*さいはての西*

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『主役はダーク : 宇宙究極の謎に迫る』須藤靖著(毎日新聞社)

身のまわりに満ちあふれていながらいつもはその存在に気づかないという現象は、ダークエネルギーに限らず、世の中にはかなり普遍的なものだ。新鮮な空気、肉親の愛、餃子を大量摂取した後の自分のニンニク臭、夫の生命保険金をひたすら待ちわびる妻の祈り、などなど、枚挙に遑がない。ダークエネルギー仮説は、自分の人生を見つめ直す絶好の機会である。苦手な人にこそ読んでほしい、目がヒモになる?宇宙論。
(帯より)



今回は宇宙論にテーマをしぼって書かれた本です(著者のご専門は宇宙物理学、地球外生命)。
その難解なことといったら、おそらくわたくし、半分も理解できていません。
なので、寝る前に少し読むといいだろうとナイトキャップのお供にしたところ、爆笑して目が冴えるってどういうことですか先生ー!!

いえ、このジャケットデザインとタイトルだけで書店で吹きそうになったのですが。
これはかの有名なSF映画のロゴですね。

そんなわけで、須藤靖節になれていない方は『人生一般ニ相対論』『三日月とクロワッサン』あたりから入る方がいいかもしれません。でもノリはまったく同じです(笑)。

内容は自他とも認める右脳型人間のわたくしが説明するよりも、実際にお読みいただいた方がいいと思います。本当に思います。(絶賛推奨)
理解できた範囲内で感想を述べますと、メインは「ダークエネルギー」と、この宇宙の構造、宇宙の果てはどうなっているのかということを理論で明快に解説された上、(ここからが大事なのですが)「なぜそう考えられているか」というところに力点を置いてさらに解説している本です。

おそらく、これ以上ない、というほど明快に説明してくださっていることは理解できるのですが、いかんせん読者が残念脳みそのわたくしゆえ、例えば「シュレーディンガーの猫」の理屈が何度読んでもわかりません。
(著者も「何度読んでもだまされたとしか思えない」とツッコんでらっしゃいますが。)
量子論はかのリチャード・ファインマンさんですら「この世で量子論を完全に理解している人間はいないと断言できる」とおっしゃっているそうなので、とにかく難解でパラドックスだらけなのでしょう。
最後の方で著者も「1回読んだくらいではわからないと思うので、ヒマなときにでも何度も読み返してほしい」とおっしゃっているので、とりあえず一回でわからなくてもいいみたいです。

著者の目的は「きいた風なことを言って読者をわかったような気にさせる」ことではなく、「わからない。わからないが、自分の頭で自分なりに考えてみよう、と思わせる」ことなのだろうと思います。
知的好奇心に火をつける、という意味で、後者の方が誠実で、真に教育であると思いますね。

あと、なぜこんなに哲学者を目の敵にされるのかわかりませんが(笑)、そこも大爆笑でした。ぜひ中島義道先生あたりと場外乱闘…いえ、対談などなさっていただきたいなあと無責任なことを考えました。抱腹絶倒の異種格闘技が見られるのではないかと、想像しただけでわくわくしましたごめんなさい。


巻末に、南伸坊さんがオススメしてくださったという『ダーク星人の科学史』という短編小説がついています。
本文中にもレトロなタコ型宇宙人のイラストがあいまあいまに挟まれていて(昔のSFマガジンとかに載ってそうなイラスト。このイラストも好きです)、これが「ダーク星人」らしいです。
主人公はエイト君というダーク星人。
で、ダーク星人の正体見たり、地球の海底に住んでいるタコだったのですが(笑)これはいわゆる「タコツボ学者」を揶揄した作品でありながらも、実は自分たち人類のカリカチュアでもあるのですね。
設定だけ聞いているとただのユーモア小説かと思われるかもしれませんが、最後まで読んで不覚にも感動してしまいました。(先日『星の王さまの天文ノート』の感想にもあげたとおり)宇宙の4分の3はまだそれが何かもわからない「ダークマター」であることがわかってうれしかったのですが、同じことを感じている方がいらっしゃったこと、そしてそんな方が宇宙について研究してらっしゃることが、改めてうれしかったからです。

 我々は何も知らなかった。海がなくとも生物が存在し得ることを、そしてあの光り輝く無数の星々が唯一無二と信じられていたダーク星と同じ世界をやどしていることを。エイト君は歓喜に打ち震えていた。我々がいかに何も知らなかったかを自分が初めて明らかにしたのだ。今まで生きてきて本当に良かった。
(p.293)


この短編の、ラスト一行が最高です(笑)。
最後の最後まで投げ出さず、ぜひ、ご一読下さい。



余談。
この本を読み終わったら、Sing Like Talkingの「Seasons of Change」が久しぶりに聞きたくなって聞きました。懐かしいです。
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by n_umigame | 2013-04-03 21:29 | | Trackback | Comments(0)
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