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*さいはての西*

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ドリームワークス・アニメーション作品 日本未公開状況

 情報は全て2015年6月9日現在です。

 映画ペンギンズの公開に暗雲がたちこめている現状ですが、日本におけるドリームワークス・アニメーション(以下DWA)作品の不遇っぷりは昨日今日に始まったことではありません。

 ご存じのように、2012年8月1日に公開された『マダガスカル3』以降、日本では一作もDWAの新作が劇場公開されていません。

 ですが、実はそれ以前から、ひっそりと公開が見送られていた作品もあります。

 日本盤ディスクが出ていないものもあり、ときどき「この作品はどうやったら見られるの?」という方を見かけますので、ここ5年ほどのDWA作品日本未公開状況をまとめておきます。
 参考に個人の感想をつけていますが、かなり忌憚のない書き方をしていますので、ご了承下さい。(中には、わたしはこれ大好きなんだけど、冷静に考えたらそう言わざるを得ないかもギリギリギリ…と血の涙を流しながら書いているところもあります…察してやってくださいませ…。)

 まとめを先に申しますと、
 配給が
■パラマウント時代が、8作中2作品日本未公開。
■20世紀FOX時代が、6作中6作(全部)が日本未公開。
 となっています。

 
 長くなりますので、たたんでおきますね。












■『メガマインド』
配給:パラマウント・ジャパン
北米公開:2010年11月5日
日本公開予定:2011年3月12日(Wikipedia英語記事)、2020年(IMDb)
日本盤ディスク:なし。配信のみ。(Amazonインスタントビデオ、iTunes Store、TUTAYA TVでHD版は購入可。吹き替えのみ。)

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・日本公開予定が、あるのはあったらしいです。東日本大震災の影響で公開が見送られたという説が、英語版のWikipediaにもソース付きで掲載されています。わたくしもそれを信じていたのですが、Twitterでフォロワーさんに教えていただいたところ、前売り券の発売などがなかったそうなので、震災とは関係なく公開中止になった可能性が大。
・結局、なぜ公開されなかったのか、不明。東日本大震災後に公開された『マダガスカル3』では、原子力エネルギー(と自殺)についてのセリフが吹き替えでは大きく改変されており、字幕もしかりでした。ですが、公開自体はされていますので、その当たりの問題というわけでもなさそう。(字幕を担当された方のエッセイによれば「変えてくれないと公開できない」と言われたそうです。)
・IMDbではなぜだか2020年公開予定になっています。(これ根拠はどこなんだ。)
・DWAが、会社自体が危ない状況なので、はらはらしつつ2020年を待っています。
【個人の感想】★★★★
 DWA作品の中でもめずらしくロマンスが秀逸な作品。(個人的には随一だと思っています)それ以外でもDWAらしいテーマで貫かれている佳作で、内容からもアメコミ流行りの昨今、まったく問題なく受け入れられるのではないかと思います。今からでも遅くないのでぜひ公開されてほしいです。
★視聴したい場合
①Amazonインスタントビデオ、iTunes Store、TUTAYA TVのいずれかで配信レンタル(吹き替えのみ)
②Amazonインスタントビデオ、iTunes Store、TUTAYA TVのいずれかでHD版購入(吹き替えのみ)
③US盤Blu-rayなどを購入する。(日本語なし)
④2011年頃、WOWOWで字幕版、吹き替え版が放送されたそうなので、またCSなどで放送されるのを待つ。ただし、そもそも放送されるかどうかは不明。



