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『ダブル・スター』 R.A.ハインライン著/森下弓子訳(創元SF文庫)東京創元社

そもそも一杯の酒につられて素性の知れない男の話なんかに耳を傾けたのが間違いだった。失業俳優ロレンゾが引き受けた仕事は、行方不明中の偉大なる政治家の替え玉役。やっつけ仕事のはずだったのに、いつのまにやら太陽系帝国の運命まで担うはめになろうとは。プライド高き三文役者の一世一代の大芝居、八面六臂の大活躍! 巨匠に初のヒューゴー賞をもたらした、歴史に残る傑作。解説=高橋良平(初刊時タイトル『太陽系帝国の危機』を新訳・改題)(出版社HP)


ハインラインを読むと、10代のころの甘酸っぱいキモチがよみがえります。
「甘酸っぱい」と申しましてもわたくしの場合は、レモンとかさくらんぼとかそういったものではなく、あえて言えばえーと………酢豚?(いいのか青春がそれで)(まあお肉も野菜も入ってそれなりに栄養バランスが取れていたというほどの意味で)(なおかつパイナップルはない方がいいと言う人もいるけどというほどの意味で)

ハインラインと言うと、やはりまず、『夏への扉』です。(そして短篇「金魚鉢」です)
あのいかにも”古き良き”アメリカ的SF。昨日よりは今日、今日よりは明日の方がきっといい日になる、と何の屈託もなく信じさせられる物語。
あんな物語に10代のころに出会えたのは幸せであったと、大人になってから思います。
何か人生でつまずいたとき、なにもかもがいやになったとき、自分の中にあんな物語がしまい込まれている人と、そうでない人とでは、その後の人生の展開が(ほんのちょっぴりですが)違うんじゃないかと思うことがあります。
真っ暗で前も後ろも見えないときに、遠くまで照らしてくれはしないけれども、あと一歩踏み出すために足下を照らす懐中電灯くらいの明かりにはなってくれる。そんな気がします。

この『ダブル・スター』も、ハインラインらしい作品だと思いました。
そのときはピンチと思えたことに逃げずに正面から向き合うことで、次々とふりかかってくるむずかしい「今この時」を打開してゆく主人公は、そうすることでまったく違った自分の可能性を切り開き、成長してゆきます。
今回初めて読んだにもかかわらず、どこかなつかしい気がするようなお話でもありました。
書かれたのは1956年ということで、コミュニズムに対するむきだしの嫌悪が描かれていたり、デジタルアーカイヴという発想がなく資料はマイクロフィルムだったり、女性といえば紅一点だったり、皇帝がいいやつすぎてうさんくさかったり(笑)、いろいろと細かいところにはひっかかるのですが、一気に読ませます。
「猫を拾うことの困った点は、決まって子猫が生まれることだ。」という文章は、猫好きのハインラインが書くと、「困った言いつつ、顔笑ってる」という感じで、いかにもほほえましかったです。

読み終わって、ローズマリ・サトクリフの『王のしるし』を読み直したくなりました。

拍手だけが喝采ではなく、よい舞台にはいつも暖かい興奮がある。

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Commented by 縁側昼寝犬 at 2010-06-25 00:15 x
 「夏への扉」はいいですよね~。猫の存在が最高で、本の表紙の絵もステキでした。(/ω\)
 で、調子に乗って「人形つかい」を読んで、ナマコがますます地球外生命体に思えてきた私でした…。○| ̄|_

 近頃の東京では、前にお知らせしました「マネとモダン・パリ展」「オルセー美術館展 ポスト印象派」に続いて、「カポディモンテ美術館展」も開催されます。どれも金曜日の夜は7時30分まで入場可、ですので、是非是非、どれかにどうぞっ! 遊び相手がいなかったら立候補しようと思ったんですが、モテモテみたいなので、遠くさいたまの地から声援を送ります。(?)
Commented by n_umigame at 2010-06-27 15:36
『夏への扉』は最近小尾芙佐さんの新訳が出て、またちょっと話題になっていましたね。新訳の表紙もいいですがやはり猫のカバー絵のがステキでした~。ハインラインはあまり数は読んだことがないのですが、「あれっ、こんな話も書くの?」という意外性があります(笑)。


美術展のおいしそうな情報をたくさんありがとうございます! 行きたいー行きたいー。どさくさがあったら是非寄せさせていただきまっす! でもって、また機会がありましたら遊んでやってくださいね! ( ̄∇+ ̄)vキラーン (こんなわたくしでよろしければ…) 出張の場合は出張と言っても「通勤距離が長いだけのふつうの出社」みたいな、タッチ・アンド・リターンの日帰りが多くてなかなか泊まりも難しい最近なのですが。
『芸術新潮』7月号の特集がオルセー美術館で、表紙がフランソワ・ポンポンのシロクマくんの彫刻の写真で萌え死にそうになりました…。かっ、かわいい!!゚+.(。´∀`。)゚+.゚ 一度本物を見てみたいです。


by n_umigame | 2010-06-22 22:02 | | Trackback | Comments(2)

Welcome. 本と好きなものがたり。


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