『マリー・アントワネット運命の24時間』中野京子著(朝日新聞社)

マリー・アントワネットの立場から見るフランス革命。愛人フェルゼンが綿密に計画を立てた王家の亡命が失敗しなければ、歴史は変わっていた。王妃の運命を狂わせた一日、ヴァレンヌ逃亡事件物語と絵で紐解くアントワネットの魅力。ロココのファッションリーダーとしての最新モード。美しい友人たち。人気画家ルブランの肖像画に見るアントワネットなど。 (Amazon.jp)


サブタイトルは「知られざるフランス革命 ヴァレンヌ逃亡」。

マリー・アントワネットの生涯の中で、かのヴァレンヌ逃亡の部分だけを抜き出して描かれた、小説風ノンフィクションでした。
中野京子さんの人物に対する洞察力や、残された物証から推理される歴史本が大好きなのですが、今回は少し小説の部分が強すぎる気がします。もう少し筆は抑えめのほうが好きです。

民衆の憎しみを一身に受けたマリー・アントワネット。彼女自身にもまったくその責任がなかったわけではないのですが、それでもフェアとは言い切れない歴史的評価に、最近はもう少し公平な人物評、歴史上の位置づけがなされてきているようです。
中でも、夫であるルイ16世が、「お人好しで教養があった」というところが裏目裏目に出てしまった様子が、かなり厳しい目で描かれています。

お坊ちゃんで実戦の経験がないルイは、決して暗愚な人間ではなかったのに、リスクマネジメントという観念がなく、刻一刻とめまぐるしく変わる状況の中で的確な判断を下す能力がない。自分にないのであれば、その能力のある他者…ヴァレンヌの場合はフェルセンに任せれば良いものを、肝心なところで判断を誤り、自分のみならず妻子もろとも革命派の手に落ちてしまう。
それもこれも、フェルセンに対するくだらない嫉妬と器量の狭さからだという見方でした。おそらくそれもあったでしょうが、ルイには危機感がなかったのでしょうね。
生まれたときから帝王教育しか受けてこなかった人が、激動の時代に世の中は変わっていくものだということが理解できなかった/したくなかったとしても、それはある意味、人間として仕方がない面もあると思います。
むしろ、人間はそういうところがある生き物なのだと思います。

今、日本は、本当に変わらなければならないときに来ているのではないかと思います。これまでのシステムの延長ではもうやっていけないことがわかっています。
ただ、それが、これまでの贅沢を手放し、少し…場合によってはかなり不便な生活を強いられるとしたら…。このままでは破滅だとわかっていても、自分が生きている間はなんとかなって逃げ切れると思っている人が多いのではないでしょうか。かく言うわたくしも何となくそう思っているのだと思います。
そう考えると、誰もルイの優柔不断を笑うことはできません。
「私たちが歴史から学ぶのは、人間は歴史から何も学ばない、ということである」…そうあってはならないのですが、その人間の業(ごう)とも言うべきものとどう戦うかが、いつの世も問われていくのでしょう。
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by n_umigame | 2012-03-20 22:13 | | Trackback | Comments(0)

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