シリアに旅行中のポワロは、そこで遺跡を発掘中の裕福なアメリカ人、ボイントン卿に会いに来た家族と出会う。再婚した妻であるボイルトン夫人は威圧的な態度で、連れ子の息子レイモンドと2人の娘キャロルとジニー、ばあやのテイラーは常にビクビクしていた。その夜、目を覚ましたポワロは、「あの女に死んでもらおう」と話すキャロルとレイモンドの会話を耳にする。翌日、ポワロは一家やほかの人々とともに遺跡発掘現場へ。(NHK海外ドラマHP)
原作はかの『ナイルに死す』を小振りにしたような佳作でしたが、ドラマの方はかなりいろいろと変えてありました。
モロッコでロケを行ったそうで、映像も美しく音楽もドラマティックで、力を入れていることがわかります。
以下、
ネタバレぎみでまいりますので、未見の方は回れ右で~。
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それで、なんでこんな改変をしたんだろうと、いろいろと考えたのですが、原作が母親によるドメスティック・バイオレンスが殺人の動機になりうるだろうという、いわゆる”レッド・ヘリング”(にせの手がかり)としてしか使われていなかったのに比して、ドラマの方では明らかに、この母親によるDVが重要な手がかりかつ直接の動機でした。
申し上げるまでもなくDVは深刻な問題として社会的に認識されてきており、日本だけの問題だけでもなく、そして現代だけでの問題だけでもなくおそらく昔から間違いなくあったのでしょうが、ドラマの制作者は明らかにここを軸に見せる方が良いと判断したのでしょう。
原作が単独犯だったのにドラマは共犯者がいることになったり、原作にはいないボイントン夫人の夫・ボイントン卿が登場したりと細かい改変は賛否両論あるかと思われます。わたくしも実は納得できずに2回見たのですが、2回目にして、この改変はこれはこれで良かったと思いました。
最後のポワロがジニーに言った言葉に、制作者の思いが(心に深い傷を負って生きている人に向かって)込められているのではないかと思ったからです。
「この世に全知全能の神が、その御手によって癒すことのできない傷はありません。
そう信じ続けてください。
その信念がなければ、人は死んだも同じなのです」
ポワロはカトリックなのでこう言わせたのでしょうが、傷は必ず癒えると信じて生きてください、というメッセージはドラマの制作者の意図したものでしょう。
前回の「第三の女」に続き、ポワロさんが「ポワロおじさん」してました(笑)。
12月にもうこのシーズン11のDVD BOXも出るそうですが、今回は迷いなく買うと思います。