)が起きるというのはもうなにをかいわんやなのですが、そのあと定石通りに展開しない。

そこへ大津波が襲い、町は水没し、けれども一夜明けてそこに広がっているのはカンブリア紀の生き物が悠々と泳ぐ美しい海。
ふつうに考えたら大惨事のはずなのに、そこで主人公たちが出会う大人たちは物見遊山にでも行くようにひょうひょうとしている。
カンブリア紀の生き物が現代にいるということは、「世界に穴が開いた」(均衡が崩れた)せいで、時空がゆがんでしまったということなのか。あるいは「カンブリア紀の海に帰したい」というマッドサイエンティストのポニョ父の「命の水」がポニョの脱走のせいで漏れたからか。
(うおー『ゲド戦記』3「さいはての島へ」を読み返したくなりました!原題は"The Farthest Shore"(さいはての岸辺)。宮崎監督やっぱり『ゲド戦記』の呪いは解けないままか)
(そしてこの「命の水」。これも子どもの頃読んだ、海の神が出てくる北欧のこわい話を思い出しました)(注1)

それにしても子どもはともかくいい大人が何をのんきに…と思って見ていて、ふとこわい想像にいきつきました。

この人たち、みんな、すでに、死んでるんじゃ…。

もぬけの殻で山道で乗り捨てられたリサカー。(主人公の母親の車)
水際にうち捨てられた車椅子。
火のともらないろうそく。
どれも「死」のメタファとして読みとれます。

もぬけの殻のリサカーを発見したあと、泣き出してしまう宗助。
ここではじめて年相応の子どもらしい一面を見せるのですが、ポニョに促されて歩き始めます。
そこでトンネルに辿り着きます。
ポニョは「ここ、きらい」と言いますが、宗助は「だいじょうぶ、前に来たことがある」。
トンネルも異界との通路ですが、もうひとつは「産道」のメタファです。
ヒト(ほ乳類)である宗助にとっては「前に来たことがある」のは当然なのですが、ポニョはなぜ「ここきらい」なのかわかりませんでした。
トンネルをくぐり抜ける間に、ポニョは”ヒト→トリ(→カエルっぽい両生類的なもの)→魚”と先祖がえりしてゆき、たどりついたところは海=カンブリア紀の(原初の)海でした。

そこへ最後の砦のように、意地悪婆さん(でも実は宗助大好きのツンデレ)(ツンデレ言うな)トキさんが。
実はトキさんがある意味一番まっとうな感性の持ち主で、ポニョ父に言われて連れていかれてしまったほかのおばあちゃんたちがとっても心配です、ふつうなら。

トンネル(産道)をくぐり抜けて戻った場所は子宮に決まっていますが、ポニョ父から逃げる宗助はトキさんに渾身のダイブ、”頭を下にして”トキさんの”おなかに”抱きかかえられます。
結局トキさんも宗助とポニョもろとも原初の海の中(すべての生き物の子宮)へとひきずりこまれていきます。

宗助にはリサという生物学上の母親がちゃんといるのに、リサが幼い子の母親としては眉をひそめられるような行動(乱暴運転、自宅への置き去りなどなど)を平然ととるのに比して、「ここぞ」というときにヒトが一番安全な場所(だったところ=子宮)へ、体を張って避難させるトキさんは、いったい何なのかと思いました。
ふつうに考えたら「お母さん」はこちらです。
宗助が実の母親を名前で呼び捨てにするのも、何かそこらへんの意味があるのかも、と思いました。

巨大クラゲの中にはおばあちゃん(かけっこのシーン、すっごいかわいい!!)(あのゴールに「でん」するところとか、小学生のときの記憶が甦ってきました。やるやるー!と思って)始め、グランマンマーレ、リサなど全員女性ばっかりで、そこへ入ることが許されているのは”選ばれたオス”だけです。
ポニョの妹たちがトキさんと宗助を守りつつうわーっと大量に同じ場所へ”泳いで”向かう様子からも、あのクラゲがさらに子宮のメタファだとしたら、”選ばれたオス”は何のメタファか、もう言うまでもないでしょう。

”選ばれたオス”=宗助が、グランマンマーレ(原初の海=大いなる子宮)の認証を受けた(=受胎した)結果、世界が再生(文字通りもう一度生まれる)。

ひたすら、こわいこわいと思って見ていたのですが、最後はそこへたどりつくのかー、と、たいへん感心いたしました。

しかし、エンタテインメントとしては成功しているとは言い難いし、こんな「下手な性教育より『崖の上のポニョ』」みたいな作品作ってオッケーなんですか宮崎監督、てゆうか、それを5歳児カップルでやるってどうなんですか監督、と非常にこわかったことも事実です。

半分ほろ酔いで1回見ただけでこれだけいろいろと思うことがあるので、2回3回見たらもっと違う発見があると思います。










(*注1)『かぎのない箱 : フィンランドのたのしいお話』J.C.ボウマン,M.ビアンコ 文瀬田貞二訳/寺島竜一 絵(岩波書店)所収「ユルマと海の神」青ヒゲ譚です。こわいです。寺島竜一さんの絵がトラウマになってます。

*追記*
誤)デボン紀→正)カンブリア紀 訂正しました。
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by n_umigame | 2010-02-07 16:01 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(2)
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Commented by まりお at 2010-02-08 00:11 x
かわいいポニョが大活躍するハートウォーミングなお伽噺、「ET」テイストのアニメ。観ていないのに思いこんでました。怖くて、エロくて、壊れているとは! 

つぶろぐの1月末のNHKスペシャルって、仕事と親の介護をしてきて独身の元看護師のおばあさん、っていうのでしたか? そこだけちょっと見てチャンネル変えてしまいました。皆さんが一様に怖かったといってますね。沢木耕太郎「おばあさんが死んだ」(「人の砂漠」所収)に通じる寂寥感を感じさせる番組だったのかな、と想像してます。
Commented by n_umigame at 2010-02-08 00:31
宮崎監督の脳内妄想をぶちまけたみたいな作品でした。…ってそれいつもなんですが(笑)、”病膏肓に入”っちゃったかんじでした。
こんなバカな感想を抱いたのはわたしだけかなーと思っていたら、けっこう「これエロいですよねー」という感想をウェブ上でちらほら見かけ、安心しました…。(*/∇\*)ハジカシー

>1月末のNHKスペシャル

そう、それです。
寂寥感というより、なんか、もう、茫然とするようなドキュメンタリーでした。NHKはこの番組で何を伝えたかったのか、ナゾです。