『腰痛探検家』高野秀行著(集英社文庫)集英社

腰痛からの生還、成るか!? 爆笑治療体験記
腰痛という未体験世界に迷い込み、治療というジャングルをさまよう辺境作家。西洋医学、東洋医学、民間療法、運動療法、ついには獣医に心療内科…。前代未聞の腰痛治療体験記。(解説/東えりか)(出版社HP)


タイトルがまちがっておりましたので、お詫びして訂正いたします。カクテキさまにいただいたコメントで気づきました! うひー!! 本当に申し訳ありませんでした。*(2011.2.17.)

自分も腰痛持ちだと思っていましたが、いやいや申し訳ありません。
著者に比べればわたくしなんぞ腰痛持ちの風上にも置けねえどころか、腰痛持ちを名乗るもおこがましいということが良くわかりました。

40歳になって腰痛になった著者が、病院を転々と、いわゆるドクター・ショッピングを繰り返しながら、最終的には治療を放り出し、そこから少し好転するというエッセイです。
腰痛になったことがある方にはわかると思いますが、人間にとっていかに腰が重要な部位かということは言を待ちません。
腰痛になると、寝ていてもつらいし、かといって起きあがるどころか寝返りをうつといった健康なとき無意識にやっていることがまずできない。起きあがろうにもまず四つん這いになるだけでも死ぬほど痛い。何とか起きあがったら今度は足を一歩踏み出すのもつらければ、痛いから何かに手をついて体を支えようとしたらその衝撃すら腰に来る。
自分の場合はいわゆるぎっくり腰だったので、せいぜい1週間程度で治ったのですが、これが何週間も何年も続いたら、夏木静子さんが「自殺も考えた」とおっしゃるほど追いつめられた心境になるのも無理はないと思ってしまいます。
それくらいつらいですよね、腰痛は。
まあ腰痛に限らず、身体の一部がとても痛いずっと痛いというのは本当につらいことです。

著者自身もあとがきで、当時を振り返って述べておられますが、気持ちはわかるものの、セカンドオピニオンを求めて行った病院で聞かれもしないうちから「前の病院ではこう言われた」ということは持ち出さない方が良いのではないかと思いました。
あと、ブラックジャック先生(本文を読んで下さい)のところで「椎間板ヘルニアではない」と言われて怒ってますが、いやいや、前のお医者さんにも「椎間板ヘルニアっていうのはこういう状態じゃないですよ」とレントゲンを見ながら説明してもらってるじゃないですか~。
もういっぱいいっぱいです(笑)。
って人ごとだから笑っていられますが、自分が同じ目に遭うとやっぱり怒るんだろうな(笑)。

最終的に心因性の腰痛(ってのがあるということを初めて知りました)を疑って、心療内科を受診し、そこの先生がものすごく冷淡で(笑)、薬の副作用かかえって体調が悪くなったので、とうとうキレた著者はすべてを投げ出して水泳に行ってしまいます。
これが結果的には著者にとっては良かったようで、その後症状が緩和したそうです。
心療内科のお医者さんが「あなたは腰痛そのものに執着しているの。心因性腰痛の人は腰痛のことばかり考えてるの。それがいけないの」というようなことを言うのですが、この一言に尽きたようです。
あくまでもこの著者の場合ですが、ふと、河合隼雄さんのあるエッセイ(たぶん『こころの処方箋』だったかと)を思い出しました。
何人かで海釣りに出かけたところ、漁に夢中になって日が暮れてしまい、真っ暗になってしまった。その間に潮の流れが変わったのか方向を見失ってどちらが陸かわからなくなってしまった。船の灯りを頼りに必死で探したけれどもわからない。
やがて知恵のある人が「灯りを消せ」と言う。一同は不審に思いながらも消してみた。そうすると真っ暗闇だと思っていた海の上でやがて目が慣れ、浜に町の灯りがともっているのが見え、全員助かった、というお話を紹介されていました。
一度「目先を照らす灯り(それは他人から与えられたもの)をあえて消してみて、自分の目でじっと目をこらし、遠い目標を見定める勇気が人間にはときには必要ではないか」といった主旨のエッセイだったのですが、この本もそんな感じでした。
ただし、河合隼雄さんのエッセイでも「暗闇の中で灯りを消すのは勇気が要る」と書かれていますが、不安なときに何もせずにいることに耐えられるというのは強靱な精神力の持ち主だと思います。(こういうときにそれなりの灯りを持ってうろうろすることを「できる限りのことはした」と表現する人もいる」とかなり辛辣です(笑))
だからじたばたしてしまうんですよね。

いろいろとツッコミたいところが多かったので「爆笑腰痛体験記」と言うほど笑えませんでしたが、腰痛にお悩みの方には一読の価値があるかと思われます(笑)。
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Commented by カクテキ at 2011-04-10 10:42 x
ようやく読みました。
えっ?というような行動の連続ですが、あとがきにあるようにご本人も「この人、どうかしてる」とおっしゃっているので、非常時の人間の精神状態の危うさと受け止めようと思います。
Commented by n_umigame at 2011-04-11 21:27
>カクテキさま
お読みになられましたか。

>非常時の人間の精神状態

はい、ですよね、ツライと思います、本当に…。
体の一部がずっと痛い、すごく痛いというのは本当にツライです。原田宗典だったかが、やはりエッセイで「どんなに大金持ちで豪邸があって美女に囲まれていても、体の一部がすごく痛かったらその人はすごく不幸だ」と書いてらっしゃいましたが、健康がいかに人間にとって宝物かよくわかる一文でした。^^;
by n_umigame | 2011-01-25 18:08 | | Trackback | Comments(2)

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