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*さいはての西*

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『孤高の警部 ジョージ・ジェントリー』#6話「憎しみの残影」 ; Gently in the Blood

ジェントリーとバッカスは、ある密告から、墓地で張り込みをしていた。時間通りに1人の男がスーツケースを持って現れ、取り押さえようとするが、逃げられてしまう。しかし現場に残されたスーツケースの中には、失効したパスポートが200冊以上入っていた…。(AXNミステリー)



前々回は重く、前回はさらに輪をかけて重かったですが、今回はさらにさらに輪をかけて重かったです…。

「警察の汚職」「IRA」「戦争」「児童虐待」「人工中絶」「死刑」と来て、もちろんこれが来ますとも! という感じで、今回の時代ネタは、「人種差別」でした。
(そして時代ネタに収まっていないところが大いに問題なのでございますが)

ネタバレてます、もぐります。↓














毎回ミステリとしても侮れない構造と秀逸な脚本で展開されるこのドラマ。
今回は「マギーの赤ちゃんの父親は誰か」という部分のどんでん返しが効いていて(薄々予想はつくものの)、これが物語全体の「ボタンの掛け違えによって起きた悲劇」のポイントにもなっていました。

もちろん、そのそもそものところは根深い人種差別にあります。
最初はバッカスに「口に出す前に考えろ」「今度そんな(差別的な)ことを言ったら、縁切るぞ」と、いつものようにお説教をしていたジェントリー。そのジェントリーでさえ、アラブ人の容疑者に対してかっとなって差別的なことを言いそうになり、言いとどまるシーンが出てきました。
何かを「言ってしまう」ことと「寸止めで腹に収めることができる」ことの間にはものすごく深い隔たりがあると思うのですが、ジェントリーは自分の中にある偏見にきちんと気づいています。
このあたりの、このドラマの絶妙なさじ加減に感心するのですが、ここでジェントリーを「わたしにはこれっぽっちも人種に対する偏見なんてありません」というキャラにしてしまうと、とても白々しいと思います。うまいですね。だって、誰の心の中にも偏見はあるのですから。
偏見をまったく持つなとは言っていない、だってそれは無理だから。だからジェントリーのように、自分は偏った目でものを人を見ているということを自覚して、自らを戒めることができるかどうかというところが大事なんじゃないのですか?というメッセージを感じました。

アラブ人の同級生の勘違い男も、なんだかかわいそうでしたね。
教師にさえいじめられていて、そんな中で自分に親切にしてくれたら誰だって嬉しいでしょうし、もしかして自分のこと好きなのかな?と異性だったら勘違いすることも十分起こりうるでしょう。
前回の犯人もエゴ丸出しでしたが、今回の犯人のエゴは、根っこに人種差別があるわけで、周囲の人が受け入れてくれていたら違った結果もあり得たというところが違います。
マギーはたまたま女性でしたけれども、彼女が男性でもきっと同じだったろうし、そうしたら勘違い男に殺されることもなかったのかと思うと……。はー…というため息しか出ません。

それで、前回も思わせぶりに死刑のシーンで終わったのですが、「ええ、今回もですか!?Σ(゚д゚;)」とさすがにびっくりしまして、このドラマの製作チームが意味もなく同じシーンで終わるということはしないと思いますので、今回も絶対何か意味があるんじゃ!? と見終わった後うんうんと考え込んでしまいました。(しかもご丁寧に首の骨の折れる音で終わるなんて終わるなんてー!!!…… (((゜д゜;)))) 
で、考えたのですが、これはあれですか、まだ死刑の残っている某・先進国(笑)2国に対する含みがあるんですか?
「人種差別が原因でこんな悲劇が生まれたのにも関わらず、差別している方は罰されることはなく、むしろ善良な市民として暮らしていて(マギー母とか)、この犯人はこんな残酷な刑で死ぬんですよ? どうよ?」という意味ですか。それで、あれですか、自分で「先進国(笑)」とか言ってるんですよね、おたくさん?(゚m゚*)プッ とかいうことですかー!!うわああああん!!(ニコラがちょっとがっかりキャラになっていて悲しかったため、感想がやけっぱち気味です)

ラストの方、字幕では「有色人種お断り 犬お断り」としか出ませんでしたが、張り紙では
「No Irish,
No Coloured,
No Dogs」となっていましたね。戦前の上海租界で「犬と中国人お断り」という看板が立ててある公園があったという逸話を思い出しました。
「アイルランド人お断り」の張り紙は100年以上前にアメリカではよく見かけられたそうですが、イギリスでは1964年になっても当たり前のように存在していたのですね…。これはイギリスの田舎だからなんでしょうか? J.F.ケネディが大統領になったときイギリスでは「アメリカに行けばアイリッシュでも大統領になれるんだぜ」と言われたそうですから、こちらも根が深いですね…。

ああ、重かった…。(。。lll)

さて、恒例、笑えるシーンを探せ! ですが、

・仕事中なのにいきなりバッカスを「ジョン」と呼んでいるジェントリー。バッカスもジェントリーに対して、Sir一辺倒でなくなりました。仲良くなりましたね~ニヤニヤ。殴りっこ(=前回のボクシング試合)して仲良くなるなんて、きみたちどこの少年マンガのキャラ?
あ、うそです。
誤) 殴りっこ
正) バッカスが一方的に殴られただけ

・もういっこ仲良しネタですが、バッカスの後ろからそ~っと近づいて「わっ!(゚▽゚=)」ってやるジェントリー。期待通りのびっくり具合にジェントリーでなくても大爆笑です。かわいいなバッカス。(笑)

・聞き込み?中にフィリップ・セイントを名乗るジェントリー。おかげでセイントさんはフルボッコにされてしまい、怪しかったのは実は女装癖があっただけということがわかります。

・それだけでもひどいのに、バッカスは意識不肖で眠っているセイントさんのぼろぼろの見るからに痛そうな指を「ぎゅうう」と押さえて起こします。見ていて「いでででででで」とこちらが声に出してしまいましたよ、ひでえなバッカス…。

・それだけでもひどいのに、「ただの女装癖でした。ははははははは」ってバッカスといっしょに笑ってすまさないで下さいジェントリーさんも。まったく、このメンターにしてこの弟子ありですよ。どこまでもかわいそうなセイントさん。(゚m゚*)プッ(←ちょっと)

・せめて赤ちゃんが助かって良かったです。

・ジミーが実の父親を受け入れられる人で良かったです。


今回のエピソードタイトル、"Gently in the Blood"も絶妙なタイトルでした。
次回で最終回なんて、残念すぎます。ううう。
by n_umigame | 2010-05-30 21:18 | 映画・海外ドラマ