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『英雄』(上下)ブライアン・フリーマントル著/松本剛史訳(新潮文庫)新潮社

口中を銃で撃たれた惨殺体がワシントンで発見された。マフィアの抗争に絡む事件かと思われたが、被害者がロシア大使館員だと判明。FBI捜査官カウリーは、急遽、モスクワ民警のダニーロフに協力を要請した。再度コンビを組んだ二人だが、捜査の前に立ちはだかったのはマフィアと癒着する民警上層部だった!国境を超えた捜査官コンビの英雄的活躍を描く、国際サスペンスの傑作。 (Amazon.jp)


とかなんとか言いつつ、ダニーロフ&カウリーシリーズ2作目も読み終わりました。
今度はアメリカでロシア人が殺されたところから、二人のコンビ復活とあいなりました。
が、えええっと、何、カウリーがめちゃくちゃダニーロフになついているんですけれども(笑)。
今回はどちらかというとダニーロフの方の目線が主で、自分が所属する組織とマフィアという、どちらも巨大な組織を相手に戦うダニーロフと、それを援護するカウリーという感じの作品でした。

今作品で思ったこと。
(1)え、ダニーロフってラリサのこと愛してたんですか。いつの間にそういうことに。(…と思っていたら最後にそういう設定になった理由がわかりました)
(2)イタリアのシーンは要らなかったんじゃないでしょうか。

ネタバレになるためもぐります。↓









登場人物が多いのと、そのそれぞれとダニーロフが緻密な心理戦を繰り広げるため長いのですが、一件複雑なように見えてプロットは単純で、いろいろしんどい目に遭う主人公が最後はうまいこと行く、という(笑)。
それを言い出すと身もフタもないのですが、そういう意地悪を言いたくなるような展開になるんですよ。だらだらと読まされたわりに、結局そういうことなんでしょ、と。

1作目を読んでいるときから感じていた違和感が2作目ではっきりしてきた印象なのですが、ダニーロフもカウリーも自分勝手なんですよね。

思いやりがないとか、そういうわけでは決してなく、ちゃんと人に対する気遣いもできる人たちなのですが、結局自分のことしか考えていないと申しますか。
カウリーは、それが強調されているのがやはり飲酒です。お酒を飲むのはまったくかまわないのですが、ふだんは「これくらい全然大丈夫」と自分に言い訳しながら飲み、結局歯止めが利かないくらい飲んでしまい、自分のキャリアを台なしにしかねない事態を招いてしまいます。
それでもカウリーの方がまだましで、ダニーロフの方はちょっと今回は鼻白んでしまいました。
イタリアのシーンはいらないんじゃないのと思いましたが、ダニーロフを英雄にしたかったのでしょう。これはまだ良かったのですが、やはり不倫問題ですね。
ダニーロフの奥さんのオリガがいかにナサケナイ女性かということが、全編を通じてこれでもかと描かれ、もしかして「だから不倫して良いよね」と言いたいの? 
オリガが浅はかで愚かで、服の着こなしが悪くて、だらしのないことにダニーロフは同情してみせるのですが、いや、同情されてもねえ。
これでラリサとの関係がいっそただのラブ・アフェアだったらまだ良かったかもしれません。ダニーロフがラリサを愛しているという描写が出てきたときは、やはり唐突に感じました。1作目ではラリサの方から誘われてそういう関係になり、まずいまずいと思いながらもズルズル関係が切れないという感じで描かれていたからです。
で、なんで急に「ラリサを愛している」ということになったのかと言うと、最後にラリサが夫コソフの巻き添えで殺されるからだということがわかって、「なんだかなあ…」と思ってしまいました。これでダニーロフを悲劇の英雄にしたつもりかもしれませんが、いくらなんでもやり方が底が浅くないでしょうか。

というわけで、あと2作あって、そちらも古本屋さんで揃えたのですが、ちょっとここでおなかいっぱいです。
”新潮文庫のミステリー”という感じでした。
by n_umigame | 2011-01-21 20:39 | ミステリ