*さいはての西*

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『王朝の陰謀 : 判事ディーと人体発火怪奇事件』(2010)

唐王朝の時代。洛陽の都では天にも届く巨大な仏塔・通天仏の建立が進んでいる。それが完成する日、則天武后が中国史上初となる女帝が誕生することになっていた。その記念すべき日を前に、都では奇怪な殺人事件が頻発していた。それは突然人体が炎を発し、焼き尽くされるというもの。国師からのお告げを聞いた武后は、8年間投獄されているディー・レンチェを牢獄から呼び戻し、事件解決に当たらせることにする。
(goo映画・画像とも)


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原題:狄仁傑之通天帝國
英語題:Detective Dee and the Mystery of the Phantom Flame

映画館に観に行きたかったのですが見はぐり、DVDにて鑑賞。
いやーDVDになるの早くて最近は助かりますー。

実はそんなに期待していなかったのですが、おもしろかったです!
CGとワイヤーアクションを駆使したアクション作品ではあるのですが、このチープな感じがいいし(笑)、謎解きの部分とか伏線の回収の仕方とか、きちんと折りたたまれていて丁寧な造りの映画でした。もうちょっと、特にイントロがもう少しスピーディだったらよかったかなと思った程度で、あとは見ていて退屈しませんでした。
俳優さんたちも脇役の方々も含め、とても良かったです。
アンディ・ラウは安定のアンディ・ラウでしたし、何より武則天(則天武后)役のカリーナ・ラウがステキでした!威厳があって姉御で(笑)妖艶で人間的な弱さもあって。この作品で香港電影金像奨(第30回)の最優秀主演女優賞を受賞されたそうです。
中国の時代ものというとどうしても男性が多くて画面がむさいことになりがちですが、武則天が重要人物として登場するおかげもあって、華がありました。
レオン・カーフェイが一瞬どころかけっこう見るまでだれかわかりませんでした…。

原案は『狄公案』ではなく、オランダの作家、ロバート・ハンス・ファン・ヒューリック(Robert Hans van Gulik)のディー判事ものだそうですが、映画の物語はオリジナルのようです。
原作はちくま文庫に入っていた『中国迷路殺人事件』以外未読です。これがけっこうグロかった覚えがあってほかのを読む気がちょっと…。少し前に早川書房のポケミスからどんどん刊行されて今は邦訳は完結したのでしょうか?

以下全面的にネタバレです。犯人も割ってます。














「都落ちしていたディー判事が武則天に呼び戻される」という史実を、「謎の人体発火事件の解決のため」という理由とをうまくからめて物語が開始。
いきなり鹿はしゃべるし、伝説の地底都市みたいのが出てくるし、ツボで変身できるし、気味の悪い虫は出てくるしで、ダークファンタジーっぽさが見ていて何か思い出すなーと思ったら、あれですよ、『13ウォーリアーズ』(笑)。
てな感じで笑わせておいて、なんと、これが全部伏線。
すごいよ!
ラストシーンで「笑ってごめんなさい」と心から謝りました。

欧米のミステリーではだいたい怪しげなものは「東から」来るのですが、この映画では「西域から」来たことになっていて、それもそうだと膝を打ちました。
いっしょに捜査している3人のうち、主役のディー判事以外全員途中で死んでしまうのが悲しかったです。誰か生き残れよー(泣)。
死んでしまう2人はもしかして犯人かもしれないという見せ方をしている部分もあって、これで犯人から除外されるということなのですが。

で、捜査陣以外にも容疑者がごんごん死んじゃって、消去法で犯人この人ですね、となってしまったのが残念でした。犯行の動機も復讐はいいけど、「人一人殺すのになんでそんな手の込んだ壮大なことやるんだよ」というところは本格ミステリっぽいと言っていいと思わないでもないです。(じゃあなんでそんな砂を噛んだような言いぐさなんだよ)
犯人がわかってからも見せ場があるのでいいのですが。
ちなみにあの巨大仏像、高さが66丈って言っていましたよね。1丈3mとして、198m。ほぼ200mですね。

最後はディー判事の気持ちを考えるとやっぱりかわいそうでした。自分は友達だと思って説得したのに、向こうは友情はとっくに消えていて、ディー判事を始末しろとまで言っていたわけなので。おまけにもしかしたら一生お天道様の下に出られない身の上になってしまうなんて。

全体的に大味な印象を残すことは否めないのですが、ガイ・リッチー版『シャーロック・ホームズ』を見て自分流に楽しめた方にはオススメいたします。

この映画はこれでおしまいのようですが、TVドラマでディー判事を探偵役にしたミステリドラマなどをぜひ中国で製作してほしいですね。


以下は「ちなみに」話です。

ディー判事とは唐代に実在した狄仁傑(ディー・レンチェ/てきじんけつ)のことです。
映画では武闘派が前面にアピールされていましたが史実の彼は科挙に合格した秀才です。科挙がどれくらいたいへんな試験かということは宮崎市定氏の『科挙』(中公新書など)をお読みいただけると。某国立大学にストレートで入ったかつての同僚は高校生の時これを読んで「科挙に比べたら受験なんか楽勝や」と自分を励ましたと言っていました。
狄仁傑は日本で言えば大岡越前みたいな名裁きが、エピソードとして語り継がれています。
科挙の根本にも「野に遺賢なからしめる」(優秀な人材が埋もれないようにする)という考え方があるそうですが、たとえ外国人でも有能な者はどんどん登用するというようなふところの大きい賢君が立つと、すばらしいパフォーマンスを発揮する時代が中国には何度かあり、唐代のある時期もそういう時代だったようです。
狄仁傑も漢民族が呼ぶところのいわゆる「胡人」で、異民族の出身ですが、映画の中でもそれらしき帽子をかぶっていましたね。

ディーの捜査の手伝いをするペイ(裴東来)も、全体的に昔のヤンキーみたいな脱色をしていましたが、あの前を開いて着る服とズボンは胡人のスタイルですよね。馬に乗りやすいようにああいう服装。あまり出てきませんでしたが士大夫(文官の官僚)はもっとずるずるした服を着ています。

ちなみにあぐらを「胡座」と書くのも胡人が由来だそうです。これについては司馬遼太郎さんと陳舜臣さんの対談集で、漢民族の男性はあぐらをかけなかったのはなぜかというと、みたいな愉快な話がありますので、興味のある方はぜひどうぞ。当時の日本は世界的には後進国でしたが、男子のアンダーウェアだけは時代の先端を行っていたようです(笑)。
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by n_umigame | 2012-10-28 19:58 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)
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