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*さいはての西*

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『ビー・ムービー』(2007)

一度選んだ仕事は死ぬまで変えられないハチの世界に嫌気がさした若きミツバチのバリーは、初めて巣の外の世界に飛び出し、ニューヨークの街へ。危うく人間に潰されそうになったバリーは、その危機から救ってくれた花屋の女性バネッサと友情を育むが……。「シュレック」シリーズのドリームワークス・アニメーション製作。人気コメディアン、ジェリー・サインフェルドがバリーの声のほか、製作・脚本も担当。バネッサ役はレニー・ゼルウィガー。
(映画.com)



原題:Bee Movie

DWA作品マラソンも後半戦です。
スティーヴン・スピルバーグ監督とジェリー・サインフェルドの間で出たアイデアを、最終的にアニメにしよう、となって制作された作品だそうです。(このいきさつをコントにしたCMが別のDWA作品のDVDに入っていました)
ハチ(bee)の映画とB級映画をかけてこのタイトルになったそうですが、最初からB級映画を目指すというのは違うんじゃないかな…という懸念がもろに作品に出てしまっている気がします。


以下、ネタバレにつきもぐります~。











DWA作品に脚本の緻密さなどは求めていないのですが、それでもこれはキビしかったです。
何がやりたかったのか、最後までわかりませんでした。
ところどころDWAらしいブラックジョークもぴりっと効いているところがあるのですが、それが単体の小ネタで終わっていて作品全体のスパイスになっていない印象です。

大学を新卒で出たら最初に選んだ仕事を一生続けなければならないとか、そこで挟まれる「この先死ぬ気で頑張り続けるために、死ぬ気で頑張ってきた」というセリフなどは、日本人の就職のあり方への皮肉かなあと思いました。
仲間のハチたちはその人生に何の疑問も抱かない、両親も今までそうだったからこれからも当然だ、と言うのに、一人疑問に思う主人公。
そこで新しい人生のあり方を模索するのかなと思ったら、偶然出会った人間の女性と出会ったことで、人間が蜂蜜を搾取していることに気づく。奴隷のようにこき使われているハチたちの様子を目の当たりにして人間相手に訴訟を起こし、勝訴したものの、ハチが働かなくてよくなったことで世界中の生態系が崩れる。
この崩れた生態系を取り戻して、めでたしめでたし。

…というお話なのですが、子どもが喜びそうなのは冒頭の遊園地のようなシーンだけで、明らかにアウシュビッツがモデルだろうと思われるハチ箱、裁判や訴訟、ハチと生態系の関係など、子どもに理解するのはちょっとむずかしいし重すぎると思う場面がずっと続きます。(「女王がここにいるからここにいなきゃ」「女王?これはドラッグ・クイーンだよ!」というジョークは、笑いましたが、でも子どもには何て説明すれば…?)
じゃあ大人が見ていて楽しいかと問われると、これがテンポが悪くてだれるんですよ。

特に、クライマックスの飛行機の不時着シーン。
『マダガスカル2』の、キャラクターの関係性や魅力を全部見せながら、スピード感とセクシーさあふれる中に的確なボケを入れてくるすばらしい不時着シーンを見てしまうと、いかにも自己満足で内輪ウケな場面にしか見えませんでした。
基本は子ども向けアニメだし、助かることはわかっているんですよ。わかっていてもハラハラさせる、というのが大事なのであって、「どうせ助かるってわかってるからこれでいいよね?」というやり方だと、見てる方は「いやー、そりゃそうなんだけどさー…」と思ってしまいます。お客さんを笑わせようとしている舞台に立っている人は、自分で笑っちゃダメなのです。

ディズニーに大人げないケンカを売っているところも、まだまだ相変わらず。
もろ、あのデザインのクマのプーさんに麻酔銃て。ディズニーの肩を持つ気はないけれども、正直、このシーンは要らないと思いました。

あと主人公や脇役に共感できるところがなくて、応援する気が起こらない。
行き当たりばったりで自分勝手なところが『シャーク・テイル』の主人公を思い出してしまいました。

とりあえず、スティングとレイ・リオッタの無駄遣い。これに尽きるかもしれませんです。

そして改めて思いました。
人間と動物はお互いに話せないという設定にした『マダガスカル』シリーズは本当に英断でした。人間みたいなんだけど、ときどきその動物特有の特徴がふと出るところが、『マダガスカル』シリーズが成功した一因ではないかと考えています。
by n_umigame | 2013-11-04 21:43 | 映画・海外ドラマ