*さいはての西*

fwest.exblog.jp
ブログトップ

『新 銀河ヒッチハイク・ガイド』 上下 オーエン・コルファー著/安原和見訳(河出文庫)河出書房新社

アダムスが望み、世界中が待っていた伝説のSFコメディ完結作!(出版社HP)


本国での前評判がいまひとつだったのと、Amazon.ukでの書評が予想通りのことになっていたので、あまり期待しないで読み始めました。
訳者の安原和見さんもやはりファンとして不安だったそうで(あ、うまいこと言うつもりはなかったのですが)、その心の内があとがきにつらつらと書かれてありました。
上下ともにあとがきがあるというのも、上巻だけ買って下巻を読まない読者に、その不安を解消してもらうためかなと邪推したりしていました(笑)。

想像していたほど、悪くはなかったというか、前半は特に普通におもしろかったと思います。
「普通に」というのは、ダグラス・アダムズの造りあげた世界の中において、というほどの意味でです。


以下、ネタバレにつきもぐりますね~。











例えば、ここ。

 ゼイフォードの第二の頭については、その出所は謎に包まれている。大統領はこれに関してはコメントしたがらず、二頭を負う者は無頭よりましと言うだけだった。このコメントを自分たちへのあからさまな愚弄であると怒ったのが、ジャグラン座ベータ星の首なし騎士部族選出セボネ・キリツメンコ議員である。この非難に対して、ゼイフォードは「愚弄が笑わせるぜ、ベイビー。男に頭なんかあるかもんか。ばか言うなって!」と語っている。


腹かかえて笑いました。
(「首なし騎士」はアメリカはスリーピー・ホロウの「ヘッドレス・ホースマン」のことではなくて、作者のオーエン・コルファーがアイルランドの人なので、アイルランドに伝わる「デュラハン」の方のイメージなのかと思われます。バンシーみたいに人死にが出るときに知らせに来ると言われているそうです。)

あと「ミスター・クトゥルフ」が面接に来るくだりとかはけっさくでした。
残念なことにクトゥルフ神話を未読なので、そのあたりの知識のあるかたはもっと笑えたのではないかと思います。

ただですね。
やはりファンが書くとこうなるというのは痛いほどわかるのですが、「ほんの少し過剰」、つまりやりすぎなところが、本物らしくなくしてしまっています。
シオドア・スタージョンが代筆したクイーンの『盤面の敵』、このクイーン親子の描写を読んだとき、同じ様な感覚に陥りました。さらに『盤面の敵』を「ほんの少し過剰」にしたのが、北村薫の『ニッポン硬貨の謎』のクイーン親子の描写……というふうに、ファンであるが故に想像をかき立てられる「原典では描かれていない隙間」を、自分が書く(描く)となると書(描)きたくなるという気持ちは、とーーーーってもよく理解できます(笑)。

さりとて同人誌じゃないんだから(笑)、それを「公式続編」として読まされる読者としては、言いたいことがある、というのがAmazon.uk陣の感想だったのかな、と思いました。
(まあいやなら読まなきゃいいんですが、気が進まないながらもファンだからこそ無視できないということもありますよね(笑)。)トリリアンとワウバッガーのロマンスなどは、さすがにやりすぎちゃうかと思わないでもないです(笑)。

映画の『銀河ヒッチハイク・ガイド』をそこそこ楽しめた方なら、この続編は全然ありだと思いますので、安心してオススメいたします。

そしてわたくしは、『盤面の敵』を読んだ後スタージョンの本を買いあさったように、コルファーの本も読んでみようと思っております。今さらですが。
[PR]
by n_umigame | 2011-05-16 16:24 | | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://fwest.exblog.jp/tb/13589967
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。