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NHK BS『ミス・マープル5』「鏡は横にひび割れて」

ハリウッドの大女優マリーナ・グレッグがセント・メアリ・ミード村の屋敷を買い取り、年下の映画監督の夫ジェイソンと共に引っ越してくる。マリーナはさっそくパーティーを開き、ミス・マープルら地元の人々も興味津々で集まってくる。特に大喜びなのはヘザーで、マリーナに紹介されると自分がいかに大ファンかを伝えていた。そのヘザーがカクテルを飲んだ後に死んでしまう。だがそのカクテルはマリーナが飲むはずのものだった。

1980年にエリザベス・テイラー、ロック・ハドソンほか豪華キャストで『クリスタル殺人事件』として映画化された作品。
(NHK海外ドラマHP)



映画版のときのタイトル、スゴイですね(笑)。
クリスタル関係ねー^^;

原作未読、ドラマはジョーン・ヒクソン版を見ています。
一度ジョーン・ヒクソン版でドラマとしては見ていたせいか、新鮮味が薄かったのが残念でした。このドラマのせいではないのですが。
原作未読なので原作との比較ができないのですが、ヒクソン版もジュリア・マッケンジー版もどちらも原作通りなのかなと思いました。
ただ、リメイクとわかっているのでもう少しドラマとしての見せ場みたいなものを作れなかったのかなと思います。イントロの、マリー・アントワネットが息子のルイ・シャルルと引き離されるシーンは伏線として工夫されているのは伝わってくるのですが。

あまりドラマの独自解釈を入れると原作原理主義の人たちからはぶつくさ言われちゃうし、あまりにも原作どおりだと芸がないと言われちゃうしで、制作者の方々はたいへんですよね…。



以下ネタバレ



















リメイクで気づいたというか感じたことは、マリーナは幸せになるチャンスが何度もあったのに、それを生かせなかったんだなあということです。
子どもに恵まれなかったから養子を迎えたとたん待望の妊娠。ところが、妊娠初期に風疹に感染して重い障害を負った子どもが生まれた。
自分に風疹をうつした相手が目の前に現れたから、これ幸いと殺す。

「親切で元気があって」、だけど、それがいつも独りよがりなヘザー・バドコックにもあまり同情はできない部分はあります。
感染力の高い病気に罹っているのに医師の反対を押し切ってあこがれの女優さんに会えるからと会いに行く。本当にその女優さんのことが好きならば、相手にうつしてはいけないと思ってあきらめると思うのですが、独りよがりなヘザーは自分のことしか考えないので、相手に対する配慮より自分のしたいことを優先する。
足をくじいたミス・マープルにも、彼女がいらないと言っているのにがばがばお砂糖を入れたお茶をすすめていましたが、確かに親切なんだけど、それが相手にとって迷惑かもしれないという配慮が欠落している人の始末の悪さが如実に表れたシーンでした。

こういう部分がアガサ・クリスティーの恐ろしい所だと思います。

マリーナは、本当は子どもたちを愛するチャンスが何度もあったのではないかと思います。
養子にしてもそうだし、実の子にしてもそう。
なのに、養子に迎えた子どもたちは実子ができたからと言って見捨て、実子は障害をもって生まれたからと言って見捨てた。
でもそれは、子どもたちには何の責任もないことです。
最後の方で、息子に「お母さんよ」と声をかけるシーンで何度も声を詰まらせて絞り出すように言うのは、自分が母親と名乗る資格がないとマリーナ自身が思っていたからではないかと思います。

マリーナは少し情緒不安定で、何度も結婚していたそうですが、何か、幸せは降ってわいてくるものだと思い込んでいたのではないでしょうか。
結婚すれば、実の子どもがいれば、幸せになれると思い込んでいたんじゃないかと。
本当はそうではなくて、人を愛するチャンスに恵まれたら相手を愛することが、やがて自分も幸せにするということに、マリーナは気づかなかったんじゃないかなと思いました。
それは即物的なものではなくて、ゆっくりと時間をかけて育むものだということにも。

だから自分はずっと不幸だと思い込んでいて、自分を不幸にしている「犯人捜し」をしていた。その「犯人」…この場合はヘザー…、を消せばいいとばかりに殺してしまった。
でも自分を不幸にしているのは自分でしかなくて、ヘザーを殺したことでさらに殺人を重ねることになり、最後ははっきり語られませんでしたが、おそらく自殺したのではないかと思われます。

ミス・マープルは何もかもお見通しで、だからマリーナに残された道はこれしかなかったのよと、繰り返し言ったのでしょう。
こういうことをあっさり言ってのけるミス・マープル…アガサ・クリスティーの分身でもあるでしょうが、は、本当に怖い人です。
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by n_umigame | 2012-10-08 17:52 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)
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