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『ベルサイユのばら』11巻 池田理代子著(マーガレットコミックス)集英社

少女漫画の歴史的名作『ベルサイユのばら』が連載終了から40年余の時を経て、ついに蘇る! アンドレ、ジェローデル、フェルゼン、アラン…オスカルを巡る人々のその後や、知られざる過去を描いた新作エピソード4編を収録。美麗カラー24P付きの豪華仕様!
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 なんと、40年ぶりの新刊だそうです。それだけもうこの作品の持つパワーを感じますが、連綿と受け継がれてきた日本の漫画文化の底力も感じますね。すばらしいことだと思います。しかも刊行当時一時品切れになるほどだったとか。「ベルばら」世代の方はもちろんのこと、わたくしのように世代ではない人間でも買って読もうかと思わせる、それもすごい作品だと思います。


 以下、ネタバレ感想です。
 本編にも触れざるをえないので、それでもだいじょうぶという方のみ、お入りください。

 あと、わたくしいわゆる「ベルばら」ファンではありません。キャラクターの名前に様をつけたりしませんので、そういった当たりもご了承くださいませ。













 「エピソード編1」という巻タイトルがついていまして、4つのエピソードが収録されています。巻末の著者インタビューからもまだ続きが出る模様です。

 全体的に、本編の隙間を埋めるような「エピソード」ばかりで、作品としてまとまっているというよりは同人誌みたいな印象を受けました。ですが個人的にはジャルジェ将軍のその後話が読めたので結果オーライです。
 絵もやはり現役の頃の絵と比べると、筆力というか、シャープさがあった線に衰えを感じるのですが、これは仕方がないことかもしれません。これも、長年著者のマンガを読んでなかった読者にはびっくりされるのかもしれませんが、間間にほかの歴史物を読んでいるとそんなにショックというほどの衰えでもありませんでしたので、これもわたくし的にはオーライです。


■エピソード1
 アンドレのお話。
 いきなりですが、池田理代子先生の描かれる作品は女性キャラクターの方が好きです。お題などで「どの男性キャラクターが好きか」と聞かれても、その選択肢の中に自分の好きなキャラクターがそもそも入っていません。
 そんなわけで、アンドレも「献身的で誠実」とか「振り払っても振り払っても自分を好きでいてくれて、守ってくれる」とか好評で、そう言われてみればそうかなと頭では思いつつも、どこがいいのかが腹に落ちず、魅力がわからないのでした。すまん。友だちだったら好きだったろうなと思うのですが。
 そんなアンドレに思いを寄せていた幼なじみの少女クリスティーヌがいて、彼女の植えたドングリの実がやがて大きな木になりました、というお話で(そうなのか。)、著者からのアンドレへのボーナスエピソードかなと。
 もちろん、これは、クリスティーヌのアンドレに寄せた幼い頃の純粋な思いと、オルレアン公に裏切られた革命への献身が実を結んだ、ということのメタファでしょう。
 一点、気になったのは、アンドレのばあやマロン・グラッセさんは、アンドレの死後に、革命で大混乱の中、単身クリスティーヌを訪ねることができたのかというところ。本編では、病気でふせっていて、アンドレとオスカルの死が弱った体に追い打ちをかけ、後を追うように亡くなったことになっていますので。


■エピソード2
 ジェローデルのお話。
 ジェローデルって、こんな幼い頃から執拗に一途にオスカルのことを…?というお話です(そうなのか。)。エピソード1といい、著者は幼なじみ萌えなんですかそうなんですか。
 ジェローデルも一時はジャルジェ将軍に、大事な末娘の婿候補として認められたくらいなので、もう少し大人になってからのことなども掘り下げたエピソードが見たいですね。


■エピソード3
 フェルゼンのお話。
 なのですが、お話の中心になるのはルイ16世とマリー・アントワネットの長女、マリー・テレーズです。「ベルばら」ではオスカルの人気があまりにも高かったため、オスカル死後の連載は駆け足で終わらざるをえなかったそうなのですが、個人的に一番おもしろいのは実は死んだあとの、歴史部分だと思っています。
 マリー・テレーズは14歳から17歳という多感な年頃を、たった一人で3年以上タンプル塔に幽閉されて過ごします。ロベスピエール処刑後に王家への風当たりが緩和して解放されましたが、解放されたときは失語症のような状態だったそうです。その後王家で唯一天寿をまっとうした人です。
 この革命時の王家の人たちへのやりようは、現代のわたしたちから見ると、どんなに控えめに言っても非人道的で、いろいろと考えてしまうところがあるのですが、そういったところはこの外伝でも描かれませんでした。
 また、フェルゼンはマリー・アントワネット亡き後、民衆に虐殺されますが、フェルゼン編であるなら、彼がだんだんと心暗い冷酷な人間にならざるをえなかった過程などを描いてほしかったなあと思います。このエピソードでは、フェルゼンはマリー・テレーズを見て「アントワネット様に激似!!うわああん!!」って泣いて終わりなので、がんばれフェルゼン。
 そんなわけで最初から最後まで泣いてるよこの人、なフェルゼンのエピソードでしたが、わたくし的真打ちジャルジェ将軍が出ました!そして奥さまが亡くなったことがわかります。実は、ベルばらを読み終わったあと一番気になっていたのは、ジャルジェ将軍とその奥さまでした。自身はごりごりの王党派で、娘は革命派。娘亡き後、王党派からは裏切り者を出した家、革命派からは王党派と呼ばれて、どちらに転んでもつらい立場に追い込まれたであろうこの人は、いったいどうなったんだろうと。
 さらっと「身軽になりましたよ、はは」みたいなことを言っていますが、ほかの番外編では、貴族のご婦人方から、結婚して数十年経ち娘を6人ももうけたのにまだ相思相愛で、当時の貴族の慣習に倣わず、どちらも愛人を作らないなんておかしいわ野暮ですわ、と揶揄されるようなラブラブ(死語)夫婦でしたので、奥さまを失って、きっとつらかったに違いありませんよ、がんばれジャルジェ将軍。


■エピソード4
 アランのお話。
 著者はアランがお気に入りだったそうですね。
 このエピソードが一番お話としてまとまっていると思います。殺したいと思っていたほど恨んでいた相手を許し、妹を殺された(と思っていた自分)と決別し、自分を縛っていた呪いから自由になるお話です。
 オスカルの姪のル・ルーも登場します。ル・ルーは幼い頃から、母親にも「親のわたしにもわからないんだけど」「ちょっと大人を食ったようなところがあるの」と言われていて、ちょっと理屈で説明できないような直感が働くことがある子でした。それがル・ルーの周りの人を守ることになることが多く、魔除けのお守りみたいなものですね(笑)。今回も、自身と両親を守りました。
 このエピソードでもル・ルーはその不思議な力を発揮して、さらにそれがアランの救い…オスカルを守ることはできなかったけれど、オスカルが愛した人を守ることはできた、という構造になっているのがいいですね。
 そしてこのエピソードにもジャルジェ将軍が出てきます!先生ありがとうございます!あとがきによると、もっとジャルジェ将軍のことも描いてみたいとおっしゃっていますので、期待しています。平穏に生きられなくても、もしかしたら死ぬかもしれなくても、どちらも自分の信念を曲げられない、自分をだまして生きていくことができないという点で、オスカルはジャルジェ将軍の娘だなあと改めて思いました。
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by n_umigame | 2015-04-03 20:26 | コミックス | Trackback | Comments(0)
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