*さいはての西*

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『51番目の密室』早川書房編集部編(ハヤカワ・ポケット・ミステリ)早川書房

伝説のアンソロジーが、今またここに甦る。好評『天外消失』に続いて贈る、短篇ミステリの神髄

「密室を抜け出す方法としては、完全に新機軸のものだと思うんだ」アメリカ探偵作家クラブの月例会の席上、現代最高の密室派ミステリ作家ワゴナーからそう話しかけられた駆け出し作家のマニックスは、そのことをすっかり忘れていた。新聞で、ワゴナーの他殺死体が発見されたという記事を見るまでは。現場は完全な密室で、しかもデスクに向かったままの死体には、首がなかった。現場の状況がワゴナーの考案した最後のトリックと同じであることに気づいたマニックスは、密室のアイデアを頂戴すべく勇んで駆けつけるが……ミステリ業界をネタにしたロバート・アーサーの上記表題作をはじめ、コーネル・ウールリッチ、クレイグ・ライス、クリスチアナ・ブランドらの傑作ぞろい。

【収録作品】
うぶな心が張り裂ける(クレイグ・ライス)/燕京綺譚(ヘレン・マクロイ)/魔の森の家(カーター・ディクスン)/百万に一つの偶然(ロイ・ヴィカーズ)/少年の意志(Q・パトリック)/51番目の密室(ロバート・アーサー)/燈台(E・A・ポー&R・ブロック)/一滴の血(コーネル・ウールリッチ)/アスコット・タイ事件(ロバート・L・フィッシュ)/選ばれた者(リース・デイヴィス)/長方形の部屋(エドワード・D・ホック)/ジェミニイ・クリケット事件(クリスチアナ・ブランド)/〈座談会〉短篇の魅力について(石川喬司、稲葉明雄、小鷹信光)
(出版社HP)


ヘレン・マクロイの作品が収録されているので購入したのですが、すでに『歌うダイヤモンド』で「東洋趣味(シノワズリ)」として収録されていた作品で、既読でした。がっくり。
ところがそれ以外の作品が「大当たり」が何作かあったので、ちゃらにしたるわ!(なぜそんな上から)
まだ読んでいない作品もあるのですが、とりあえず読んだ作品の感想をアップいたします。

ネタバレ気味でまいりますので、もぐります。









・うぶな心が張り裂ける(クレイグ・ライス)
→酔いどれ弁護士J.J.マローンのシリーズ。
クレイグ・ライスはもしかしたら短篇の方がおもしろいのではないかと思いました。
もっと言うと、ジェイクとジャスタスが出てこない方がおもしろいのではないかと思いました。
好みの問題でしょうけれども。

・燕京綺譚(ヘレン・マクロイ)

→既読でした。
が、この、凝った翻訳がすごい。巻末の座談会によりますと、田中西二郎さんのこの翻訳がある意味伝説を作ったような作品だったそうで(笑)、納得です。「原作を食ってる」とまでは申しませんが、訳者の方の一個の作品になっています。
原タイトルは"Chinoiserie"。西洋人の東洋趣味を自嘲気味に揶揄して言う言葉ですが、ヘレン・マクロイの教養の高さが伺える一品です。

・魔の森の家(カーター・ディクスン)
→実は前述の『バナナの皮はなぜすべるのか?』でも登場しましたが、HM(ヘンリー・メリヴェール)卿がバナナの皮ですべるシーンがある作品があるらしい、と知ったとき、「ははは、それってミステリ界の都市伝説なんじゃないの」と思っていたら、こ れ か い。
ほんとにやったんだ、ディクスン・カー。すごいな、ディクスン・カー。さすが百戦錬磨の古典本格ミステリスキーのおじさま方のアイドルだよ。
ミステリとしても傑作なのですが、正直、「HM卿がバナナの皮ですべった作品」として永遠にわたくしの心に刻み込まれました。ありがとう、ディクスン・カー。


・百万に一つの偶然(ロイ・ヴィカーズ)

→まったく、悪いことはできませんね。「まだ住んでますよ」は大笑いですね(笑)。
犬がかわいいよ。

・少年の意志(Q・パトリック)
→未読です。

・51番目の密室(ロバート・アーサー)
→「密室」というのはつまり「密室じゃない部屋」のことなのです、という、鮮やかなサンプルのような作品でした。
しかし、なんという豪腕(笑)。てゆうか、ありなのかそれ。
実在した(する)ミステリ作家たちの名前がたくさん登場してそれも楽しいです。
この作品を読んで、昔のギャグマンガ『×(ぺけ)』に出てきたネタを思い出しました。
刑事とその部下が殺人現場に赴くのですが、
「…つまり密室殺人か」
「はい、ドアも窓もいっさいありません」
「…じゃあ俺たちどこから入ったんだ」
((´∀`))。

・燈台(E・A・ポー&R・ブロック)
→幻想小説でした。レイ・ブラッドベリの『霧笛』を思い出しました。
合作のようなのですが、どこまでポーでどこからブロックなのでしょうか??

