*さいはての西*

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「『七人の侍』の組織論」(内田樹の研究室)

久々にすとんときた。

以下ところどころ引用させていただきましたが、全文はこちら。
『七人の侍』の組織論

コレクティブハウスの話から始まり、題名の「七人の侍」の組織論まで。
このアクロバティックな論理展開がいつも楽しいですね。
ときどき論理が飛躍しすぎていてついていけないときもありますが(笑)。

あらゆる共同体では「オーバーアチーブする人」と「アンダーアチーブする人」がいる。
必ずいる。
全員が標準的なアチーブメントをする集団などというものは存在しない。
存在する意味がないから、「作ろう」と思っても作れない。
あらゆる集団はその成員の標準的なアチーブメントに及ばない「マイナーメンバー」を含んでいる。
幼児や老人や病人や障害者は集団内では支援を与えることより、支援を受けることの方が多い。
けれども、これらの「マイナーメンバー」を支援するときに、「自分は損をしている」というふうに考える人間には共同体に参加する資格がない。
あらゆる人間はかつて幼児であり、いずれ老人になり、高い確率で病人となり、心身に傷を負う。
だから、集団のすべての構成員は時間差をともなった「私の変容態」である。
それゆえに集団において他者を支援するということは、「そうであった私、そうなるはずの私、そうであったかもしれない私」を支援することに他ならない。

真に”利己的”であるというのは、こういう意味なんだろうと思います。(と、以前ウチダ先生も書いてらっしゃいました)

共同体に蓄積された資産を「次世代への贈り物」であると考えることのできない集団は短期的に崩壊する。
(中略)
集団成員のうちのヴォリュームゾーンである「標準的な能力をもつ成員」の利便を最優先に配慮する「平凡」共同体も、やはり長くは続かない(全員が均質化・規格化して多様性を失ったシステムは環境変化に適応できない)。
もっとも耐性の強い共同体とは、「成員中のもっとも弱いもの」を育て、癒し、支援することを目的とする共同体である。
そういう共同体がいちばんタフで、いちばんパフォーマンスが高い。


前半はかつてのネイティブ・アメリカンの土地に対する考え方と共通するものがあります。
「われわれはこの土地を祖先から引き継いだのではない。子孫から借りているのだ」。
真ん中は「エコロジカル・ニッチ」のお話に通じます。
地球上の進化の歴史を見ると、最も強かった種はいずれも絶滅していて、激変した環境にも適応できた種だけが生き残ったそうです。(わたくしのこの辺りの知識の元ネタはNHKスペシャル『地球大進化』であります)

で、ここから『七人の侍』を例に取った組織論のお話になります。

平八は五郎兵衛がリクルートしてくるのだが、五郎兵衛は自分がみつけてきた「まきわり流を少々」という平八をこう紹介する。
「腕はまず、中の下。しかし、正直な面白い男でな。その男と話していると気が開ける。苦しい時には重宝な男と思うが。」
五郎兵衛の人事の妙諦は「苦しいとき」を想定して人事を起こしていることにある。
(中略)
組織人の真価は後退戦においてしばしば発揮される。
勢いに乗って勝つことは難しいことではない。
勝機に恵まれれば、小才のある人間なら誰でも勝てる。
しかし、敗退局面で適切な判断を下して、破局的崩壊を食い止め、生き延びることのできるものを生き延びさせ、救うべきものを救い出すことはきわめてむずかしい。
「苦しいとき」においてその能力が際だつような人間を採用するという発想は「攻めの経営」というようなことをうれしげに語っているビジネスマンにはまず宿らないものである。
けれども、実際に長く生きてきてわかったことは、敗退局面で「救えるものを救う」ということは、勝ちに乗じて「取れるものを取る」ことよりもはるかに困難であり、高い人間的能力を要求するということである。

もっとも集団のパフォーマンスを高めるのは「若く、非力な」成員を全員で「支援し、育て、未来に繋ぐ」という仕組みをビルトインさせたシステムであるという「当たり前」のことをビジネスマンたちは忘れている。


もうその弊害はあちこちで起きています。

ただ、おそらく、ここまで理路整然と理解しているわけではなくとも”「若く、非力な」成員を”育てる必要性を痛感している組織人は大勢います。わたくしもその一人です。
しかし、今現在その余力がないときに、明らかに共同体のパフォーマンスが下がるとわかっている成員を入れられない状況であることもあります。
七人の侍の中の一人が勝四郎でもオッケーだったのは、ほかの6人のバランスがすばらしいからだとも言えます。
実際には勝四郎みたいなのが7人中6人もいやがって、どんな人事だバカ野郎と心の中で人事担当者をののしりながら、「リーダー」にならざるをえなかった残りの1人が泣きながら共同体をまとめていることも珍しくありません。(自分のことではありませとも、ええ。念のため(笑))その6人からは残りの1人が「勝四郎」だと思われている可能性も除外できなかったり(笑)。

とは言うものの、いわゆる「使えない」メンバーがいる方が組織が活性化するということはあるものだ、ということは実感として理解できます。
いわゆる「2・6・2の法則」ですね。どんなに優秀な人材だけを集めてもこうなるそうです。
だから人間はおもしろいのかもしれないなあ、と、笑っているほうがお互い気持ちよく働けていいのでしょうね。「フリーライダー」め、と目くじら立てるより。だって「フリーライダー」を排除しても、残ったメンバーの誰かがまた「フリーライダー」になるんですよ。「フリーライダー」を追い出した人が今度は真っ先にフリーライダーになったりしてね。
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by n_umigame | 2010-11-27 21:49 | 日々。 | Trackback | Comments(2)
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Commented by まりお at 2010-12-02 00:13 x
リーダーにならざるをえなかった1人が泣きながら…神様だけでなく心ある多くの人たちがあなたの奮闘を見てるから大丈夫!ってその方に伝えてください。
この前の休日に動物園に行きました。ヤングファミリーが弁当を食べてまして、小さな男の子がいつものおやつが欲しいってダダをこねてました。車の中に置いてきた、駐車場まで遠い、再入場するにはチケットをまた買わなければならない、そんな状況を説明するパパ(20代半ば)でしたが奏功せず。ついにキレて「現実をよくみつめろ!」  隣で聞いてて思わず吹き出してしまいました。よちよち歩きの子にそんなこといったって。自分が会社でいわれてることなのでは、と思いました。
Commented by n_umigame at 2010-12-03 23:17
全国の勘兵衛(志村喬)の皆さま、おつ&ファイッ!!

お伝えいたしました。

推定1歳児にそんなことを言っている以前に、そんな理屈っぽいパパがいやです(笑)。