■『ガーディアンズ:伝説の勇者たち』
配給:パラマウント・ジャパン
北米公開:2012年11月21日
日本公開予定:あった模様
日本盤ディスク:DVDのみあり

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・「不思議の国のガーディアン」という邦題がついていた時期もあり。(※http://www.kotaku.jp/2012/11/new_dreamworks_animation_rise_of_the_guardians.html ほか)
・Twitterなどで教えていただいた情報によりますと、国際線の機内で上映されていたらしい。上記の邦題はその機内上映のときの邦題だったとか。(※ソース未確認のため正しくない可能性もあり)
・配給会社が、ちょうどパラマウントから20世紀FOXへと、世界的に変更になった時期でもあります。パラマウントとの契約は、2012年12月31日まで。
・日本未公開の理由は、①配給変更のごたごた ②興収が大コケした(当時の日本円で87億円の赤字)ため
と言われているが、興収は関係ないと思われます。
・DVDしかリリースされなかった理由もまことしやかに「コケたから」と言われていましたが、もっとコケた作品もちゃんとBlu-rayが出ているところを見ると関係ないと思われます。(DWAの興収と公開、未公開、ディスクのリリース化については別記事にまとめます。)
・結論としては、これも公開されなかった理由は不明。個人的には、配給変更でもめたことが大きかったのではないかと考えています。
【個人の感想】★★★
 DWA作品にはめずらしく主人公が美形なせいか、特に女の子に人気があるようです。二次創作界隈でもD作品とのコラボや、ヒックとのコラボなどクロスオーバーが目立つ作品でもあります。(中にはD社作品だと思っている人もめずらしくない模様…それでDWA作品を観てくれるようになるなら、誤解されててもいいですけどね…。)
 映像がたいへん美しく、楽しい作品です。ですが、虚心に見て、DWA作品の中では全体的に何もかもがもったいない作品と申しますか…。
 個人的には、DWAらしい毒っ気がないこと、(サンタの入れ墨など)多少あってもそれが機能していないこと、表面の美しさに引きずられがちな印象がDWAの目指すところとズレいてるように感じ、違和感が拭えないことなどがあります。(表面的な美しさだけを良しとする、という姿勢は、DWAがずっと否定してきたテーゼでもありますので。) 『マダガスカル3』の神がかり的と言って良いほどの演出を観てしまった身としては、90分程度の尺なのに演出がもたつくところがあるのも残念に思います。
 興収がふるわなかったのは、この「DWAらしさ」を求めて見に行った敏感な層に、「何か違う」「何か物足りない」「キレイだけどね」と思わせてしまい、取り込めず、リピーターを生まなかったことがあるのではないかと感じています。悪役が魅力的なので、なおさらもったいない。もっと面白くなった作品だったろうと思います。



■『クルードさんちのはじめての冒険』
配給:20世紀FOX
北米公開:2013年3月22日
日本公開予定:なし(ディスクスルー)
日本盤ディスク:Blu-ray、DVDあり(2013年11月リリース)

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・この作品から配給が20世紀FOXに変更。
・20世紀フォックスに変更になってから、日本では、ドリームワークス・アニメーション作品は一作も公開されていません。
・DWAのシリーズものではない単体作品としては『カンフー・パンダ』(シュレック除く)に次ぐ大ヒットとなっています。にも関わらず日本で公開されていないので、やはり興収は関係ないと思われます。
・それでもBlu-rayがリリースされているだけまだまし。(´;ω;`)
【個人の感想】★★★★+
 傑作です。むっちりもっちっり垢抜けないスタイルの原始人デザインからしてもうご機嫌な作品ですが、HTTYDのチームが作ったということもあり、「言葉が通じない生き物との心の交流」を描かせるとずば抜けています。架空の動物たちがとても魅力的です。
 『アナと雪の女王』が同じ回のアカデミー賞にノミネートされたのが印象的です。アナ雪では引きこもりソングが大ヒットした一方で、「クルードさん」はその反対に、「隠れるな。生きろ」という強いメッセージをぶつけてきました。それが、何の屈託もない(不幸を知らない)キャラクターに言わせたのではないところが本当にDWAらしい。ゲラゲラ笑わせておいて不意打ちで泣かせてくるところもDWAらしい。DWAのこういうところが大好きです。
 怒濤の伏線回収ラッシュも絶妙なテンポの演出で、見終わったあとのカタルシスがものすごい。やはり、見終わったあと「ああ、楽しかった!」という体験をすると、すぐ「おかわり!」となり、リピーターを生み、ヒットするということなのでしょう。脚本と、その練り込みって大事なんだなあと実感しました。
 中年男性(思春期の子どもを持つお父さん世代)の成長物語でもあるところがDWAらしい。どこまでおっさん萌えターゲットなんでしょうか。大好きな作品のひとつです。



