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『ミステリマガジン700 海外篇』杉江松恋編(ハヤカワ・ミステリ文庫)早川書房


日本1位世界2位の歴史を誇るミステリ専門誌の集大成的アンソロジー 海外の最新傑作を常に紹介し続けてきたミステリ専門誌だからこそ揃えられた豪華傑作選

【収録作品一覧】
「決定的なひとひねり」A・H・Z・カー/小笠原豊樹訳
「アリバイさがし」シャーロット・アームストロング/宇野輝雄訳
「終列車」フレドリック・ブラウン/稲葉明雄訳
「憎悪の殺人」パトリシア・ハイスミス/深町眞理子訳
「マニング氏の金のなる木」ロバート・アーサー/秋津知子訳
「二十五年目のクラス会」エドワード・D・ホック/田口俊樹訳
「拝啓、編集長様」クリスチアナ・ブランド/山本俊子訳
「すばらしき誘拐」ボアロー、ナルスジャック/日影丈吉訳
「名探偵ガリレオ」シオドア・マシスン/山本俊子訳
「子守り」ルース・レンデル/小尾芙佐訳
「リノで途中下車」ジャック・フィニイ/浅倉久志訳
「肝臓色の猫はいりませんか」ジェラルド・カーシュ/若島正訳
「十号船室の問題」ピーター・ラヴゼイ/日暮雅通訳
「ソフト・スポット」イアン・ランキン/延原泰子訳
「犬のゲーム」レジナルド・ヒル/松下祥子訳
「フルーツセラー」ジョイス・キャロル・オーツ/高山真由美訳
(出版社HP)

しばらく品切れだったかして手に入らなかったのですが、SFの方と合わせてやっとGETできましたので、読んでみました。
久しぶりにミステリらしいミステリーを読んだ!と言う充実感とともに読了いたしました。

 個人的な好みで申しますと、「マニング氏の金のなる木」「アリバイさがし」が好きです。謎解きという点で端正な作品は、いかにもこの著者らしいお行儀が良い謎解きの「二十五年目のクラス会」や「十号船室の問題」「名探偵ガリレオ」が秀作だと思いました。普通小説のような印象を受けるのは「終列車」。そして最後に収録されている「フルーツセラー」が強い余韻を残して終わります。編集の妙ですね。


 以下、読み終わった方向けの完全ネタバレですので、未読の方はここで回れ右推奨です。












■「決定的なひとひねり」A・H・Z・カー/小笠原豊樹訳
奥さま、無双。
しかし、このお話は…強盗に遭って逆襲するというお話ですが、ミステリなのかなんなのか、不思議な読後感でした。


■「アリバイさがし」シャーロット・アームストロング/宇野輝雄訳
著者が著者なのでどきどきしながら読み始めましたが、「古き良きアメリカ」が残るような心温まるお話でした。社会が、理屈ではなく、その人のあり方自体に敬意を払うということの大切さが静かにしみてきます。


■「終列車」フレドリック・ブラウン/稲葉明雄訳
こちらも著者が著者なので何が来ても驚かないつもりでしたが、普通小説のような読後感でした。優柔不断を繰り返す人生において、いつしか自分も「終列車」に乗り遅れてしまったのではないかと、我が身を振り返りました。もっと年を取ってから読むとまたなおさら沁みるかもしれません。


■「憎悪の殺人」パトリシア・ハイスミス/深町眞理子訳
パトリシア・ハイスミスはふとした拍子に人間が狂ってしまう「線」、その一線を越える様を描くのがとてもうまい作家さんなんだなと改めて思いました。このお話の語り手も、「手段のためには目的は問わない」という倒錯したところが皮肉な笑いを誘います。


■「マニング氏の金のなる木」ロバート・アーサー/秋津知子訳
大逆転。
そして、人生にやり直せるチャンスがあれば、虚心にそれに向かい合いことの大切さ。いいお話です。


■「二十五年目のクラス会」エドワード・D・ホック/田口俊樹訳

ホックはエラリイ・クイーンのお弟子筋という位置づけ(自分内)なのですが、そういう意味で非常に「らしい」謎解きでした。事実をひとつひとつ積み上げて、パズルを解くという端正なミステリです。


■「拝啓、編集長様」クリスチアナ・ブランド/山本俊子訳
これは読み終わって「…え?」となり、2回読みました。特に最初と最後。これは犯人と被害者が入れ替わったパターンで合ってますでしょうか。


■「すばらしき誘拐」ボアロー、ナルスジャック/日影丈吉訳
これも読み終わって真相がわかると、それまで見ていた世界が反転するタイプの作品です。
「信用できない語り手」ものですね。


■「名探偵ガリレオ」シオドア・マシスン/山本俊子訳
このガリレオは、本当にガリレオ・ガリレイご本人です(笑)。有名な「ピサの斜塔の重力実験」において殺人事件が発生し、ガリレオがその謎を解くというお話で、歴史ミステリですね。と言ってもあまり当時の時代背景を知らなくても楽しめるようになっています。


■「子守り」ルース・レンデル/小尾芙佐訳
カトリーヌ・アルレーの『わらの女』を思い出しました。
わたくし、ルース・レンデルが苦手だったのですが、これならだいじょうぶです(笑)。


■「リノで途中下車」ジャック・フィニイ/浅倉久志訳
ギャンブルはだめだということがよくわかりますね(笑)。


■「肝臓色の猫はいりませんか」ジェラルド・カーシュ/若島正訳
『豚の島の女王』などのジェラルド・カーシュの作品です。となれば、って感じでした。ミステリと言うよりこれはホラーなんじゃないでしょうか。


■「十号船室の問題」ピーター・ラヴゼイ/日暮雅通訳
途中まで、彼らの乗っている船の名前が明かされないのですが、「思考機械」のジャック・フットレルが登場した時点で気づくべきでした。そういう舞台装置としてのおもしろさもさることながら、謎解きとしても段階を踏んで解き明かされていきます。
ラヴゼイというとダイヤモンド警視シリーズしか読んだことがないのですが、そう言えば最近新刊をチェックしてないです…。


■「ソフト・スポット」イアン・ランキン/延原泰子訳
途中で「ん?変な日本語…」と思いつつ読んでいたら…でした。


■「犬のゲーム」レジナルド・ヒル/松下祥子訳
ダルジール警視のパートナー、パスコーが謎解きをするお話です。が、真相は藪の中。母親より犬が好きというのが、イギリスらしいなあと思いました(笑)。これが説得力を持つのでしょうね。


■「フルーツセラー」ジョイス・キャロル・オーツ/高山真由美訳
この著者の作品は初めて読みました。最後に収録されていますが、読後めちゃくちゃ後を引きます。亡くなった人、特にそれが近親の人だった場合、その秘密は墓穴にいっしょに埋めてしまうことですね…。




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by n_umigame | 2014-06-15 18:51 | ミステリ | Trackback | Comments(0)
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