*さいはての西*

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『"アイデンティティー"』(2003)


    激しい豪雨が降り続く夜、人里離れた一軒のモーテル。管理人ラリーがくつろいでいるところへ、ひとりの男が飛び込んでくる。彼、ジョージは息子ティミーを伴い、交通事故で大ケガをした妻アリスを運び込む。救助を要請しようとするが電話は不通だった。アリスをはねたのは女優キャロラインの運転手で元警官のエド。彼は病院へ向け車を走らせるが、途中で立ち往生し、やむなくモーテルへ引き返すことに…。ある時、ある一室で、既に死刑判決の下った事件について再審理が行われようとしている。ポイントとなっているのは、その事件の連続殺人犯である囚人が書いた日記だった。
(Yahoo!映画)

 

「嵐の山荘(クローズド・サークル)」もの+サイコ・サスペンスものでした。
二重のどんでん返し、意外な犯人、と仕掛けは本格ミステリ好きにはストライク・ゾーンでしょう。

以下、トリック及びラストシーンまでネタバレしていますので、未見の方はここで回れ右をオススメします。
何も知らないで見た方がぜったい楽しいタイプの映画です。
※アガサ・クリスティー『そして誰もいなくなった』のネタバレもあります。

 





 

 

これはある程度、基本的なミステリー作品を読み/見ている人には、大筋は読めてしまうと思います。

偶然モーテルに集まった人々が(この映画では部屋番号順に)カウントダウンで殺されていく、そして途中で死んだはずの人物が実は…という部分はアガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』そのまんまですね。
「意外な犯人」がアンファン・テリブル(恐るべき子ども)というのも、エラリイ・クイーンのあれですし、その後も類似の作品が(ミステリーという範疇には含まれないかもしれませんが)見受けられます。
また、1990年代くらいまでに流行った…という表現が適切かどうかわかりませんが、多重人格もののサイコ・サスペンスでもあります。

そんなわけで「手」としては筋は読めてしまうのですが、演出が良いこと、俳優さんの選び方が絶妙であることと、90分という時間にコンパクトにまとめられていてテンポ良く物語が展開するので、見ていて飽きません。
途中で盛大に種明かししてしまうのですが、その「後」の部分もうまいなあと思いました。


単純に観客をびっくりさせればいいという作りでなく、思い返すと細かいところまで伏線が張られていることがわかり、楽しいです。

例えば、モーテルの管理人ラリーは行きがかりで管理人になったのですが、着いたらもう死んでいたという前の管理人も「ラリー」という名前だったと言います。「モーテルの管理人」といういわば「キャラ(駒)」なので名前が同じなんですね。

そして、実はモーテルに集まってきた人たちはマルコムの分裂した人格だったとネタを割ってから全員誕生日が同じだということがわかりますが、その前にも「わたしも5月生まれ…牡牛座ね」というセリフが入ったりします。5月生まれなら双子座の可能性もあるのにな、と思いつつ見ていたのですが、それはありえない(同一人物の多重人格だから)という伏線になっていたんですね。(ただこれってその人格が生まれた生年月日にならないのかなと、ふとまじめに考えました)

また、精神科医の言っている人格の数とモーテルに集まった人数が合わないのもうまい。これは最後まで気づかなかったのですが、精神科医たちが知らない人格が実は真犯人だったのですね。まだ子どもでほとんどしゃべらないことから、医師が引き出すことができなかった=存在を知られていなかったということなのでしょう。
結局は少年のまま大人にならなかった真犯人(と言っていいのか、殺人を繰り返していた人格)の少年の顔が、マルコムと面影がかぶるところもうまいですよね。
部屋のキーの使い方などもうまくて、最後のキーが出てくるシーンは「出るぞ、出るぞ、なんか出るぞ」と思いながら見ていたにもかかわらず「ぎゃーーーー!!!」となりました(笑)。

 「肉体と精神どちらを罰するべきか」というセリフがありましたが、これは「やはり罰するべきだ」という制作者の意図だったのかなとも。そうでなければ、あの最後のどんでん返しであるラストシーンは要らないんじゃないかと、ふと思いました。
おそらく、精神的な疾患を理由に、殺人を犯したけれども刑を免れたという例が実際にアメリカではあったのでしょう(それも複数)。
この映画は21世紀になってから公開されていますが、精神疾患を理由に行為を罰しない、というのが行きすぎた事例もあったようです。(例えば親から虐待を受けたという証言が、カウンセラーが引き出した嘘だった、というような。)

エンタテインメントとして仕上げてありますが、いわば手垢のついたトリックをわざわざ映画にしてみせた意図が、このあたりにもあったのかな?とも。

ただ基本的にやはりエンタテインメントですので、わくわくどきどきしながら見るのが正解の映画だと思います。




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by n_umigame | 2013-11-26 21:01 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)
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