■『ターボ』
配給:20世紀FOX
北米公開:2013年7月17日
日本公開予定:なし(ディスクスルー)
日本盤ディスク:Blu-ray、DVDあり(2014年4月23日リリース)

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・こちらも当然のようにディスクスルー。だんだん雲行きがが怪しくなってきたのを感じ始めたのはこの『ターボ』辺りからでしょうか。「またディスクスルー?」しかも「全然公開されるきざしがない」と。
・「Blu-rayがリリースされているだけまだまし」と思っていたけれど、その順調さ(?)も2作品だけだったことがあとでわかりました。
・大コケした作品ではあります。続けて、次の"Mr. Peabody & Sherman"も追い打ちをかけたため、DWAが投資家筋から会社自体の存続を危ぶまれ始めたのもこの辺りから。その際、必ず『ガーディアンズ』の大コケを引き合いに出されるので、市場的にはケチがつきはじめたのは『ガーディアンズ』、という認識らしいです。
【個人の感想】★★★+
 正直なところ、初見の感想は「わたしは好きだけど、コケたのわかるわ、もったいない」でした。
 作っている方がすごく楽しんでるということが伝わってくるのですが、最初はそれがかえって痛い。
 この作品も、DWAらしさが随所に見られてファンには楽しい作りになっているのですが、それを隅々まで味わおうと思うと最低でも2回は見たい。ですが、2回目を見ようという気がなかなか起きなかったのでリピーターを生まず、こけたのではないかと。
 『ガーディアンズ』のように「キレイだけど、なんだかな」という感想ではなく、DWAらしいし、いろいろ美味しい味が入っているのだけれど、料理としてうまくないというか、歯車がうまく回っていない。パーツはいいのだけど全体として機能していない、そんな印象です。
 ただ初見からいきなりお兄ちゃんのシーンでは泣かされましたし、カラスの扱いひどすぎシーンの数々にはご近所迷惑なくらい笑いました。
 音楽もいいし、素材は決して悪くない。だんだん「あれっ、これ面白いじゃん」と2度目くらいから「発見」する。きちんと出汁を取って美味しい味が入っているので、繰り返し見ているうちに味が出てくるスルメのような作品です。
 だから本国でTVシリーズも始まり、ちゃんとTVシリーズのDVDもリリースされたのではないかと思います。今では大好きな作品のひとつです。



■"Mr. Peabody & Sherman"
配給:20世紀FOX
北米公開:2014年3月7日
日本公開予定:なし(未定)
日本盤ディスク:なし
日本国内の配信サービス:なし

