*さいはての西*

fwest.exblog.jp
ブログトップ

『象は忘れない』アガサ・クリスティー著/中村能三訳(クリスティー文庫)早川書房

推理作家ミセス・オリヴァが名づけ親になったシリヤの結婚のことで、彼女は先方の母親から奇妙な謎を押しつけられた。十数年前のシリヤの両親の心中事件では、男が先に女を撃ったのか、あるいはその逆だったのか?オリヴァから相談を受けたポアロは“象のように”記憶力のよい人々を訪れて、過去の真相を探る。
解説:芦辺拓
(カバー裏)


ITV版『名探偵ポワロ』ファイナル・シリーズ読み残しつぶしこみ第2弾。
事実上この作品がポワロもの最後の執筆作品だったようです。

以下、ネタバレですのでもぐります。
トリックを割っていますので、未読の方はご注意ください。





 

この作品はポワロものであれば『五匹の子豚』、ミス・マープルものであれば『スリーピング・マーダー』といった、過去の事件を探偵が再捜査、再構築するというタイプのお話でした。
ミステリーとしては、平均点の非常に高いクリスティーの作品群の中にあっては平均か、ややそれを下回る作品かなというのが正直な感想ですが、アガサ・クリスティーが82歳のときの作品だったという点と、もう一点、こういうところが好きだなあというところがありました。これについては後述いたします。


「ミステリーとしては」と前置きしたのは、これはいわゆる「双子トリック」だったからです。
わたくしあまりミステリーのトリックとかにこだわりがなく、犯人をネタバレされていてもあまり気にせず、作品自体が秀逸であれば何でもおいしくいただける幸せなやつなんですが、この作品に関しては、「えっ、ミステリの女王がそれやっちゃうの? というかこれクリスティーが元祖?」と驚きを隠せませんでした。ダウナー方向の。

あと、本格ミステリにこういうことを言っても仕方が無いのかもしれませんが、そんな理由で人を殺したり、例え理由が理由だったとはいえ人殺しを繰り返した人を放置しておくのが、本当に愛なのかという点がどうしてもひっかかります。
これを「愛でした」「じゃあしょうがないね」「めでたしめでたし」はないんじゃないのと。
いえあの、人間には惚れた弱みとか、当事者にしかわからないことって、特に感情面では絶対あるとは思うのですよ。そこは理屈じゃないんです。それはわかります。
ですがいくらエンタテインメントでも、最低限通してほしい筋とか仁義ってものがあるんじゃないかと、しばし沈思黙考した次第であります。

そんな理由で読後脱力したのですが、基本的にミセス・オリヴァーが好きなキャラクターなこと、ミセス・オリヴァーとポワロの会話も好きなこともあって、読んでいる間は楽しかったです。

あと、一点良かったと思ったところ「親は親、子どもは子ども」というところです。
成人した子どもがしでかしたことまで親が責任を取るのが当たりまえのような報道姿勢をしかれることが当たり前の国に住んでいると、いい意味での個人主義が根付いている文化が本当にうらやましいです。

マダム・オリヴァーの最後のひとことは、本当に人間に与えられた救いだと思います。

 

 


[PR]
by n_umigame | 2013-11-26 20:54 | ミステリ | Trackback | Comments(2)
トラックバックURL : http://fwest.exblog.jp/tb/20028741
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by Yuseum at 2013-11-28 22:20 x
自分は、この作品を最後まで読んで、「えっ!? ワンプロットで終わり???」と、大変驚いたことは覚えてますσ(^◇^;)

・・・本国の人も同じ事を考えたのか、今度の映像化ではサブプロットがあるみたいですよ。(見るときの楽しみのために、詳しくは調べていませんw)
Commented by n_umigame at 2013-11-30 00:18
>Yuseumさま
言われてみればそうですね。一発ネタというか、ひねりがないですよね。
ドラマでは良い方に変わっていることを祈っています><(わたしもCurtain以外は見ていません;;)