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*さいはての西*

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NHK BS Premium『シャーロック』(全3話)

いつの間にか古典的な探偵の代名詞となってしまった「シャーロック・ホームズ」。しかし、元来、彼は非常に現代的な男だった。
シャープで気難しく、ちょっとアブナイ男。今、シャーロックがその本来の姿で戻ってくる。
自称「コンサルタント探偵」のシャーロック・ホームズと、元軍医ジョン・ワトソン。シャーロックの頭脳とジョンの現実主義が融合し、複雑な迷路のような謎をひもといていく。

コナン・ドイルの原作を大胆にアレンジした「21世紀版シャーロック・ホームズ」。2010年、イギリスBBCで放送され大反響を呼んだ話題作。
BAFTA(英国アカデミー賞)ベスト・テレビドラマ賞受賞
エミー賞(2011年)ミニ・シリーズ部門 脚本賞、ほか ノミネート中
製作総指揮:
スティーブン・モファット、マーク・ゲイティス、ベリル・バーチュー ほか

(NHK海外ドラマHP)



噂どおり、期待を裏切らないおもしろさでした!
んもー、何コレすごい!! 
見終わったあと興奮冷めやらず、正典読み返そう!と文庫本わっさーと本屋さんで買い直しました。
早く日本版DVDが出ないかなー! 待ちきれなくて北米版をポチってしまいそうです。

役者さんたちは脇に至るまで全員いい味ばっちりだし、脚本もよく練られていて、スピーディでスタイリッシュな映像は美しく楽しく、原作ファンへの目配せも絶妙なバランスでちりばめられていると思いました。特にシャーロキアンというわけではないわたくしでさえ見ていてわくわくしましたので、むしろシャーロキアンの方が見たら、隅々まで味わいつくせるドラマなのではないでしょうか。
「現代にホームズとワトソンがいたら?」という設定なのでもちろん原作のとおりというわけにはいきませんが、原作の、ここは変えていいけどここはそのまま活かす方がいい、という選び方がセンスが良いというか、心憎い。
このドラマ作った人たち、絶対にホームズオタクですよね?(笑)
それでもって、ミステリファンだと思います。

やはり原作への愛と敬意です。
これがあれば別に時代設定や多少の設定の変更には固執しなくとも、たいへんすばらしいエンタテインメントが出来上がるという好例だと思います。(もちろん脚本の才能とか映像のセンスとか、持って生まれたものも問われると思いますが)
また、これまでのホームズもののドラマの成功がきちんと土台にあってこそ、今回の現代版のドラマが映えるということもあると思います。

ホームズ役のベネディクト・カンバーバッチは初めて見る(と思う)役者さんでしたが、黒っぽい髪、明るい灰色の目、高い頬骨、細長い神経質そうな指、並はずれた痩身でひょろ長いシルエットと、ビジュアル的に間違いなくホームズ。
キャラクター的にもホームズのエキセントリックな感じが出ていて、目線や一瞬の笑顔などで表現する非常に細やかな演技がすばらしいです。手を合わせて顎の下に持っていくしぐさや「え、今の笑ったの? 笑ったつもり?」みたいな笑顔はジェレミー・ブレットの演技を意識しているのかな?と思いました。
脚本のスティーブン・モファットのインタビューに「シャーロック・ホームズを演じる俳優にとっての大きな挑戦は、非常に多くの俳優がシャーロックを演じてきたが、人々の印象に残っているのはほんのわずかだってことだね。」とありますが、史上最高と言われたジェレミー・ブレットに次いで、21世紀ホームズの当たり役として人々の印象に残るのではないでしょうか…この先この調子でいってくれれば。
ドラマの放送後シャーロックが着ている黒のコート、どこのー!!?と問い合わせが殺到したそうですが、着ているお洋服もおしゃれですよね。コートはBelstaffのコートで£1,350(2011年8月26日現在日本円で約170,000円)、スーツはSpencer Hartでシャツはドルチェ&ガッバーナだそうです。この中産階級のぼんぼんめ…という設定なんでしょうか。(笑)
ベネディクト・カンバーバッチは"The Hobbit"でスマウグの声(竜なので…)や、最近人様から教えていただいた"Tinker,Tailor,Soldier,Spy"にも出演されるそうで、そうでなくても見に行く予定だった映画にさらに楽しみが増えました!

ワトソン役のマーティン・フリーマンも期待したとおり…いや、期待以上でした。
『銀河ヒッチハイク・ガイド』のアーサー・デント役や次のハリウッド映画は"The Hobbit"のビルボ役ということで、巻き込まれ型の役が似合うなあと思っていましたが、今回のワトソンもある種の巻き込まれ型と言っていいと思います。
このドラマでは自分から巻き込まれていくわけですが(笑)、ホームズがワトソンのことを出会って間もない段階で「あれ、この人はほかの人とは違うな」と感じていて、そしてそれはなぜなのかというワトソンの魅力が見ている側にも伝わってくるように描かれていました。
「ワトソン役」という一般名詞にもなっていますが、ミステリーにおいて<無能な引き立て役>としてのワトソンではなく、一見平凡で穏やかな常識人なのだけれども、いざとなったら腹がすわっていて機知に富み、誠実で心優しく、そして普通程度に女好き(笑)という原作のワトソンを素直に解釈したら本当はこうなるんじゃないの?という好例のようなワトソンでした。
中産階級のぼんぼんで思い出しましたが、シャーロックもジョンも言葉遣いがきれいで礼儀正しいところも好感が持てました。こういうところをきちんと守るところもこのドラマが好評な一因なのではないでしょうか。汚い言葉で話すホームズとワトソンなんて、やっぱり見たくないです。
"The Hobbit"もずっと待っているので公開が楽しみです。

このドラマの改めてすばらしいところは、技術的な部分や役者さんのすばらしさもさることながら、スティーブン・モファットがインタビューで言っているように「シャーロック・ホームズは唯一無二の存在だ。ほかの探偵が出会うのは”事件”だが、シャーロックが出会うのは”冒険”だ。」と、これはこの名コンビの冒険物語なのだということに、改めて気づかせてくれたことでした。

制作のもう一人の代表マーク・ゲイティスは、マイクロフト役でも登場されていますが、この役者さんどこかで最近も見たなーと思っていたら、『名探偵ポワロ』の「死との約束」で、レナード役でした。このドラマの個性の強い役者さんたちの中にあってさえ異彩を放つマイクロフトですが、アガサ・クリスティーももちろんコンプリートしてるわね、じゃあ。と改めて思いました。

各話の感想ですが、長くなってしまったので1話ずつ別の記事にまとめます。
by n_umigame | 2011-08-26 21:50 | 映画・海外ドラマ