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『冬のフロスト』上下 R.D.ウィングフィールド著/芹澤恵訳(創元推理文庫)東京創元社

寒風が肌を刺す一月、デントン署管内はさながら犯罪見本市と化していた。幼い少女が行方不明になり、売春婦が次々に殺され、ショットガン強盗に酔っ払ったフーリガンの一団、“怪盗枕カヴァー”といった傍迷惑な輩が好き勝手に暴れる始末。われらが名物親爺フロスト警部は、とことん無能で好色な部下に手を焼きつつ、マレット署長の点数稼ぎが招いた人手不足の影響で、またも休みなしの活動を強いられる……。大人気警察小説第5弾。
(出版社HP)



『フロスト気質』から早5年。本国イギリスではすでにドラマも終了し、日本でもその最終回まで放送が終了しており、おかげさまでわたくしも最後まで見届けることができました。
それでも続くよ原作(邦訳)は。
翻訳が遅れるというのは、こういう「忘れたころのお楽しみ」という側面もあって、いいですね!

5年ぶりではありますが、相変わらずのフロスト節で、相変わらずフロストは一日2、3時間くらいしか寝てないし、捜査は行き当たりばったりだし、マレットのスノッブっぷりは健在で、フロストとマレットとの攻防ももはや安定の芸の域だし、いしいひさいちさんに「短篇集なんじゃねえの?」と揶揄されたモジュラー型の構成も相変わらず。
そして、相変わらずやりきれないような事件を追うフロストの日々を、読者はいっしょに追うわけですが、ずっとこの世界にいたいと思うような、不思議な多幸感も健在でした。

これはフロストのキャラクターによるところが非常に大きいと改めて思いました。
ドラマでは本よりコードが厳しいためかマイルドになっているのですが、下ネタに偏りすぎな下品なジョークも相変わらず。なのですが、絶妙なタイミングでちょっとしたところで、フロストの優しい性格がしみわたるように描かれます。
これがなければ、とても読めたものではないかもしれません。それくらい、起きている事件はやりきれないものばかりです。

同じイギリス人の書いたエンタテインメントでも、アガサ・クリスティの世界のように、上流階級や素敵なお料理やホテルなどは出てきませんが、フロストの世界には不思議なあたたかさがあります。
それは、この世は最悪で生きづらいが、それでも人生は生きるに値するという、さりげないメッセージになっているようにも思います。
フロストのシリーズは、ある程度年を取ってから読む方がいいのかもしれません。

著者のR.D.ウィングフィールドさんが亡くなられたため、未訳の原作は残すところ後一冊、"A Killing Frost"のみとなってしまいました。
また忘れたころにプレゼントのように、ふらっと邦訳が刊行されるのをお待ちしております。
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by n_umigame | 2013-09-15 22:25 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
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