『西原理恵子×月乃光司のおサケについてのまじめな話』西原理恵子, 月乃光司著(小学館)

アルコール依存症は、軽症のうちほど回復しやすい病気です。ところが病気の症状や治療について、また、重症化したときのおそろしさなど、一般的な知識や理解が十分だとは言えません。
本書は、元夫のアルコール依存症に悩んだ漫画家・西原理恵子さんと、青年期に自身が若年性アルコール依存症になった経験をもつ月乃光司さんの二人が、それぞれ家族と当事者という立場から、この病気について語りあいます。かかってからでは治療が困難なアルコール依存症について、多方面から解説した、わかりやすくためになるガイダンスです。
巻頭漫画、巻末には相談先リスト入り。

編集担当者からのおすすめ情報
★漫画家西原理恵子さんの元夫鴨志田穣氏(故人)が最期に遺した小説『酔いがさめたら、うちに帰ろう』(スターツ出版)が映画化され、2010年秋公開されます。本書と表裏をなす内容ですので、ぜひおすすめです。(Amazon.jp)


書店で探すのに苦労したのですが、読み終わってなおさら思いました。
いや、この本、もっと目立つところ、せめて西原さんの読者ならチェックしそうな棚に置いておかないとだめだろう、と。

薄い本ですが、深く深くいろいろと考えさせられるところの多い本でした。

まず「アルコール依存症は病気である、従ってアルコール依存症の人に必要なのは社会的制裁ではなく「治療」である」という西原さんのまっすぐな主張は至極もっともだと思いました。

偏見は無知から生まれるものですが、アルコール依存症はただの酔っぱらいとかのレベルとはもう違う。日本は酔っぱらいに非常に甘い国ですが、立派な病気であるということをまず認識すること。
西原さん自身もご主人がアルコール依存症であるということをまず理解できなかったこと、だから放って置いてしまったこと、今だからこそやはり知識を持っているかそうでないかで、本人も、そして家族ももっと早くにお互いに憎み合わずに済んだはずなのに、という言葉が痛々しいです。

この本を読んでいて「自分が恥ずかしいから酒を飲む、酒を飲んで酔っぱらっている自分が恥ずかしいからそれを忘れたいためにさらに飲むんだ」という『星の王子さま』に登場する酔っぱらいを思いだしてしまったのですが(「どうしてお酒を飲むの?」「恥ずかしいからさ」)、アルコール依存症は「否認の病気」なのだそうです。
誰だって自分が深刻な病気だと言われたらそりゃ信じたくはないでしょうが、飲酒を指摘すると「飲んでない」とウソをつく、隠す、相手を猛烈に批判するなどして自分が病気であることを認めないのだそうです。
これは酔っぱらいが「俺は酔ってないぞー」という状態のもっとひどいのだと思いますが、本人が自覚(「気づき」とか「底つき」と言うそうです)しないことにはまったく治らない病気なのだとか。
「本当にお酒をやめなければ、断たなければ」と心から思わなければ治らない。
ちょっと依存症だったけど知らない間に治ってた、ということは決してないということですね。

この本の後半はアルコール依存症だった月乃光司さんと、ご主人を家族として見守り支えた西原さんの対談で構成されています。月乃光司さんの壮絶な経験談(依存症になるまでの過程と治っていく過程)も鬼気迫るものがありますが、西原さんの考え方、見方にも非常に考えさせられる部分が大きかったです。
もし自分に収入がなければ、ご主人に適切な治療を受けさせることもできずに(内科や外科だと「奥さんがしっかり見張ってなさい」とか「ちょっとくらい飲んでもいいでしょう」とか言われることがあるそうです。それくらい専門知識を要する病気だということですね)家族で路頭に迷っていただろう。仕事があって本当に良かった、と。「一生専業主婦で逃げ切れる保証がない限り、自分の収入がないというのはリスキーな生き方だよね」と従弟のお嫁さんにも言われたのですが、女性も働いている方が良いということの意味が非常に重く感じられました。(内田樹さんも「お金で人は幸せになれないが、不幸を遠ざけておくことができることがある」と書いてらっしゃいましたが、こういう場合には好例と言えるかもしれません。まあどう生きてもリスクのない人生なんかないですし。)

現在日本のアルコール依存症の人は推計80万人。成人男性の50人に一人、成人女性の1000人に一人の割合だとのことで、特に男性は決して小さい比率ではないと思います。
依存症の疑いのある人は440万人、平均寿命は52歳だそうです。
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by n_umigame | 2010-08-25 22:33 | | Trackback | Comments(0)

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