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『名画で読み解く ブルボン王朝12の物語』中野京子著(光文社新書)光文社

世継ぎの混乱と血みどろの宗教戦争に彩られた王朝の誕生から、十九世紀、ヨーロッパ全土に吹き荒れた革命の嵐による消滅まで、その華麗な一族の歴史を、十二枚の絵画が語りだす。『名画で読み解くハプスブルク家12の物語』に続く、ヨーロッパの名家を絵画で読み解く第2弾。(Amazon.jp)


『名画で読み解く ハプスブルク家12の物語』で、「中野京子さんのご本でもっと”こういうの”が読みたいなあ」と思っていたら、姉妹編が出ました。しかも、ブルボン朝。今回は即買い即読みでした!

前作がハプスブルク家を軸にヨーロッパ史を概観できるような1冊になっていたのと比して、今回もそういった面もあるもののブルボン朝に大筋では特化されています。
ハプスブルク家は政略結婚がお家芸だったようなので、その差かもしれません。(笑)

今回もさまざまに魅力的な(でも自分の半径10km圏内にいてほしくない)人物の群像であふれておりますが、一番印象に残ったのはアンヌ・ドートリッシュです。

最近はNHK人形劇でまた新たな『三銃士』のファンも増えているかと思いますが、ご多分に漏れずわたくしのあの時代のフランスのイメージというと『三銃士』でした。
あれはデュマの描き出したフィクションなので、リシュリュー枢機卿が単なるワルモノだったり、ルイ13世もここまで印象が薄くなかったかと思うのですが(笑)、日本で言えば『仮名手本忠臣蔵』みたいなもんなんでしょう、きっと。
その忠臣蔵のおかげで、アンヌ・ドートリッシュのイメージももにょもにょだったりこしょこしょだったりですが(物語のネタバレになるので、『ダルタニヤン物語』をお読みください)、今回この著書を読んで蒙を開かれた思いがいたしました。

まずルイ13世が印象が薄いだけではなく積極的に冷淡。というか女性に興味がなかった。というかむしろ紅白饅頭で言うと白い方が好きだったそうです。(その例えじゃわかりません)
そんなわけでルイ13世には猫に小判だったアンヌ・ドートリッシュの美しさは、逆にその気の毒な王妃という悲劇性もあいまって、ほかの騎士道精神あふれる男性にはモテモテだったらしいです。
それだけだったら「へー」で終わったのですが、著者はこう語ります。

アンヌ・ドートリッシュは「その賢い目で数々の陰謀や裏切りを見てき」、身の振り方が非常に巧みで、引き際もみごとだった。「十五で結婚し、三十ともなれば女としての盛りは過ぎたといわれた時代、(中略)四十近くになって初めて子どもを産み、いつまでも輝きを失わなかったのは、幸せだったからに違いない。人生前半の辛い日々を忍耐と知性で乗り切り、後半の栄光を掴んだ。」と。
そして、最後にこう結びます。
「彼女が幸せを呼び込めたのは、人を愛せたこと、愛し続けられたことにあったような気がする。」

なんとなく、トーヴェ・ヤンソンさんのあまりにも有名なムーミントロールのムーミンママの、「モラン(という女の妖怪がいるのです)が凍るように冷たいのは、誰からも愛されないからではなくて、誰も愛さないからだ」という
名ぜりふを思い出し、ふかーくいろいろと考えました(笑)。

アンヌ・ドートリッシュが四十近くになって産まれた子が「太陽王」ルイ14世ですが、王家に産まれた者にしては珍しく、母親の深い、しかも賢明な愛情を一身にめいっぱい受け、ルイ14世は母親との関係は終生良好だったそうです。ほかの王家の人々の、読んでいるだけで心が折れそうな家族関係を見ていると、それだけでルイ14世がどれほど幸運な人であったかがわかります。

『ハプスブルク~』と前後編で読むと倍楽しめるかもしれません。
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by n_umigame | 2010-06-10 22:45 | | Trackback | Comments(0)

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