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『フィクションの中の記憶喪失』小田中章浩著(世界思想ゼミナール)世界思想社

天国か地獄か? 小説、演劇、映画、漫画、アニメ、コンピュータ・ゲーム等に現れる記憶喪失。十九世紀における登場から現在生み出される多様な表象文化の中の記憶喪失モチーフの展開と機能を扱った、類を見ない斬新なフィクション論の誕生。

小説、演劇、映画、漫画からゲームの中に現れる記憶喪失。十九世紀における登場から現代まで、虚構の中の記憶喪失モチーフの展開と機能を扱った、斬新なフィクション論の誕生。
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記憶喪失なんてフィクションの中だけで起きるできごとだと思っていたのですが、大学の同級生で実際に一時的に記憶喪失になったことがあるという人がいました。
交通事故に遭って頭部を強く打ったことが原因だったそうですが、おもしろかったのは(人の不運を「おもしろい」と言っては申しわけないのですが)自分のことも忘れていたのにお姉さんのことだけ覚えていたそうです。自分の知っている範囲では姉弟のきょうだいは仲が良いところが多いので、それもあったのかなと「いい話」として聞いていました。


この本はあらゆるフィクション(物語)の中に登場する記憶喪失が、物語においてどのように用いられているか、その発生から現在に至るまでどのように機能してきたかを、代表的な例を挙げながら論じられたものです。

ここにあげられた例を映画などで見ていたはずが、記憶喪失には「前行性」と「逆行性」の2種類あることなどは改めて気づかされました。
例えば映画『メメント』の主人公のように、10分以上経過すると記憶が消えてしまう、新しいことが覚えられないという型の記憶喪失が「前行性」。
事故などである時点から以前の記憶が全部抜け落ちてしまう「わたしは誰?」という状態になってしまう型の記憶喪失が「逆行性」。
また、実際には一度記憶喪失になるとほとんど回復しないそうなのですが、学生時代の同級生のように、一時的に記憶喪失になる人もいるようです。
巻末には、書中で取り上げられた記憶喪失に関連のある作品が一覧になって付されていますので、この本を読んでから作品に当たってみたい場合にとても便利です。

そうと知りつつ購入したものの、ちょっと期待していたような内容の本ではなかったです。テーマとしてはとてもユニークですし、記憶喪失についての勉強にはなりましたが、それがあまりにたくさんの例示の中で次々と矢継ぎ早に示されていくためか、一つ一つの作品においての記憶喪失がしかけとして、あるいはモチーフとしてどう使われているのかという点の掘り下げが、あまりなされていなかったからではないかと思いました。

そんなに深い意味もなく、記憶喪失を装置としてしか使っていない作品も多いためかもしれませんが、「そこのところをもっと詳しく!」となる作品もありました。
この辺りは作品の好き好きがあるのでむずかしいかもしれませんが、機会があればそういう角度から論じられた本も読んでみたいと思います。
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by n_umigame | 2013-11-04 22:41 | | Trackback | Comments(0)
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