*さいはての西*

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『モードとエロスと資本』中野香織著(集英社新書)集英社

エロスのエネルギーこそがモードを盛り立て、奢侈品の消費が資本主義を牽引してきた。しかし中世以来の循環が金融危機以後、停止。時代の映し鏡であるモードを通して変化を遂げる社会を描く!

デフレ、エロカワ、少子化…時代の映し鏡であるモードを通して、劇的な変化を遂げる社会をリアルにつかむ一冊。(Amazon.jp)


プチ・お洋服本祭りその2~。

新書で、2時間もあれば読めてしまうのですが、非常におもしろく、いろいろと考えさせられる1冊でした。
惹かれたのは、帯にあった「若者のスーツはなぜ細いのか?」という一文でした。
「……そういう流行だから?」と思ったのですが(笑)、ではなぜ「そういう流行」になるのか、そのあたりの因果関係についての意見が知りたいと思い手に取りました。

今の男性、特に若手の男性のスーツ、シルエットが本当に細いですよね。
やけに肩の張っただぼだぼのシルエットよりは今の方がデザインとしては良いと思うのですが、おしゃれではあるけれどもいっしょに仕事をしたいかと問われると、ちょっと「うーん」となってしまう、そんなこともあります。
で、なぜ自分は「うーん」となってしまうのか。
おそらく、良く言っても「繊細」、悪く言えば少年の体型をアピールするということなので「子どもっぽい」=「頼りない」という印象を受けるのだと思います。(ええ、わたしは「昭和の女」ですとも)もちろんわたくし個人の印象ですし、中身がしっかりしていればそれで問題ナッシンなのですが、服装は自分がどういう人間に見られたいかというアピールでもあると考えると、この細身のスーツは男性はどう思っているのだろうと思うことがあります。

話は逸れますが、衣服だけでなく、この100年日本の男性は線が細くなっているそうです。(もちろん女性もなのですが)
平均身長は間違いなく伸びているので、細くなったのはもちろん「幅」ですよね。昔はずんぐりしていた体型が、今は上背が伸びてスリムになった。ビジュアル的には良いことだと思うのですが、もう一つの要因は顔の輪郭も間違いなく細くなっているということだろうと思います。(やわらかくて濃い味付けの食べ物を日常的に食べていると咀嚼の回数が減って筋肉が衰えるので、顎が痩せます。)
欧米の男性もエリートほど痩せているそうですが、あれはそういう体型を「維持」しているのであって放っておいたらすぐ太っちゃうんだろうなあと思います。
「日本の男性は線が細い」ということをしみじみ感じたのは、新大阪駅で駅の階段を昇っているときでした。わたしの前にスーツの男性が二人いました。二人とも20代後半から30歳くらい、一人は日本人、もう一人は白人の男性。楽しそうに話しながら階段を昇っていきます。二人とも背が高くて183cmくらいはあったと思います。「うわー大きいなあ、でも、全然違う…」と愕然としました。何が違うって、首(うなじ)、肩幅、ウエスト、腕、手、全体的な骨格と筋肉のつきかた、靴の幅まで全部違う。(そこまで見るのは失礼なのですが階段を昇る数十秒の間、思わず凝視してしまったのですヨ *><*)その白人の男性も決して太っていたわけではなかったのですよ。むしろひきしまってカッコイイ体格の人でした。
だからなおさら歴然としていたのですが、その白人の男性を見て思いました、なんて美しい背中。(顔は見ていません。(笑))スーツはやはり欧米の男性を美しく見せる服なんだなあと。
「着こなしが良い人」と「物理的なバランスとしてスタイルの良い人」とはイコールでは決してないのですが、塩野七生さんが日本に帰ってきて何ががっかりするって、スーツ姿の男性の首(うなじ)が細くて筋肉ついてなくてちっともセクシーじゃないのがイヤ! とエッセイで書いてらっしゃいましたが、このときばかりはわたくしもその気持ちがわかりました。(笑)
その日本人の男性も、その上背だし、きっと単体で見たら(オイ)カッコイイと思ったと思います。いかんせん比較の対象が悪かった(笑)、と言うより、そんなジロジロ見ているわたしが一番失礼で悪いのですがごめんなさい…。


閑話休題。
そこへ持ってきて、「男の装いが、細身化、子供化、繊細化、女性化している。」とのことですので、元々勝負にならないくらい「ごつい」「でかい」欧米の男性ですらそんな印象を与えるのに…とちょっと心配になりました。大きなお世話ですが。

では、それは、なぜか。
「男が男を殺す殺人事件の件数が、年々減っている」と教えられた著者は、殺人事件の件数の変化とモードの変化との相関関係が説明できるのではないか、と考え、調べたそうです。
そうすると日本では殺人事件が1950年代末以降年々減少しており、この40年間で10分の1になったのだとか。そもそもの20代前半の男同士の殺人事件の理由を聞いていると「目が合った」とか「メンツをつぶされた」といった口論から始まることが多かったそうで、そんなくだらないことで? と思ったが、そもそも西洋の「決闘」も「名誉が汚された」とか言っているがつまるところケンカとしての理由は同じであると。
 つまり、殺人事件の減少は、男が男社会で張り合うことが少なくなったことの現れであり、それはすなわち、男が配偶者獲得の競争から降りている、というか最初から背を向けていることの現れ、と考えてよいようである。

この現象と、若い男性が自分の心身を「大きく見せる」スーツを着なくなったというファッション傾向の直接的な因果関係を説明するのは難しいとした上で、
だが、恋愛にも結婚にもがつがつすることなく、自分の世界へ逃げようとしているかのような華奢で繊細な男性を見ていると、両者は決して無関係というわけでもないように見える。

と結ばれています。

翻って女性はどうかと言うと、これまでの「タブー」(公式の場で同じ服を何度も着回すこと)を破ったり、女性に「ファッショナブルよりプロフェッショナルに見える服装」を求める企業の出現(ハイヒールと口紅の強要)、「カワイイ」は自分のための装いであって、やはり異性のための装いではないことなどが語られます。

殺人が減るのは良いことだし(しかもそんなくっだらない理由で…)、男女とも恋愛にがつがつしないのは、地球の現状を見て、これ以上右肩上がりに子孫を増やすことが果たして人類に良いことか? という自然の、本能的な抑止ではないかと思いますし、これでも良いように思います。ミジンコも環境が悪化するとオスが増えるそうですので、逆に言うと女性化する社会というのは平和の証では? などと思ったりします。
「男っぽさ」が失われるのは女性としてもちょっと悲しいところもありますが、でもまあそんなものは幻でもありますので(笑)。

補足ですが、上の引用だけですと「ハイヒールと口紅の強要」ってひどくない? と思われる方も多いと思われますが、作中でも言われるようにやはり「ノーメークで顔色の悪い、すりきれたベタ靴を履いている女性」が、仕事先ではじめまして~と出てこられたら、いっしょに仕事をする気になりますか? と問われると、やはり多少カジュアルでもいいのできちんとして見えるものを着用していてほしいという気持ちはわかります。(職場によるんだと思いますけれども…うちの会社も部署によってはかなりラフです)特に被服が、自分のためというよりは相手に対する礼儀を求められるような場所である場合は。
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by n_umigame | 2010-08-24 18:58 | | Trackback | Comments(0)
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