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『地上最後の刑事』ベン・H・ウィンタース著/上野元美訳(ハヤカワポケットミステリ)早川書房

〈アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞受賞〉 小惑星衝突が迫り社会が崩壊しつつある世界で、新人刑事は地道な捜査を開始する。近未来ミステリ ファストフード店のトイレで死体で発見された男性は、未来を悲観して自殺したのだと思われた。半年後、小惑星が地球に衝突して人類は壊滅すると予測されているのだ。しかし新人刑事パレスは、死者の衣類の中で首を吊ったベルトだけが高級品だと気づき、他殺を疑う。同僚たちに呆れられながらも彼は地道な捜査をはじめる。世界はもうすぐなくなるというのに……なぜ捜査をつづけるのか? そう自らに問いつつも粛々と職務をまっとうしようとする刑事を描くアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞受賞作! (出版社HP)



※ラストシーンを含むネタバレがあります。


人類や文明の滅亡や衰退を描く終末小説を、聖書の「黙示録(アポカリプス)」になぞらえて「アポカリプス小説」と呼ぶそうですが、この『地上最後の刑事』は半年後に小惑星が衝突するという世界、つまり終末の直前(プレ)を描くプレ・アポカリプス小説。

あと半年で地球上は壊滅的なことになることが予想されており、生きる希望を失って投げやりになったり怪しげな宗教に救いを求めたりする人が多い中、アメリカの一地方都市にあるマクドナルドで遺体が発見される。
こういうご時世だからと自殺で片付けられそうになっているところを、刑事に昇進したばかりのヘンリー・パレスは他殺を疑って捜査を開始する…。

率直なところ、ミステリ小説としてはそんなにびっくりするようなどんでん返しがあるとか、犯人が意外だとかいうことはありませんでした。
ですが警察小説のように淡々と地道に捜査を続けていく様子が心地よいこと、ヘンリーのちょっと変わった個性がなぜだか読んでいて楽しいことから、もうすぐ人類が滅亡するという陰気な世界にもかかわらず、ずっとこの世界にいたいような気持ちにさせる不思議な小説でした。

主人公のヘンリー・パレスは両親をすでに亡くしていて、それが物語の通底和音となり、物語世界のやるせなさとミステリーを盛り上げるのを静かに手伝っています。
また、ヘンリーの真摯さには偏執狂的なところがなく、淡々と、ただそうしなければならないから自分ができることをするのだ、という静かな真摯さで事件の真相に迫って行きます。

このもの悲しい世界にユーモアを交えた会話も何とも言えずマッチしていて、それが読んでいて心地よいと感じるのでしょう。


この作品は三部作の予定だそうで、最後まで読んでも解決していない問題(事件の大筋とは関係のない部分ですが)があり、ラストシーンからももしかして人類に明るい展開があるのかもしれないと思わせて終わっています。

続編の邦訳が楽しみです。




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by n_umigame | 2014-03-15 18:42 | | Trackback | Comments(0)
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