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・今一番気の毒と言っていい"Mr. Peabody & Sherman"(以下「ピーボディ」)です。
・『ヒックとドラゴン2』の直前の作品だったこともあってか、日本では言及している人をほとんど見かけません。順番から言えばこちらが先にもかかわらず、「公開して欲しい」とか「ディスクはどうなったの?」と心配している方は、わたくしが把握している限り、ほんの少数です。
・国際線の機内上映があり、そのときの邦題は『ピーボ博士の時間旅行』だった模様。これもTwitter上で拾っただけなのでソースが貼れず、申しわけありません。
・『ガーディアンズ』のときも『不思議の国のガーディアン』という邦題が先に出ていましたので、変更になる可能性も高し。
・タイミング的に『ヒックとドラゴン2』の日本公開希望の気運にすっかり押されて影になってしまい、そのせいか、すでに日本語が収録終了しているにも関わらず、日本公開どころか日本盤ディスクがリリースされるきざしもありません。
【個人の感想】★★★+
 とは言え、これも『ガーディアンズ』『ターボ』に続き、興収がふるわなかったのが何となくわかる作品です。脚本と演出に練り込みが足りず、カタルシスに欠ける。DWA作品の中では平均点辺り、というのが、冷静な感想かと思われます。DWA作品の傑作は本当にずば抜けた傑作なので、平均点と言っても高いんですけれどもね。
 だいたい、DWAのひと、犬、あんまり好きじゃないでしょうってのがだだ漏れです。一部大好きな監督さんもいらっしゃいますが(ディーン・デュボア監督とか)、ネコ好きと鳥好きの巣窟。いいんだけども。
 テーマはとても熱く、この作品もDWAお得意の「逆転の発想」がメインになっており、実は親世代(この場合ピーボディですが)の成長物語になっているところがどこまでおっさん萌えターゲット以下略。
 子どもを連れて観に来ているお父さんお母さん世代への、様々なメッセージも感じます。親だからと言って(ピーボディのように)何でもパーフェクトで一流でなくてもいい。子どもが求めているのはそんな親じゃない。親の役目、家族の役目は、血がつながっていようといまいと、愛しているということ、自分にとってあなたに代わる人はいないということを、きちんと伝えること。
 本当はそれだけで十分なんだよ、というメッセージを繰り返し感じ、親(=お金を出す人)狙いあざとい。じゃなくて(笑)、子育てに悩むお父さんお母さんにも、映画を観ている間は肩の力を抜いてね、という良い作品だと思います。
 こういう、相手が子どもだからと言って、上から「教えてやる」という視線ではなく、子ども(あるいは守るべき相手)からも教えてもらえることがたくさんあるというメッセージがあふれているところは、DWAの、あるいはアメリカ映画のいいところだと思います。
 これは映画ペンギンズにも引き続き通底するテーマになっています。
★視聴したい場合
・US盤Blu-rayに日本語吹き替え・字幕が収録されているので、それを個人輸入する。(US盤Blu-rayのリージョンは日本と同じなので、日本のデッキで再生できます。)



■『ヒックとドラゴン2』
配給:20世紀FOX
北米公開:2014年6月13日
日本公開予定:なし
日本盤ディスク:Blu-ray、DVD(2015年7月3日リリース予定)

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・ゴールデン・グローブ賞、アニー賞のダブルクラウンに輝くも、事実上ディスクスルーとなりました。
・2015年3月のTAAF(東京アニメアワードフェスティバル)で上映されてから、どういうわけか無料上映会がぼろぼろと続いています。「無料」ということは、どこかが権利料を負担しているということで、そんなことをするんなら、もう、ふつうに劇場公開してわたしたちにお金を払わせてほしいと、痛切に願います。最悪、「3」公開までに「2」を公開してくれたらそれでもいいので。
・ただ、ディスクが出たあとに高いお金を払ってまで劇場で映画を観るのは、本当に作品のファンか、音響や画質などに色々とこだわりのある映画ファンだけだろうと思うので、興収的には厳しくなるかと思いますが。
・無料上映会が続くことが、果たして今後DWA作品が日本で公開されるために良いことなのか、個人的には疑問に感じる部分もあるですが(クリエイターさんたちは「日本で次々と上映されていますよ、タダで!」「上映されますよ、先着/抽選限定で!」って言われてうれしいかな(´・_・`)とか)、とにもかくにも作品を見てもらわないことには何も始まらないので、静観しつつ影ながら応援するスタンスでいようと思います。
・『ヒックとドラゴン2』だけDWA作品の中で異様に目立っている状態なので、一過性のブームで終わらないことを祈っています。わたくしの希望、目標は、一作だけ盛り上がって花火のように消えることではなく、ドリームワークス・アニメーションというスタジオそのものの認知度が上がることと、その底上げです。
【個人の感想】★★★★+
 US盤Blu-rayで鑑賞。(その後フランス盤で日本語字幕、吹き替えでも鑑賞)
 一作目が傑作だったため、完成度という点ではやはり一作目の方が高いと思います。ですが、わたくしはこの2作目が大好きです。むしろ2作目の方が好きです。
 このシリーズはすでに3作で完結することが決まっており(ディーン・デュボア監督がそう名言されています)、原作の最終巻も今年の9月にイギリスで刊行されます。「ドラゴンがいなくなった世界を、老齢のヒックが振り返って思い出話として語る」という物語のスタンスからもわかるように、最終的にドラゴンがいない世界が描かれることもわかっています。
 その3作目に向けて、おそらく、かなり力をセーブしてるな(これでも)というのが初見の感想です。技術的にも、素人目にも一作目の比ではなく、DWAの十八番であるダイナミックなアクションシーンも爽快で、DWAファンの信頼を裏切らないヴィランへの落とし前のつけ方など、一本の映画作品としても非常に気持ちのいい作品だと思います。
 ただ、前作を見ている方が絶対良いところ(=つまり観客を選ぶ)や、だから自分のDWAオールタイムベストは(傑作にもかかわらず)このシリーズにならないのだなと改めてわかったところなどもあり、それについては改めて感想をアップしたいと思います。



