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『タイムアウト』デイヴィッド・イーリイ著/白石清美訳(河出文庫)河出書房新社

英国に憧れる大学教授が巻き込まれた驚天動地の計画とは……名作「タイムアウト」、MWA最優秀短篇賞作「ヨットクラブ」他、全15篇。異色作家イーリイが奇抜な着想と精妙な筆致で描き出す現代の寓話集。(Amazon.jp)


非常に完成度の高い、巧いお話がぎゅっとつまった短篇集です。

カテゴライズするならば、ロアルド・ダール、スタンリイ・エリン、ロバート・シェクリイ、シャーリイ・ジャクスン等々の、特定のジャンルに収まりきらない”異色作家”に入るのだろうと思います。

わたくし、個人的にはブラック・ジョーク上等、悪趣味上等で、この手の「奇妙な味」と呼ばれていたという作家群の作品をそれこそ立て続けにむさぼり読みました。そしてこれらの作家が大好きです。とてもおもしろいエンタテインメント作家たちだと思います。
なのですが、そこへ、このデイヴィッド・イーリイをくわえることに、逡巡を覚えます。

収録作の「ペルーのドリー・マディソン」を読んでいて何とはなしにジョン・アップダイクを思い出し、だからというわけではないのですが、イーリイという作家は、エンタテイナーというよりはむしろ純文学にカテゴライズした方がよいのではないかなあと。
別の言い方をすると、エンタテインメントとしては一線を越えてしまっていて、後味が悪すぎる。

いや、例えばシャーリイ・ジャクスンにしたって、「いやあああああー!!」と叫んで逃げたくなるような、不愉快で泣きそうになる作品もありますよ?
例えば「くじ」なんかは、もしかしたらこの短篇集収録の「隣人たち」とちょっと被ります。アメリカが”巨大な田舎”と揶揄される理由が頷けるような、閉じたムラ社会でのリンチ、という点で似ているようにも思われます。
ただ、「くじ」にははっきりとした(理不尽で不条理ではあるものの)悪意があるのですが、「隣人たち」は善意に基づいており、それが後味の悪さに拍車をかけています。
でもまあここまではギリセーフでした。

決定的に、ちょっと待ってと頭の中で警報が鳴ったのが「日曜の礼拝がすんでから」。
罪に対して罰が重すぎる上に、「それはないだろいくらなんでも」と。
これは自分が女性だからそう思ったのかもしれませんが、早川の「異色短篇作家」シリーズでこの警報が鳴ったことはありません。

誤解があったら申し訳ありませんなのですが、純文学の作家が多少人として壊れていてもなんだか納得できるのですが、エンタテイナーは最後の一線を越える壊れ方をしてちゃダメだという思いこみがあるようです。だって、エンターテイナーなんだから。

表題作「タイムアウト」はイギリスかぶれの老教授が悲しくも笑えるバカSFですが、この作品に代表されるように、デイヴィッド・イーリイってアメリカの作家なんだなあと、妙に納得してしまいました。
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by n_umigame | 2010-02-24 22:12 | | Trackback | Comments(0)

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