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『サーカスが来た! : アメリカ大衆文化覚書』亀井俊介著(同時代ライブラリー)岩波書店


エリート文化と大衆文化。その衝突と交流の激しさが、アメリカ文化に魅力をあたえたのではないか―。サーカス、ワイルド・ウェスト・ショー、ヴォードヴィル、巡回講演、西部小説から猿人ターザン、ハリウッド映画まで、アメリカ人の夢をドラマチックに表現する大衆文化の興亡を軽妙に語り、アメリカ文化研究に新境地を拓いた1冊。1977年日本エッセイスト・クラブ賞受賞。
(Amazon.jpより)



『マダガスカル3』を見ていて、「サーカス」というもののイメージがなんだか(かつての)日本と違うような気がするな…と思っていたところ、こんな本があったので、1992年の同時代ライブラリー版を読みました。
『マダガスカル3』が動機ですので(笑)そんな感想になっています。
ご了承下さい。


タイトルは「サーカスが来た」となっていますが、内容は紹介文にあるとおりでした。

まず「サーカス」の日米のイメージの違いを、著者は以下のように述べておられます。

私にとって、サーカスは同時に、恐ろしく、また淋しい雰囲気を持っていた。サーカスの踊り子は、人さらいにさらわれて売られた女の子だと、私は人に教えられ、そう信じてもいた。野口雨情の「異人さんに連れられて行っちゃった」女の子が、サーカスの踊り子と重なって、あわれな気がしていた。(p.9)


ところで、アメリカ人の持つサーカスのイメージは、どう見てもこれと正反対なのである。サーカスは売られて行く先どころか、子供にとっては、こちらから家を「脱走」して行きたい、あこがれの先なのであった。

 トムのように親や社会からの解放を求める子供には、サーカスは無限の可能性を持つ夢の世界だった。
(p.10-11)


サーカスはすべてであり、僕たちの知っているどんなこととも違っていた。サーカスには、冒険、旅行、危険、熟練、気品、ロマンス、喜劇、ピーナツ、ポプコーン、チューインガム、ソーダ水があった。
(p.13)


以上は思いつくままの文学作品を乱雑に並べたものにすぎない。しかしこの程度の証言によっても、アメリカ人にとってサーカスが「脱走」の先、そして「教会」や「学校」に対比される何かの価値を持つものであったということが、かりに象徴的な意味においてにしろ、いえるのではなかろうか。
(p.14)



『マダガスカル3』は劇場へ滑り込みで見に行ったのですが、この映画のサーカスのシーンを初めて見たときなんだか泣けてきたのを覚えています。
それは(いまだに生きている)いささか単純なアメリカ的楽天主義、恐ろしいまでの屈託のなさということもさりながら、信じられないような多幸感が画面からあふれてきたことによるのですが、その多幸感の源泉がいまひとつ理解できないでいました。

けれどもこの本を読んで、アメリカ人にとってのサーカスというものの精神的な位置づけ、「家」「学校」「教会」(これは子どもにとっての≪家≫etc.という意味なので、大人にとっては「会社」「諸々のしがらみ」ということになるでしょう)など、「閉じ込めよう/閉じようとする人生」からの「脱走」「脱出先」としての装置だった、ということがわかりました。
それがおそらく、あの多幸感の源泉で、『マダガスカル3』を見ていると楽しすぎて、現実の世界に帰るのがいやになるのはそのせいかと一人納得しました(笑)。

ドリームワークス・アニメーションの作品の中でも、自分の中では「マダガスカル」シリーズは特別な位置にあります。
それは制作者が安易な「自分探し」とそれによるハッピーエンディングをわざと避けていることがわかること、「ここではない幸せなどこか」などというものは世界中どこを探してもない、それは自分の心の中にしかないのだ、と監督たちがコメントしていることからも、これは幼い子ども向けの物語なのではなく、いい年になっても「自分探し」をやめられない大人に対してもメッセージになっている作品であることも大きいです。
幼い子どもは自分探しなんてしませんからね。

「閉じようとしている人生からの脱出」と、「ここではない幸せなどこか」を目指す旅と冒険のゴールがサーカスだったというのは、サーカスが持つ意味を考えても『マダガスカル3』は見事な完結編だったのだと改めて思いました。

サーカスについては最初の50ページほどだったのですが、ハリウッドの黎明期からトーキーへの歴史背景やヘイズコード、「芸術的な」フランス映画との対比など、読んでいて楽しかったです。
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by n_umigame | 2013-03-26 19:07 | | Trackback | Comments(0)

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