■"Penguins of Madagascar"
配給:20世紀FOX
北米公開:2014年11月26日
日本公開予定:なし(未定)
日本盤ディスク:なし

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・これまで当ブログでお伝えしてきたように、2014年の年末頃に『ペンギンズ FROM マダガスカル』という邦題で、2015年秋頃(一説には9月)に公開予定でしたが、どうやら、少なくとも年内の公開はなし、DWA作品への配給の風当たりを思うと、この先も公開される可能性は低くなったというのが、実情かと思われます。
・断腸の思いです。
・なぜかと申しますと、これまでもお伝えしてきたように、ペンギンズ一作だけの問題ではないからです。
・NHKのEテレという、全国的に非常に波及効果の高い媒体で放送されていたTVアニメの影響で、ペンギンズというキャラクター自体になじみのある子どもさんと、その親御さんが比較的多かったであろうということ、そして今旬の俳優であるベネディクト・カンバーバッチのファンが日本でも多いということで、その話題性でお客を呼べるだろうという算段が、配給にもあったのではないかと思われます。そうでなければ、続編の『ヒックとドラゴン2』をスルーして、ペンギンズを公開する理由が思い当たりません。(本当にペンギンズのファンか)(ファンだからこそ言ってるんです!(涙)) ですから、これは本当にDWA作品が日本で公開再開する絶好のチャンスだった可能性が高かったのです。
・事実、自分の身の回りで、ペンギンズは知っていても、『ヒックとドラゴン』を見たことがあるという人に会ったことがありません。(原作を知っている人はいましたが)NHK(地上波放送)すごいなと素直に思いました。
・ですので、この作品の公開を見送るということは、(あくまで相対的に、ですが)認知度、知名度という点で不安の残る他の作品は、ますます公開される可能性が下がったと思わざるを得ません。
・映画ペンギンズも大コケしたと言われていましたが、現時点で見てみると、興収はヒットしたと言われた『メガマインド』、今年快調の"Home"より上です。
【個人の感想】★★★+
 US盤Blu-rayで鑑賞。
 心の声は、本当は★★★★★なのです。
 なぜなら、マダガスカルシリーズはわたくしにとってDWAオールタイムベストだからであり、なぜそうなのかを改めてこの映画ペンギンズを見て思い知ったからです。ですが、頭の声(理性)の感想としてはやはり★★★+。マダガスカルチームの実力はこんなもんじゃないだろうという、脚本の練り込みの浅さ、作り込みの弱さがあちこちに見え、残念でなりません。
 ほかに、監督の問題(ダーネル監督を戻すなら、いっそマクグラス監督も戻してほしかった!)や、公開が半年も前倒しになったこと、公開時期の問題、TVシリーズの功罪などいろいろと言いたいことがありますが、それは改めて感想をアップしたいと思います。
 作品自体の感想としては、やはりこの映画ペンギンズも、一番未熟な新人(Private)の成長物語と見せかけて、実は保護者世代、おっさん(隊長;Skipper)の成長物語という二重/逆転構造になっていて、そこがすばらしいということです。成長期にある子どもが見ても、大人になっているはずの世代が見ても、感情移入しながら、教えられることがある映画です。本当にどこまでおっさん萌えターゲット以下略。
 また、ヴィランとの落とし前のつけ方がとてもマダガスカルシリーズらしく、そこも気に入っています。このヴィランは、もしかしたらDWA史上、一番かわいそうなヴィランかもしれません。
 先にノベライズを読んでいましたが、やはりいろいろと変わっていましたね。
 ペンギンズファンとしては萌え燃え要素満載なので、やはり外すわけにはいかない一作です。


