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『ジブリの教科書1:風の谷のナウシカ』(文春ジブリ文庫)文藝春秋

凶暴な美しさを秘め、友愛を体現する唯一無二のヒロイン像と圧倒的なSF世界―1984年公開の映画『風の谷のナウシカ』は戦後のカルチャー史の中でも異彩を放つ作品だ。当時の制作現場の様子を伝える貴重なインタビューに加え、映画の魅力を立花隆、内田樹、満島ひかりら豪華執筆陣が読み解くジブリの教科書シリーズ第1弾。
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内田樹さんのナウシカ論が目当てでしたが、ほかの評論もたいへん興味深く読ませていただきました。

長沼毅さんの「腐海の生物学」は、タイトル通り腐海の生態を論じたものですが、最後に生命倫理の話になり、原作のナウシカの決断は(人類を代表したものであるから)拙速ではなかったか、と問うておられます。

原作を読んだとき、実はわたくしもここがひっかかりました。
やや急ぎ足で風呂敷をたたんだ印象があったので、仕方なくこういう感じになったのかなあと思っていたのですが、人工的に生命を「変えて」しまうことについての是非を、問答無用で「否」と言っているからでしょう。
これは誰に対してもいつの時代も絶対に正しい答えがあるわけではないので、非常に難しい問題ですよね。極端な例ですが、アメリカなどでは政治的にも常に問題になっている人工中絶の問題ひとつとっても、宗教的な論議を措いたとしても、100%例外はないとしてしまうのか、場合によっては認められてしかるべきなのか、その「場合」というのは何なのか。容易に答えを出せる問題ではないし、また出すべきでもないと思われます。

後半は、他には、大塚ひかりさんの「虫めづる姫君」論、山崎まどかさんのヒロインとしてのナウシカ論などがおもしろかったです。

前半は制作当時の苦労話や裏話など。
宮崎駿監督が、自分の創造したヒロインが実在したらトイレに行くのかとかそういったことをつっこまれるのにうんざり、とおっしゃったのに対して、高畑勲さんが「現実にいるかどうかというようなことが問題にされるというのは名誉なことなんだよ」と応えてらっしゃったのが印象的でした。
宮崎監督が情熱的で情緒的なお人柄なのに対して、高畑さんがけっこうクールで(笑)、良いコンビだったんだなあということが伺えて、お話の内容よりもその関係性が微笑ましかったです。

当時の新聞記事も掲載されていたのですが、時代を感じて読んでいてちょっとイタかったです(笑)。
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by n_umigame | 2013-04-22 21:07 | | Trackback | Comments(0)

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