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『ローマ帽子の謎』エラリー・クイーン著/中村有希訳(創元推理文庫)東京創元社

新作劇〈ピストル騒動〉上演中のローマ劇場の客席で、弁護士のフィールド氏が何者かに毒殺された。現場から被害者のシルクハットが消えていたことを手がかりに、ニューヨーク市警きっての腕ききリチャード・クイーン警視と、その息子で推理小説作家のエラリー・クイーンのふたりが難事件に挑む! 本格ミステリの巨匠クイーンのデビュー作にして、“読者への挑戦状”を掲げた〈国名シリーズ〉第一弾の傑作長編。解説=有栖川有栖
(出版社HP)


年内にこれだけは感想をアップしておかなければ!…と思いつつ今日になってしまいました。

作品自体は、井上勇訳、早川版、角川版とそれぞれ最低1回ずつは読んでいることもあり、ミステリとしての、あるいは内容についての感想などは他に優れた感想がたくさんアップされているのでそちらをお読みいただきたいと思います。

今回は訳が全面的に改まるということで期待半分不安半分、そしてクイーンファンの方が訳されるということも、ややもするとひいきのひきたおし的バイアスのかかった訳文になっていたらいやだなあと思っておりましたが、この作品を読んだ限りではまったくの杞憂に終わりました。
たいへん読みやすくなっており、旧訳では日本語として意味が通らない、あるいはわかりにくい、あるいはテンポが悪い部分がすべて良くなっていて、読み物として安心してオススメできる1冊になっていました。
また、だからといって旧訳の雰囲気が跡形もなくなってしまったわけではなく、作品自体が1929年に書かれたということもきちんと配慮された上で訳出されていることが伝わってきます。
たいへん口はばったいですが、ザッツ☆プロフェッショナルなお仕事と申し上げて間違いないと思います。

井上勇さんはクイーンとS.S.ヴァン・ダインを何作も訳出されていますが、S.S.ヴァン・ダインの方のあとがきでけっこう辛辣なクイーン評を書いておられて、公平さという意味では安心かと思っておりましたのでなおさらでした。(井上さんのクイーン評はS.S.ヴァン・ダインの方がクイーンより教養のある文章だといった内容でした。事実そうだろうと思った反面、しかしクイーンの作品の方がエンタテインメントとしておもしろいということも曲がりません。S.S.ヴァン・ダインが構造的に似たような作品の連打でじり貧になったのに比して、クイーンが時代とともに変わろうとすることができたというのも大きな違いかと思われます。ですが、”こういう作品”のマイルストーンになったという意味ではやっぱりS.S.ヴァン・ダインに席を譲らざるを得ないかなと思います。)

『ローマ帽子~』の初読時はそんなにクイーン警視を意識して読んでいたわけではないので(「このおじさん、いい味だなあ」と思っていた程度で)あまり記憶に残っていないシーンも、今回新訳で再読して改めてクイーン警視の魅力に気づいたのも収穫でした。
『ミステリーズ!』の対談を読んで、もう公認ということでいいかと思ったのですが、やっぱりこの作品はクイーン警視が主人公ですよね。
章のタイトルも、ただ「クイーン」とあればそれはクイーン警視のことなのです。

残念ながら、本当に残念ながら、次の『フランス白粉~』で方向転換してしまい、さらにそれ以降は完全にエラリイが主人公になってしまうのですが、この『ローマ帽子~』のスタンスで、J.J.マック前書きにもあるように、二人が背中合わせの双子のように、それぞれの得意分野を生かして大活躍する親子コンビ探偵だったらどんな作品になっていたかなあと、想像し出すと銀河系の果てまで行ってしまいそうになります。(笑)

そうは言っても、どなたかもおっしゃっていましたが、コンビを親子にしたというのはクイーンの大きな功績だったと思います。
そして、親子なんだけれども、たまたま親子の縁で生まれてきたけど、そうでなくてもこの二人は名コンビニなったであろうと思います。

このゴールデン・コンビの活躍は始まったばかりです。
来年以降の新訳にも続々期待いたします!
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by n_umigame | 2011-12-31 21:08 | *ellery queen* | Trackback | Comments(0)
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