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『アガサ・クリスティ ミス・マープル3』#2:無実はさいなむ

資産家の女性レイチェルが自宅で殺害され、養子の息子ジャッコが逮捕され死刑になる。
2年後、故レイチェルの夫リオは元秘書のグエンダと結婚することに。グエンダに招待されたミス・マープルが結婚式の数日前に屋敷に着くと、リオの5人の養子の子どもたちも集っていた。そこに突然、学者のキャルガリが現れ、ジャッコのアリバイの証人だと告げる。ほかに真犯人がいるということだ。屋敷にいる全員が互いに疑いの目を向ける。(NHK海外ドラマHP)


『無実はさいなむ』はノンシリーズもので、過去『ドーバー海峡殺人事件』という「ドーバー海峡まったく関係ないじゃん」という邦題で日本でも公開されたそうです。
主演はキャルガリを演じたドナルド・サザーランド。ほかフェイ・ダナウェイ(レイチェル。今思うと適役でした)やクリストファー・プラマーなど錚々たるキャストでした。
(ちなみに坂田靖子さんのイギリスものの傑作シリーズ「マーガレット奥さんの珍道中」の中にも同名のエピソードがあって、こちらはとても楽しい一品です。こちらもぜひに。好奇心旺盛なマーガレット奥さんと常識人のタルカム・オブライエンさんの仲の良いご夫婦が大?冒険、という設定は、クリスティーの「トミーとタッペンス」に似ていますね。)

いきなり語るモードなのは、『ドーバー海峡殺人事件』でミッキー(マイケル)を演じたマイケル・マローニーさんがわたくしの心の恋人だからでございます。えへ。
見たいよ見たいようおー!と遠吠えしていましたら、とあるいつもお世話になっている親切な方が「ほれ」とビデオをくださいました。今も大切に持ってします。(いいかげんDVDにダビングしなくちゃ)

クリスティのノンシリーズものは、名探偵が活躍するシリーズものより地味な印象ということもあってか、日本ではあまり評価されていない印象を受けるのですが(『そして誰もいなくなった』のような超弩級は別として)、実は傑作が多いと思います。
「名探偵」が登場するとどうしても謎解き(パズル)に力点が置かれてしまい、ドラマの部分がなおざりにされがちなのですが、ノンシリーズものは犯人が分かってすっきりという単純なものではなくて、本を閉じた後もいろいろと考えてしまうような作品が多いです。

ですので、本来ノンシリーズものであったこの作品にシリーズ探偵を配すというのはいかがなものかと危惧しておりましたが、そして00年代になってからのクリスティ原作ドラマの改変がどれもこれも、控えめに申しても大・失・敗☆じゃなくて?というものが多かったため、「またか」という思いもあったのですが、いやいや、申し訳ありません。
やはり虚心坦懐に見なければなりませんね。
これはミステリドラマとして、とてもよくできていました。

ただ、がんばって難癖をつけるとしますと、やはりノンシリーズもののように、「探偵役も含めて誰が犯人かわからない」というハラドキ感は減少していたことはいなめません。
シリーズ探偵が犯人(ということももちろんありますが、それだと「いきなり最終回」ですからね(笑))という可能性は基本的にシリーズものではゼロなため、ミス・マープルが除外されてしまう。
そしてミス・マープルが必ず真相を解明するという事前の安心感が視聴者にあるため、そんなに意外な結末にはならないということも折り込み済みになってしまいます。

今回は、見せ方があまりにもそれらしかったため、途中で犯人がわかった方が多いと思われますが、
↓以下ネタバレ(犯人含む)感想文(ご注意ください)

















原作では、このドラマのようにわかりやすく「家政婦は見た、どころか家政婦がやった!」というオチではなく、クリスティがときどき使った手、「イアーゴウ型」犯人が本当の犯人、という真相だったかと思います。
つまり、自分は手を汚さず殺人を実行する者が真犯人であるという。
クリスティはこのあたりの信賞必罰がはっきりしていて、本当に無実の罪で死刑にされてしまったキャラクターというのは『五匹の子豚』のあの人くらいしか今思い出せません。

