*さいはての西*

fwest.exblog.jp
ブログトップ

『エンダーのゲーム』(2013)

   オースン・スコット・カードが1977年に発表し、アメリカSF界の権威であるヒューゴー賞とネビュラ賞をダブル受賞した名作小説「エンダーのゲーム」を映画化。異星人の侵攻を受けた地球は、衛星軌道上に「戦いを終わらせる者」を育成するバトルスクールを設立し、世界中から優秀な子どもたちを集めていた。一家族がもうけられる子どもは2人までと定められた世界で、禁断とされる3人目の子ども=サードとして生まれたウィッギン家の少年エンダーは、それゆえに冷遇されて育ったが、やがて才能を見込まれバトルスクールに送られる。優秀な成績をおさめ、みるみる頭角を現すエンダーに周囲は「戦いを終わらせる者」として期待を寄せるが、エンダーは戦うことへの疑問と重い宿命に苦悩する。そんな中、最終戦争の時が迫り……。エンダー役は「ヒューゴの不思議な発明」のエイサ・バターフィールド。監督は「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」のギャビン・フッド。原作者自らもプロデューサーとして製作に参加している。
(映画.com)

   あまり良い前評判を聞かなかったこととディズニーの配給とあって、あまり期待せず見に行ったのですが、たいへんきちんとした映画でした。映画は映画で良いと思います。
 さぞかし、子どもだましの「良い者が勝った、ばんざーい」みたいなノーテンキな展開になるのかと思いきや、そんな単細胞的展開ではなく、ダークで重い原作の雰囲気もきちんと踏襲していたと思います。

 ただ、あまり良い感想を持たなかった方のお気持ちもわかると申しますか、原作の持つテーマや壮大さ、登場人物の細やかな心の機微などを、2時間という尺でまとめるのは至難の業だったのではないかと思いました。

 ドラマの部分は説明不足か、セリフで全部説明しようとしてしまっているので、登場人物、とりわけ主人公エンダーへの感情移入を難しくしてしまっています。

 エンダーが一人前の指揮官になるまでがほぼ全体の9割くらいを占めていて、エンダーの戦略家としての才能が花開く交戦シーンは一瞬で終わってしまいます。これも原作の通りなのですが、原作はエンダーが様々なモデルケースを通して(そこには反面教師も含みます)指揮官とは何かということや、リーダーシップ、相互の信頼と友情に結ばれたチームを構築するにはどうすればいいか、ということを学んでいく過程が丁寧に描かれています。これが映画ではほとんど描写されず、結果だけぽん、と出すので、カタルシスを味わうことができません。

 わたくしは原作を読んでから映画を見たので、ドラマの部分は原作からの応援があって沁みましたし、プロットも原作の重要なポイントをきちんと押さえつつ一本の映画作品にしていたと思いました。
 映像の美しさや、バトル・スクールの無重力室での模擬戦の様子などは「絵」で見ると一目瞭然で、小説から自分が起こしたイメージを広げる手助けをしてくれました。

 ですので、「原作を読まないとだめな映画」という意味ではだめだった、という感想になってしまいますが、原作をたいへんまじめに踏襲した映画作品だったとう点では、長年のファンだった方の期待は裏切らなかったのではないでしょうか。

 早期英才教育を受ける子どもたちの配役も、全員よいキャスティングだったと思います。ヴァレンタインやペトラが丸顔で親しみやすい雰囲気だったのも、かえってよかったと思います(笑)。

 以下、ネタバレです。
ラストまで触れていますので未見の方は回れ右推奨。







 ラストが唐突すぎてついていけない、という感想を見かけましたが、あのラストは原作通りです。
 ただ、原作の方は、そこへ行くまでいろいろと細やかな描写があります。

 エンダーがあの戦いのあと、なぜ地球へ帰ることができなかったのかという点や、地球上での各国・各勢力の覇権争い、あるいはエンダーの兄ピーターと姉ヴァレンタインがもっと様々な活躍をするのですが、映画では冗長になることからカットされたと思われます。
 映画ではただ優しくて弟思いの姉という描かれ方でしたが、ヴァレンタインも、その兄のピーターも、実は「エンダー」になりそこなった子どもでした。なので、エンダーほどの適性はなかったものの、ピーターもヴァレンタインも突出して優秀な子どもなのです。

 また、原作では6歳から20代の青年になるまで、エンダーは成長し続けますが、映画ではずっと16歳くらいのままです。
 これもエンダーへの感情移入を阻む一因になっていると思いました。

 映画の「艦隊の到着まで28日と○時間」というようなシーンですが、実はここは物語上重要なシーンなのに、グラッフ大佐がじっとパネルを見てあとは字幕が出るだけで、具体的な説明がなかったと思います。

 この「艦隊」とは何なのかということと、エンダーが惑星エロスで出会う、自室であぐらをかいて座っている謎の老人が、実は伝説の指揮官メイザー・ラッカムだった、という驚きの展開のキモになっているのですが、その説明はありませんでしたね。SFとして醍醐味的なシーンだっただけに残念です。ここはぜひ原作をお読み下さい。わたくしも原作を読んだときは驚いて楽しかったシーンです。

 原作の感想はこちらです。

 興味のある方はよろしければ合わせてどうぞ。


 


[PR]
by n_umigame | 2014-01-22 21:24 | 映画・海外ドラマ | Trackback | Comments(0)
トラックバックURL : http://fwest.exblog.jp/tb/20264363
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。