・一滴の血(コーネル・ウールリッチ)
→ウールリッチ(アイリッシュ)らしい作品でした。うまいですね。
日本刀が無事だったのかどうかちょっと気になりましたが。『エリック・ザ・バイキング』とか『モンティ・パイソンのホーリー・グレイル』を見ていて、中世ヨーロッパの剣は文字通り「たたっ斬る」(=高いところから振り下ろす腕力がものを言う)武器であるというイメージが強いのですが、日本刀はやはり「斬る」としか言いようがない武器ですね。

・アスコット・タイ事件(ロバート・L・フィッシュ)
→シュロック・ホームズシリーズ。言わずと知れたシャーロック・ホームズのパロディです。
初めて読みましたが、いやー、大爆笑。
いしいひさいちさんの『コミカル・ミステリー・ツアー』に出てくるホームズを何となく思い出しますが(笑)、これだけ書けるってことは、それはホームズを心から愛しているんだね、ということがよーく伝わってくる楽しいパロディでした。

・選ばれた者(リース・デイヴィス)
→読んでいる途中です。

・長方形の部屋(エドワード・D・ホック)
→ヒイィィィ・・・・・・・ (((゜д゜;)))。ちょっとゴシック・ホラーみたいなオチなのですが、時代設定がこの作品が書かれた「現代」なので、いろいろと気持ちの悪い作品に仕上がっています。

・ジェミニイ・クリケット事件(クリスチアナ・ブランド)
→この作品を読めただけでもこの本を買って良かったと思った作品です。
短篇でこれだけめくるめく2枚返し3枚返しが来るのがすごい。ジェットコースターに乗っているような気分を味わえ、最後は垂直にまっさかさまです。
途中から「もしかして…」と、先は読めるのですが、うわあああ、やっぱりそうなの!? というショックが来ると申しますか。
ちなみに、この作品も、アメリカ版とイギリス版でオチが違うそうで、早速イギリス版が収録されているという『招かれざる客たちのビュッフェ』も走って買いに行きます!

このアメリカ版は傑作の名が高かったのにしばらく手に入らない状態だったようです。『北村薫の本格ミステリ・ライブラリー』(角川文庫)に入って初めて読めて…という感想を見かけ、「え、わたしその本持ってますけど。ということは読んでなかったのか!」と反省しました…。

・〈座談会〉短篇の魅力について(石川喬司、稲葉明雄、小鷹信光)
→座談会もおもしろかったです!
1970年代初期頃に行われたものらしいのですが、謎解きパズルミステリだけがミステリじゃないだろ、というご意見と、でもそこを無視してミステリを語れないだろ、というご意見のガチンコが楽しかった(笑)。
そういうことが真剣に話し合われる時代があったのですね。
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by n_umigame | 2010-05-17 19:46 | ミステリ | Trackback | Comments(4)
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Commented by Yuseum at 2010-05-18 22:03 x
今、調べて気づいたのですが、Yuseum。結構、これらの収録作品持ってますね。
クレイグ・ライスもヘレン・マクロイもロイ・ヴィカーズもQ.パトリックも、収録短編集持っているけど、読んでないやσ(^◇^;)

HM卿確かにすべりましたね〜、シュロック・ホームズは最高ですね(^^)、ホックの作品は意外に印象に残ってないなぁ、、、とか、感想は多々あれど。。。

やっぱり、クリスチアナ・ブランド\(^O^)/
Yuseumは「北村薫の〜」で読んだのですが、その前に「招かれざる客たちのビュッフェ」でイギリス版を読んでました。
アメリカ版の方が結末がドンッと来るのに対し、イギリス版はドロドロドロ〜みたいな感じでしょうかw

「招かれざる客たちのビュッフェ」は是非読んでみてください!
あの後味の悪さといったら、、、Yuseumはハマりました(^^ゞ
Commented by n_umigame at 2010-05-18 23:30
やっぱりクリスチアナ・ブランド、ですね!(*゚д゚*)=3
もうこの短篇集の中ではぶっちぎりと言っていいのではないかと思いました。『招かれざる客たちのビュッフェ』も読んだらまた感想をアップしますね。
クリスチアナ・ブランドは読んだことがなかったので、これから全チェックです!オススメがあったらまた教えてくださいね!(・∀・)ゞ
Commented at 2013-02-25 22:03
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by n_umigame at 2013-02-25 22:04
>ささ さま
初めまして。ネタバレとのことでしたので、鍵をかけて再投稿させていただきました。
お尋ねの件ですが、申し訳ありませんが、ディティールを忘れました。