■"Home"
配給:20世紀FOX
北米公開:2015年3月27日
日本公開予定:なし(未定)
日本盤ディスク:なし

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・2015年は、DWAの長編新作は、この一本しか公開されません。
・映画ペンギンズの興収が期待どおりでなかったため赤字を出し、『ガーディアンズ』のときに続いて再度大規模レイオフと、今度はその上、PDIスタジオの閉鎖、自社の敷地、社屋が抵当に入るなど、DWAがたいへん不景気な経営状態になったからです。
・"Home"はノンシリーズものということもあって、公開前の下馬評では、興行的には失敗するだろうと言われていました。また、作品自体も、批評家のレビューでは非常に辛(から)いものばかりでスタートしたのですが、実際に公開されたら大ヒットとなりました。これはカッツェンバーグCEOも予想していなかったようで(自社作品を信じましょうよ、CEO…。)結果オーライとなりました。少しでも稼いでくれないとDWAという会社自体が無くなる(=倒産する、解散する)可能性もあるため、本当によかったです。
【個人の感想】
 未見。7月にUS盤Blu-rayがリリースされるので、それで見る予定です。

 英語のhomeとは、非常に含蓄の深い言葉です。単に「家」という意味だけでなく、故郷、自分がいても良い場所、帰ることができる場所、自分を待っている人がいる場所などなど、さまざまなあたたかいイメージが浮かぶ言葉です。
 DWA作品は、アイデンティティ・クライシスと向き合う主人公が、自分は誰なのか、本来いるべき場所はどこなのかを問う物語が多いです。安易な言葉で言うといわゆる「自分探し」ということになってしまうのですが、成長過程にある若い/幼いキャラクターだけでなく、もう大人のはずの年代のキャラクターが、そのテーマを担っていることもめずらしくありません。社会やコミュニティの中で「変わり者」「はみ出し者」だったり、安住の場と思っていた場所を失ったり、決して恵まれているとは言えない条件で人生のスタートを切ったひとが、自分の居場所を見つけていくという物語が多いのです。
 彼ら/彼女らの人生は決して平坦ではなく、むしろつらいものです。(コメディの皮を被っているのでいつもだまされそうになりますが)
 翻訳者の清水真砂子さんが「児童文学とは、”それでも人生は生きるに値する”ということを描く物語である」とおっしゃっていて、とても好きな言葉です。「それでも」であって「だから」ではない。この見方で言うと、DWA作品は児童文学のセオリーどおりです。人生はつらい。それでも、人生は生きるに値する。
 カッツェンバーグCEOは、「ディズニーは子供と、大人の中にある子供心に向けて映画を作るが、ドリームワークスは大人と、子供の中にある大人心に向けて映画を作る」と言ったそうです。その言葉のとおり、大人になってからも生きづらさを抱えている人にも、DWAの作品は一種の清涼剤のような役目を果たしていると思います。大人になってからでも、抱えているものを少しずつ、笑ったり泣いたりして癒やしていけばいいのだというメッセージを繰り返し感じます。
 "Home" とは、だから、DWAの満を持したタイトルだと思いました。批評家のレビューは辛かったですが、見る前から傑作の匂いしかわたくしは感じません。DWAは相対化してみせるのがうまいので、宇宙人が出てくるということは、「人間とは何か」を問う物語でもあるのではないかと、それも期待しています。
by n_umigame | 2015-06-09 18:12 | 映画・海外ドラマ