*さいはての西*

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『ひとりで歩く女』ヘレン・マクロイ著/宮脇孝雄訳(創元推理文庫)東京創元社

西インド諸島を発つ日、わたしは存在しない庭師から手紙の代筆を頼まれた。さらに白昼夢が現実を侵したように、帰途の船上で生起する蜃気楼めいた異変の数々。誰かがわたしを殺そうとしています……一編の手記に始まる物語は、奇妙な謎と戦慄とを孕んで闇路をひた走る。眩暈を誘う構成、縦横無尽に張られた伏線の妙。超絶のサスペンス! 解説=津田裕城
(出版社HP)


プチ・ヘレン・マクロイ祭り開催中。
と言ってももうほかに読むものないんですがないんですがー!!(泣)

ちょっと斜め読みの感想ですので、あしからずご了承下さい。

ネタバレになりますので、もぐります!











手記から始まるミステリーということで、読み始めるときはわくわくしていたのですが、まず、この手記が(書き手が女性ということを意識しすぎた男性の訳文では、という印象もあいまって)退屈でした。
書き方が大げさなのも伏線の一つではあるのですが、強調されすぎるところが書き手不明の手記の中にあると、ある程度このタイプのミステリを読みつけている読者は、あれこれ勘ぐってしまいますよね?(笑)
これは言うところの、「信頼できない語り手」ではないかと。

そのやや長すぎた感のある手記が終わって早々に書き手が明かされるのですが、「以下の文章はわたしが変死した場合にのみ読まれるものとする」という冒頭の一文があるために、不自然な印象が拭えませんでした。
そこへ最後のどんでんがえしが来るので、予想の範囲内で終わったかな、というのが読後の印象でした。

また、あれこれつめこみすぎで全体にぎこちないように思います。
ヘレン・マクロイは「サスペンス御三家」と呼ばれた作家だったそうで、本領はサスペンスにあったようなのですが、わたくし個人の印象としては、芯の部分はパズラーを愛した作家なんだろうなあと思っておりました。
ですので、クライマックスに至って「このキャラクターが実は」という手でどんでんがえしを多用されると、無理矢理サスペンスにしましたという印象が拭えませんでした。(解説にもそういう感想を抱かれることに先手を打ったかと思われる部分がありますが(笑)、口を封じられるとなおさら言いたくなるのが人情であります。すみません。)
全体にもう少し短い方が、ミステリとしてもサスペンスとしても引き締まって良かったのではないかなと。

とは言え、ヘレン・マクロイがいわゆるごりごりの本格ミステリとは差別化を図ろうとした、その意気込みはやはりヨシだと思われます。

もちろんオカルトとか、本人の趣味なんじゃないのと思うところもありますが(笑)、本格ミステリを愛していたからこそ、マクロイはファンの裾野を「本気で」広げようとしたのではないかなと思いました。
(このファンの裾野を「本気で」広げようとした意気込みを、エラリイ・クイーンにも感じます。日本では未翻訳のペーパーバックオリジナルの感想を見ていると、最後は名義貸しでやりすぎちゃったかな、という気がしないでもないですが…)
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by n_umigame | 2011-07-04 19:47 | ミステリ | Trackback | Comments(2)
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Commented by Yuseum at 2011-07-09 17:49 x
あっ、『ひとりで歩く女』読まれたんですか!
Yuseumは読んでいません。
最初の手記が長い、という噂も聞いているし(笑)、何より今、品切れだし。

にせみさんのおっしゃるように、アメリカ人だということもあって確かにエラリイ・クイーンに通じるものを感じる作家です。マクロイは。
巷では(おそらく)マクロイ・ブームだろうから、未訳作品もどんどん紹介してほしー!(^^)!
Commented by n_umigame at 2011-07-11 21:12
>Yuseumさま
はい、あまぞんさんのマケプレで、ついポチってしまいまして…(*^.^*)
ええ、はい、た、退屈でした…orz ある意味本格ミステリのお手本のような形式にサスペンスも入れてみましたみたいな作品だったのですが、「全部盛り」に無理があった気がします。

あっ、Yuseumさんもマクロイはクイーンに通じるところがあると思われますか?
クイーンを意識していたんじゃないかなーと思うところが、作品を読んでいるとそこここに出てきている気がします。
未訳の作品がまだあるんですねっ!?(*゚д゚*)=3  それはぜひぜひ邦訳が出て欲しいです!!