『深読みシェイクスピア』松岡和子著(新潮選書)新潮社

「言葉の劇」の秘密を縦横に解き明かす新解釈満載の演劇論&翻訳論。

坪内逍遥以来、男たちはジュリエットの娘ごころをどう訳してきたか、またその問題点は? シェイクスピアで一番感動的な台詞は何か? 蒼井優がふと口にした疑問、唐沢寿明の驚くべき演技、松たか子の意外な解釈とは? 個人による全訳に取り組み、稽古場に日参する翻訳家が、演劇の魅力を深く平易に語り尽した快著。
(出版社HP)


突然マイケル・マローニーの名前が出てきたところは、け、血圧が……!!
はあはあ。

さて気を取り直して。
対談形式の著書です。
まだシェイクスピアをコンプリートしていないので、残念ながらいっしょに「深読み」できないところもあったのですが、それでもとてもおもしろかったです。特に喜劇をあまり読んでいません。
悲劇に分類されていない作品でもちょっと疑問に思うオチも多いですよねシェイクスピアの喜劇って。『終わりよければすべてよし』も、「本当に終わりさえ良ければいいのか」と思うようなオチだ、と以前松岡和子さんも書いてらっしゃったかと思います。『ヴェニスの商人』も、そこのあたりをつっこんで解釈したのがアル・パチーノがシャイロックを演じた映画版だったかと。
『マクベス』は名ぜりふが多いのか。そうか。確かにキャッチーですよね。「ああおれの心はサソリでいっぱいだ」とか。
あと「消えろ、消えろ、つかの間の灯火」につながる部分は"Tomorrow Speech"と呼ばれているのだそうです。英語で聞くと音がいいですよね。

松岡さんは実際にシェイクスピア劇を演じた役者さんたちから聞いた疑問や解釈ももとにシェイクスピアを「深読み」していくのですが、やっぱり役者さんってすごいなあと思いました。
役にのめり込んで帰ってこられなくなっちゃった役者さんの話とか聞きますが、そういうことが実際にあってもむべなるかなと。

また、いわゆる史劇の際に悪役に改変されちゃった人物(リチャード三世が有名ですが)も、シェイクスピアがなぜ改変したかというと、当時の世相を反映して、悪玉・善玉にした方が観客がすんなり受け入れやすいと考えたからだとか。
これは確かに、時代が変わると評価が変わる人物は珍しくありませんよね。
フィクションのイメージが強すぎて史実の人物がかすんでしまうことも珍しくありません。そして意外と、というか当然と言うか、広く庶民の人口に膾炙するようなエンタテインメントの力というのは決して小さくないことがわかります。

もう一箇所印象に残ったところ。
ヘンリー六世で「ヘンリーはなぜ呪いの言葉を口にしないのか」という疑問では、故河合隼雄さんとの対談で『リチャード三世』のマーガレットの呪いについて取り上げたとき、河合さんが「怨念と呪いは違います。女性の場合は、深い怨念を持ちながらも自分では晴らせない。自らの手で相手を殺せませんから。祈りと言葉しか武器がない」とおっしゃって、「そうか、呪いは無力な人のすること、弱者の武器」だと気づかされた、と。
逆に言うと、呪う者は弱者である。呪わない者は弱者ではない。そうであるならば、どこまでも呪わないヘンリーは弱者ではない。どこまで落ちて、どんな無惨な目にあっても、彼は弱者ではなかった。
彼がやったことは祈りだったと。
これも何となく読まずにいた『ヘンリー六世』ですが、読みたくなりました。
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by n_umigame | 2011-03-21 14:26 | | Trackback | Comments(0)

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