*さいはての西*

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『鬼』今邑彩著(集英社文庫)集英社

引きこもっていた息子が、突然元気になった。息子を苛めていた子が、転校するというのだが…「カラス、なぜ鳴く」。かくれんぼが大好きだったみっちゃん。夏休みのある日、鬼になったみっちゃんは、いつまで待っても姿をあらわさなかった。そして、古井戸から…「鬼」。他、言葉にできない不安、ふとした胸騒ぎ、じわじわと迫りくる恐怖など、日常に潜む奇妙な世界を繊細に描く10編。ベスト短編集。(Amazon.jp)


めずらしく日本の小説を読んだので(はははは)、感想をアップしておきます。
先日『世にも奇妙な物語』の中でひとつだけおもしろそうな「缶けり」というホラー風のお話があったのですが、途中からチラ見できただけだったので、ちょっとググってみました。
そうしたら
「今邑彩さんの『鬼』という作品に激似」
というコメントを見かけたため、読んでみました。

結論から申し上げると、早川書房の「異色作家短篇集」シリーズを読む前であればとてもおもしろいと感じたと思うのですが、決してつまらなくはないものの、「どっひゃあ!」というどんでん返しがなく、こぢんまりとした印象の作品群でした。
アイデアとしてはどこかで見たようなお話が多かったです。
カラっとしていて読みやすかったですが、日本独特の湿度を感じない物語世界ということで、京都の冬かと思うような、足下からはい上がってくる湿気を含んだ寒さのようなものは感じませんでした。
それと、文章表現がちょっと古くさいとか、逆に地の文に入るにはくだけすぎだったり、本当にささいな点なのですがひっかかりを感じるところが何ヶ所かありました。


短篇集につき、順番にいきまーす。
ネタバレにつきもぐりますね。
あんまりヒットしなかったので、いつもの毒舌に輪をかけていますので、ファンの方はここで回れ右でお願いします。








「カラス、なぜ鳴く」
→語り手の想像というか、妄想の域を出ないオチですね。「おとーさん、疲れてんじゃない?」で斬って捨てられても文句言えないというか…。

「たつまさんがころした」
→同上。
これがフレデリック・ブラウンだったら、「語り手は××××でした」というオチで読者を沸かせてくれるんじゃないかなーと思いました。
それにしても、陰湿な感じの姉妹ですね。

「シクラメンの家」
→昼ドラ。

「鬼」
→これが先日の「世にも奇妙な物語」の「缶けり」に激似と言われていたお話です。
子どもが怖いお話はたくさんありますが、今市子さんの『百鬼夜行抄』で律くんの「子どもはめんどうなんですよ。理屈が通じないから」というセリフがあって、この理不尽さが怖さのヒケツなのではないかと改めて思いました。
大人は「仕返しじゃないか」とかいろいろ「理屈」をつけて安心したくなるものですが、子どもの方は単に「かくれんぼの途中だからゲーム続行」したかっただけ。
ドラマよりハッピーエンドだったと思います。

「黒髪」
→ミイラ取りがミイラになった話。

「悪夢」
→「我が子がかわいくない母親」もめずらしくないですが、これは山岸凉子さんが描いたらソーゼツ怖い話になったんじゃないかと思いました。

「メイ先生の薔薇」
→「メイ先生」というあだ名にまず違和感…昭和のかおりが(笑)。
美しい花の肥料として人間の死体、というのも既視感だ…どこで読んだのだったかなー。

「セイレーン」
→語り手の軽い感じと、このまま心中しちゃってもいいかとなる心境の変化がわかりませんでした。これも、山岸凉子さんの作品に「ハーピー」という奇しくも近似した名の作品があり、思い出しました。あちらは実は語り手がぶっこわれてました、というどんでん返しがありましたが…。

「蒸発」
→文庫版あとがきによると著者はブラックジョークのつもりで書かれたそうです。そのわりには笑えねえ…(おおおおい!)(日本ではブラックジョークが人気がないというよりは、ブラックジョークの質が高くないってのもあるんじゃないですかねえ…。)
ドラえもんに「どくさいスイッチ」というお話があって、「消えてしまえ」と言いながらボタンを押すと相手が消えるという道具ですが、この話を思い出してしまいました。リチャード・マシスンの「運命のボタン」も似ていますね、そういえば。
このお話は、主婦の本音的なオチですね(笑)。「我が子がかわいくない母親」ふたたび、のお話でもあります。

「湖畔の家」
→ホラーなのかファンタジーなのかミステリーなのかわからない。過去の幻影が見えるという設定があんまり生きていない印象でした。父親が子煩悩だったということと、遺産目当てで妻を殺したかもしれないという主人公の<想像>とが、まとまっていない。そんな感じで散漫な印象でした。
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by n_umigame | 2011-05-22 17:48 | | Trackback | Comments(0)
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