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『猟鬼 ダニーロフ&カウリーシリーズ』ブライアン・フリーマントル著/松本剛史訳(新潮文庫)新潮社

その夜またモスクワの路地裏に転がった死体からは、髪の毛とボタンが奪われていた。民警のダニーロフは、猟奇的な手口から連続殺人犯は異常者だと考える。だが被害者のひとりがアメリカ大使館員の女性だったため、事件にはFBIが介入することになった。風采のあがらぬロシア人刑事ダニーロフと、翳りをおびたFBI捜査官カウリーによる共同捜査が始まったが…。新シリーズ誕生。 (Amazon.jp)


年末は何を読んでも大ハズレだったため、こういうときは視点を変えようと、以前「カミンスキーのエイブ・リーバーマン&ビル・ハンラハンシリーズが好きならこれもおもしろいかも」とどこかでオススメを目にしたこのシリーズに手を出してみました。

初ブライアン・フリーマントルです。
原作は1992年に発表されたようですが、うん、90年代に流行ったサイコ・ミステリでした。
ただ、丁々発止の心理戦とかけひきが読んでいておもしろく、プロットや犯人の意外性などではなく、こちらを楽しむシリーズなのかなあと。

ロシアの民警の大佐ダニーロフと、アメリカはFBIのロシア課の課長カウリーという、通常であれば一生会うこともなかったはずの二人が、モスクワでアメリカ大使館の職員で、ホワイトハウスにも影響力を持つ議員の姪が殺されたことから、共同して捜査にあたることに。
とはいうものの、まだソビエト連邦が崩壊してからそんなに年月も経ていないため、最初は腹のさぐり合いから。
やがては双方のプロフェッショナルな仕事ぶりからお互いを認めていくというお話です。

二人とも仕事はプロフェッショナルなのですが、プライベートがそれぞれにトホホなことになっていて、ダニーロフはかつての同僚でまったく友情の介在しないうわべだけのつきあいの友人の妻と不倫中。(しかも次作でわかったのですが少なくとも3年以上続けていたらしい)しかもどちらかというと主導権は女性の方にある様子です。
カウリーは酒癖と女グセが悪すぎてそれが原因で妻に去られ、その妻が再婚したのが自分の親友。今回は仕事の必要から、この友人と元妻と顔を合わせながらの捜査をすることになります。
身から出た錆なのですが、それが何と言いますかこう、それぞれに都合良く話がまとまってしまうところは青年マンガみたいでした(笑)。

ほろ苦い結末は確かにリーバーマン&ハンラハンのシリーズと相通ずるところがあるのかもしれませんが、いっしょにしてもらいたくないというのが読み終わった正直な感想です。リーバーマンとハンラハンもそれぞれプライベートには悩み事やトラブルを抱えていますが、もっと家族や友人など、自分の周囲の人たちに対してさりげない敬意を払っていることが伝わってくるように描かれていて、それが読後に何となくあたたかいものを残していきます。
それに「ダニーロフ&カウリー」って言ったって、二人は別にいわゆる仕事上のパートナーじゃないですしね。ダニーロフとカウリーの関係も、べたべたしたところがないのは良いのですが、ハンラハンに瀕死の重傷を負わせた犯人がリーバーマンにどんな目に遭わされたかを思い出すにつけ、ダニーロフとカウリーはコンビ好きの満足のいくコンビではありませんでした。(笑)

そんな歪んだ目的で読書しないよ! という方には、まあふつうにおもしろいエンタテインメントです、とオススメしておきます。
つまらなくは決してないですよ。

あっ、一人だけ好きなキャラクターがいます。FBI長官のレナード・ロスです。
絵に描いたような権力バカの議員にまったくおもねらず、虚勢ではない堂々とした鼻っ柱の強さがかっこよかったです。
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by n_umigame | 2011-01-21 19:37 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
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