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『鷲は舞い降りた(完全版)』ジャック・ヒギンズ著/菊池光訳(早川文庫NV)早川書房


鷲は舞い降りた!ヒトラーの密命を帯びて、イギリスの東部、ノーフォークの一寒村に降り立ったドイツ落下傘部隊の精鋭たち。歴戦の勇士シュタイナ中佐率いる部隊員たちの使命とは、ここで週末を過ごす予定のチャーチル首相の誘拐だった!イギリス兵になりすました部隊員たちは着々と計画を進行させていく…使命達成に命を賭ける男たちを描く傑作冒険小説―その初版時に削除されていたエピソードを補完した決定版。
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ラストまで触れています。
映画(1976年)にも少し触れますので、ネタバレ禁止の方はご注意ください。
また、完全版の前に出版された初版の方は未読です。

読んだことなかったんかい。はい、読んだことありませんでした。
もちろん映画も観たことありませんでした。

「冒険小説」の傑作、とのことで有名な作品で、この「冒険小説」という枕があったことでかえって敬遠していた作品でした。
なんで「冒険小説」を読まないのかですか?冒険小説って言うと、内容ぺらっぺらのアクション映画をノベライズにしたようなマッチョなファンタジーというイメージがあってですね。この作品ももれなくそういう小説だと思っていました。
はい、反省してます。

主人公の一人はドイツ軍の軍人であるクルト・シュタイナ。もう一人はアイルランド人のリーアム・デヴリン。
時代設定は第二次大戦中で、しかもドイツは敗戦が濃厚になってきた頃です。アイルランドはその後、IRAによるテロ行為などで特に北アイルランドで問題が多発するようになりますが、その前の時代です。
…という、素材だけ聞いていると明るくなりようがないような作品なのですが、実際に読んでみると、これぞエンタテインメントとしか言いようがないような作品でした。
読んでいるあいだ、楽しくて楽しくて。
614ページあるのですが、時間さえ許せば一気読みしたと思います。

この作品が発表された当時は、イギリス人による小説でドイツの軍人が悪役ではなく、ドイツ人といってもいろいろな人がいるんだよ、というところが新鮮だったそうです。
ドイツ人に対してはフェアな目線を注いでも、このアメリカ軍のレインジャー部隊隊長の絵に描いたようなバカ男な描かれ方を見ていると、イギリス人としてアメリカ人だけは目障りだったのかしらと思ったり(笑)。

小説がおもしろかったため映画の方も見たのですが、個人的に、主演の二人、マイケル・ケインとドナルド・サザーランドが、それぞれシュタイナとデヴリンのイメージに合わないこと、原作の好きなシーンがないこと、あっても「そうじゃない、そうじゃないんだ!」とギリギリくちびるを噛みしめたシーンが多かったことなど、ちょっと残念な印象しか残りませんでした。
具体的には、マイケル・ケインのシュタイナは、そこそこユーモアを感じさせて聡明そうではあるのですが、ちょっと酷薄そうに見えてしまったことが残念でした。原作の、良くも悪くも育ちの良さそうなお坊ちゃんで部下にモテモテで、優しいところがあまり感じられず。
デヴリン役のドナルド・サザーランドは、そんなことはおまえの勝手だと言われてしまえばそれまでなのですが、怖いのですよ、わたし、この俳優さんが。おそらく生まれて初めて見たD・サザーランドさんの映画(『バック・ドラフト』放火魔役)に問題があったのではないかと思われます。(同様にジェフ・ブリッジスも怖いです。刷り込み=『失踪』)
そこを何とか克服したとして、D・サザーランドではデヴリン役には大きすぎます。原作のデヴリンは170cmくらいの小柄な男のはずが、D・サザーランド、193cm。いくらなんでもと思います。なぜこのキャスティングになったのでしょうか。


小説に話を戻すと、この小説のおもしろさは様々あると思いますし、すばらしい書評を書いてらっしゃる方がweb上にも大勢いらっしゃるので、そういった感想はそちらに譲るとしまして、コンビ萌え的に身もだえする小説でもあるということだけは申し上げたいと思います。
特に、シュタイナ中佐とノイマン中尉の会話ときたら、初登場から別れのシーンまで、電車の中で萌え転がりそうになったのを理性で食い止めるのがどれだけ苦行だったか。
映画が今ひとつと感じたのは、この二人の関係があまり描写されなかったということも一因です。(しかもリッター・ノイマンはなぜか映画では「ハンス・ノイシュタット」と名前を変えられていました。意味ないだろと思いつつ見ていたのですが。)
ノイマンはシュタイナの部下なので、ふだんは上官に対する言葉使いで話すのですが、切羽詰まったときは「クルト」と名前で呼ぶのです。もう、こういうのに弱くて弱くて、溶けそうになりながら読んでいました。
お気に入りのシーンを全部引用してご紹介したいくらいですが、きりがないので涙ながらにあきらめます。気になった方は、ぜひ、原作をお読みください。
シュタイナとノイマン以外にも、ラードルのような魅力的なキャラクターがたくさん登場します。

この作品の成功を受けて、『鷲は飛び立った』という続編が書かれたそうですが、蛇足としか思えないようなできだったようで、しかも前作のラストで死んでしまったシュタイナが実は生きていました、という禁じ手を打ってしまったようです。
「実は生きていました」という手法を全否定するものではありませんが、完成度の高い作品でこの手を使うには、次作でもよほどの完成度が求められるでしょう。結果は失敗だったようで残念ですね。

そしてぜひ、いつの日か映画もリメイクされることをお祈りしております。
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Commented by まりお at 2013-09-23 00:29 x
あの傑作の完全版! 楽しみです。
確かに映画は薄味ですけど、私は好きです。リメイクするなら、失笑される米軍司令官にはトム・クルーズを推薦。
ボブ・ラングレー「北壁の死闘」もぜひお読みください。
Commented by まりお at 2013-09-23 00:33 x
あの傑作の完全版! 楽しみです。(ボブ・ラングレー「北壁の死闘」もいいですよ。)
確かに映画は薄味ですけど、私は好きです。後半の失速感が残念ですが。
リメイク版、失笑される米軍司令官にはトム・クルーズを推薦します。
Commented by n_umigame at 2013-09-23 19:58
>まりおさま
アメリカのレインジャー部隊隊長は悪目立ちが似合う人がいいですよね^^
by n_umigame | 2013-09-18 00:02 | | Trackback | Comments(3)

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