TVドラマとしては原作より今回のような見せ方の方がわかりやすかったのかもしれませんね。

ところで、先行する映画作品の向こうを張ってか、今回は豪華キャストでした。わたくしでも知っている顔がごろごろと。
バーン・ゴーマンは『トーチウッド』のオーウェンですが、この役者さんほんとうに「こういう」役が似合いますねー。(笑)
グエンダもどこかで見たなあと思っていたら、『愛しい人が眠るまで』というイギリス版『ゴースト』みたいな映画の主演だった人でした。(そしてなぜわたくしが知っているかと言いますとマイケル・マローニーさんが出演していたからですよ何か? アラン・リックマンも出ていました。) 吹き替えの方の声がなぜかすごく耳障りで(疲れていたからか)、途中で死んでくれてほっとしました。(←ちょっとちょっと!!!)
そしてきっとキャストのクレジットから言うと、ジェーン・シーモアが真打ちなのでしょうね。(瞬殺でしたが…)『ドクター・クイン 大西部の女医物語』が有名かと思いますが元ボンド・ガールだったのですねえ。


さて、次はかわいそうなバトル警視が消された(笑)『ゼロ時間へ』です。
バトル警視も好きなので残念ですが、ドラマのできがよければまあヨシ。としましょう。
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by n_umigame | 2010-03-25 00:36 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(4)
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Commented by キムリン at 2010-03-26 08:36 x
詳しい解説ありがとうございました。結構豪華キャストだったとは思いませんでした。
見る前は「無実はさいなむ」という表題から、「五匹の子豚」のようなお話なのかと思ったので、見終わった最初の感想は「全然無実じゃないじゃん」(実質的な殺人の黒幕、アリバイ作りなどもして実行犯よりもずっと悪質)でした。でもここでの「自分は手を汚さず殺人を実行する者が真犯人」という解説である程度納得しました。骨の髄まで悪のジャッコも、「家族と本当の母」を守るために死刑になったのか、でもその努力も証人の突然の出現で無に帰したのか、家政婦は証人が現れなかったとしても元秘書を結婚式前に殺しただろうか、などなど以外と奥が深かったのですね。
Commented by n_umigame at 2010-03-26 23:17
キムリンさま、コメントありがとうございました。
「解説」というより独り言垂れ流しという当ブログですが^^;)、何かお役に立てたのでしたらうれしいです。
クリスティーは、「法では裁かれなかった殺人の断罪」というテーマで、繰り返し作品を書いた作家でしたね。「法に触れなければ何をしても良いのか」という、現代でも通じる問いかけでもあります。とある作品中で、そのような殺人犯は「イアーゴウ型」と示唆されていますが、これ以上ない的確な表現だと思います。
また、「スゴイよ!シェークスピア!」という、お芝居好きのクリスティーらしいシェークスピア礼賛でもあるのかもしれません。形式美を重んじる本格ミステリは、お芝居と相通ずるものがあると思います。

Commented by まりお at 2010-09-29 21:51 x
途中で死んでくれてほっと…女の人は強い!ですね。(笑) 私は彼女にすっかり感情移入。やっとつかみかけた幸せの絶頂にいたのに、暗転さらに殺されるなんて。可哀想でした。ラストで愛する者たちから冷たい視線で断罪されて打ちのめされる犯人も印象的でした。
(昨日の再放送でまた観て、やっぱりよくできたドラマだなあと思いましたので、以前の記事ですが書いてしまいました。スミマセン)
Commented by n_umigame at 2010-09-29 21:58
以前の記事でもコメント大歓迎ですのでお気になさらず~。
いや~どうしても吹き替え声優さんの声がダメだったんですよ。でも再放送で途中から見ていたらあんまり気になりませんでした。やっぱり疲れていたのでしょう…年度末でしたし…(遠い目)。
とてもかわいそうな人だったんですが。殺される理由なんか何もないですものね。
ドラマとしては秀作だったと思います。