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『ヒックとドラゴン』(2010)

遠い昔昔のこと。パーク島ではバイキングとドラゴンが大昔から戦いを続けてきた。何をするにも冴えないバイキングの少年ヒックは、傷ついて飛べなくなってしまったドラゴン、トゥースと出会う。最初はお互いに警戒し合うも、次第にその距離は縮まっていき……。
(ぴあ映画生活)


原題: How to Train Your Dragon
原作はイギリスの児童文学作家クレシッダ・コーウェルの『ヒックとドラゴン』シリーズ1作目。未読。原作とはだいぶん違った物語になっているそうですね。

『マダガスカル』シリーズにハマったので、これを機会に今までノーチェックだったDWA作品を見てみるマラソン中です。
これはすばらしい。
『マダガスカル』シリーズのコメンタリーを見ていて、CEOのジェフリー・カッツェンバーグ氏のぶれない黒さに笑いつつ興味が出たので、少し背景をネットで調べてみました。
そもそもディズニー再興の功績者でありながら結局ディズニーを去り、それでDWAを設立した人なんですね。『マダガスカル』シリーズも、ディズニーにもピクサーにもない「毒」がいいなと思いながら見ていましたが、この映画のラストシーンもディズニーやピクサーにはできないなと思いました。
これについてはネタバレになるので後ほど。

トゥースが猫っぽくてかわいいですねvv
猫目じゃないときの顔がちょっとスティッチっぽい(笑)。猫好きチームが作ったに違いない。魚半分くれるとことか。猫好きの方々の評価が高いのもむべなるかな。
ヒックと出会って少しずつ距離を縮めていくシーンがとてもいいです。
原作ではヒックはドラゴンの言葉が理解できるという設定だそうですが、言葉が通じない設定にしたのは映画の功績だと思います。
言葉が通じない相手と心を通わせ、友達になるにはどうすればいいのかと試行錯誤していく様子がたまりません。
ヒックが目を閉じて、初めてトゥースが触らせてくれるシーンは秀逸です。
見ていると触らせてくれなかったのに、目をそらして手だけをさしのべると、トゥースの方から(少し)歩み寄ってくれる。ヒックは腕ごと食われるかもしれないのですから、自分から先に大きな信頼を相手に預けたことになります。トゥースもそれに応えてくれた。
この見せ方が良いと思いました。

飛行シーンもすばらしい。これは劇場の大画面で3Dで見たらさぞかし爽快で楽しかったでしょうね。ジェットコースターが怖い人とか酔いそうになっただろうな。(わたくしは大好きです)宮崎アニメを参考にされたそうですが、こういう逆輸入はいいなあ。

英語字幕で見ていると、トゥースの名前は「Toothless」と反対の意味になっています。これは一見歯がない(出し入れできる)のに驚いてヒックがつけた名前なので、英語の方が理にかなっていると思います。こういったところがほかにも何点かあるようです。


以下ネタバレです。


















物語自体は言ってみればお約束どおりの王道のお話です。
共同体の中の変わり者でみそっかすだった少年が、自分の適性を見いだして成長する。共同体の一員として認めてもらう。淡い恋や父親との葛藤もあります。
今まで敵対していた者との共存というのもテーマであります。
最終的にいずれも大団円となるのですが、それと引き替えにヒックはまだ成長期の少年でありながら大きな代償を支払うことになります。

これはバイキングの少年が大人になる通過儀礼であるとともに、トゥースにケガを負わせたヒックが、同じように体の一部を失うことでより強い関係で結ばれるというエンディングにつながるのですが、ディズニーやピクサーではこうはいかなかったでしょう。
日本のアニメ…特に子ども向けの作品でもできない/やらないのではないでしょうか。

『マダガスカル』シリーズを見ていても思ったのですが、DWAの作品にはハンディキャップを持ったキャラクターが自然に登場しますね。(チンパンジーのフィルは手話で話しますし、ペンギンズのリコもうまく話せません。エリック・ダーネル監督は、彼らは動物の姿だが、結局人間を描いているのだとおっしゃっていました。そのとおりです。)
でも彼らは生き生きしていて魅力に富み、そこに卑屈さや、わざとらしい同情は一切ありません。
そうだからそうだ、あるものはあるとして、そこに存在しています。
このドライな、かつ、世界に存在するものから目をそらさない見せ方がとてもいいです。

『シュレック』はディズニーの『美女と野獣』のアンチテーゼとして作られた作品だということですが、ほかのDWA作品を見てから見ると、おもしろいけど逆にちょっと狙いすぎたかもしれないなと感じました。
『シュレック』以降、だんだんいいあんばいに肩の力が抜けてきて、いかにも狙ったような大人向けではなくなってきているのかもしれません。

ディズニーで言えば『美女と野獣』を見て絵の美しさや音楽のすばらしさに感動しましたし、ピクサーの作品も『モンスターズ・インク』は劇場に観に行ったし、『トイ・ストーリー』ももちろんすばらしい。
でもDWAの作品のように「どハマりする」ということがありませんでした。
自分にとってはディズニーやピクサーは口当たりが良すぎるのかもしれません。
DWA作品に混入された毒は特定の人間には中毒性を発揮するんでしょうね、きっと。

いわゆるヒーロー/ヒロインが不在なところ、むしろアンチ・ヒーロー/ヒロインが活躍し、世界を救うことになるとしても代償を支払うところ、ちょっとほろ苦いハッピーエンディング等々、だんだんDWAの共通項が見えてきて楽しいです。
自分も今年の8月までほとんど興味がなかったので申し訳ないことですが、DWAの扱いって日本ではあまり大きくないですよね?
日本公開されるときは、ピクサーやディズニー、ジブリのアニメが対抗馬として同時公開されることが多かったり、あまり地上波で放送されないのは、内容が基本は子ども向きだけど、頭の引き出しが一個しかないような大人には批判されるであろうところが散見されるところなど、理由はわかるのですが、あまりにもったいないように思います。

『ヒックとドラゴン』も、この作品を見た子どもたちは、きっとこのラストシーンを受けとめることができる、という信頼に基づいてなされたものだと思いますから。
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by n_umigame | 2012-11-26 20:11 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)
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