*さいはての西*

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『その言い方が人を怒らせる : ことばの危機管理術』加藤重広著(ちくま新書)筑摩書房

「申し訳ありませんが、納期に遅れそうです」
 どこがいけない?

適確に伝えるには、日本語が陥りやすい表現の落とし穴を知ることだ。思い当たる「まずい」事例を豊富に取り上げ、言語学的に分析。会話の危機管理のための必携本。(出版社HP)

・この件につきましては、誠に申し訳ありませんでした。
・おかげ様で志望校に合格しました。
・そういう場合は事前に連絡するものです。
・コーヒー、お飲みになりたいですか?
・この仕事、きみにでもやってもらおうと思っているんだけど。
・「このホッチキス借りてもいいですが」「まあ、いいよ」(帯より)


「にせみ(仮)さんの報告書は、いつもおもしろいなあ」
「ありがとうございます!」
「でも、ひとこと多い。」
「ありがとうございます!」

…というような上司との心温まるコミュニケーションが日常茶飯事(だめじゃん)という、わたくしのための本が出たわ。
と、どきどきしながら読み始めました。

読み始めるまでは、掃いて捨てるほど出ているクレーム対応本かと思っていましたが、この本はその手の類書とは一線を画す、非常におもしろい1冊でした。

上に帯から引用させていただいた文章、どれもなんだか変な感じ、嫌な感じがしますよね?
でも、どこが嫌な感じなのか、なぜ不愉快な印象を受けるのか、明確に言語化できなくないですか?

この本では、今まで印象論で終わりがちだったこの「嫌な」感じを、言語学で「語用論」と呼ばれている「文脈を科学する」方法で解析していきます。
「ロゴスとパトス」という概念を使って、ぱりぱりと論理的に解析されてゆくさまは、ある種のミステリーを読んでいるようでとても楽しかったです。
と言っても、理屈ばかりが先に立つごりごりしたところはほとんどなく、読みやすく、やわらかで、すとんと説得される文章です。

これまで言語学では、なぜ通じないのか、なぜ怒らせるのか、なぜわかってもらえないのかといったことを研究してこなかった。ちょっとしたことに腹を立てる人もいれば、同じように言われても何とも思わない人もいる。
そういった「不思議」をことばの研究の裾野を広げるために一役買えれば、と著者はあとがきで書いておられます。

ロジックの重要性を解きつつも、人はそれだけでは通じない、つまりパトスもなければならない、その均衡が大切なのではないだろうか、と。

結局、人との間のことに「これさえあれば」というような特効薬はなく、その場その場で真剣に勝負しなければならないということはわかっているのですが、ある程度テクニカルな部分の理解があれば避けられる衝突もありますよ、ということを理解するのに一助となると思います。
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by n_umigame | 2010-06-12 23:11 | | Trackback | Comments(0)
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