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「越前敏弥さんトークイベント エラリー・クイーン翻訳秘話」レポ

7月25日(土)に紀伊國屋書店グランフロント大阪店の主催で行われたイベントに伺ってまいりました。
越前敏弥氏のトークイベントに参加するのはこれが2回目。前回の感想はこんな感じでした。


今回もまた前回みたいな感じなのかなあと一抹の不安を覚えたものの、もういいや、だってお題がエラリイ・クイーンなんだもん。それ以上の理由はいらないよ? と飛び込んでまいりました、以下、レポ&感想です。

首都圏でも秋以降に同様のイベントが開催予定とのことで、今から参加予定の方にはいわゆる「ネタバレ」になるかもしれません。念のためもぐっておきますね。

越前先生のブログでもご案内があります。
『中途の家』刊行/「国名シリーズ プラスワン」完結

https://twitter.com/t_echizen/status/624956642153463810
当日は有栖川有栖先生もいらっしゃった模様です。ぜんっぜん気づきませんでした…。



ご了解済みの方は「more」からどうぞ。












終了時間の記載がイベント案内にはなかったのですが、午後6時半開始、午後8時終了の1時間半でした。お題どおり、主にKADOKAWA(角川書店)と早川書房から刊行された新訳についてのお話です。

前回と違って、参加者の男女比がいい感じでした。(前回はなぜか女性がほとんど)
あとびっくりするくらい平均年齢高そうでした(笑)。

そ、そうか……エラリイ・クイーンの熱心なファン層って、これくらいの年齢層なんだ…。自分もかなりいい年だと思っていたのですが、今まで読書会とかオフ会とか生身の人にお会いする機会がなかった上に、自分のうすい本を買ってくださる方はたいてい若いお嬢さんだったので、新鮮でした。

つまりそれだけ筋金入りのファンの方が多かったということで、お話の中で「"SRの会"の"SR"って何の略だろう」という疑問にも、すぐに前列の方から挙手があって「Shield Roomです」と音速で回答が。(そうだったのか…!)クイーンの本をごっそり持ってきて、話題のつどつどに出して確認をしている方もありました。重くてたいへんだったろうに、すごいよ。とても勉強になりました。この後、参加者の方で二次会してお話聞けたらさぞかし濃密で暑苦しくて楽しかったろうなあと思いました。わたくし、飲み専聞き専で。


講演の内容はこんな感じでした。以下箇条書きで失礼します。

・シリーズ物はどんどん出す方がいい。なので、最初はコンスタントに3ヶ月置きに刊行。途中でダン・ブラウンのお仕事が入ったので中断したけれど。

・角川の国名シリーズは、最初は5作だけで、それが売れたら残りの5作も出すという予定だった。(さすがに最初から10作は企画が通らない)「ローマ~」「フランス~」の重版が決まり、ほぼ平行で新訳を刊行している創元推理文庫も重版された。

・『九尾の猫』より先の新訳刊行の予定は未定。

・ダネイとリーについて。そっくり。でもリーの方が髪の毛が多い。(わたくし、クイーンさんズをそんな目で見たことなかったです……。)

・ドルリー・レーンシリーズ『Xの悲劇』で新訳を開始するときは、過去の翻訳に乗っかるつもりだった(笑)。いざとなったらつぎはぎして何とかなるだろうとか思っていたけれど、現在の時点で見直すと、ミスや問題点が多くてそれはできなかった。

・ミスや問題点が多いとは言えど、現在と違ってインターネットもなく、翻訳に必要な資料に容易にアクセスできない環境の中で、当時としては最高の翻訳だったことは間違いない。

・宇野利泰氏訳→親切な訳、つまり文章が長い。(説明が長い。確かに物理的に分厚いのですよね、宇野氏訳の本だけ)

・レーンの描写、half ruffed grouceについて。(これについては、クイーンの原文がそもそもアレなんじゃないですかと思いましたです…。回りくどいわりに肝心なことがわかりにくいという)

・サム警視とブルーの地方検事がいつもいっしょにいるのが謎だ。(これはクイーンが、S・S・ヴァン=ダインのファイロ・ヴァンスシリーズを踏襲/意識しているからだと思います。キャラクターの配置が、探偵+地方検事+警察官。)

・エラリー・クイーンシリーズについて。東京創元社が「~の謎」で刊行していたので、「秘密」にした。

・カバーイラストはやはり賛否両論だった。けれどもTwitterなどを見ているとジャケ買いしている人も多い。エラリーがチャラいけど。若い人に読者層を広げるためにはよかったと思う。チャラいけど。(と、カバーイラストのエラリーチャラいと繰り返しおっしゃっていて、笑いました。)

・エラリーのタメ口について。「この時代に父親にこんな口のきき方をする息子はありえない」という意見も寄せられたが、国名シリーズの頃のエラリーはとにかく生意気なやつなのでこれでいいと思った。(これについてはわたくしも大賛成です。そもそも、父親には丁寧語で話すのに、父親の部下やほかの目上の人にタメ口で話す旧訳は、日本語の生理に合わないというか、慣習としておかしいです。これについては以前ブログにも書きましたので、詳しいことはこちらをご参照くださいませ。)

・でもこのエラリーのタメ口は、次の『九尾の猫』で変わるかも。

・度量衡の訳について。ドル、セントは英語のまま、華氏・摂氏は必ず摂氏に換算して訳すが、フィート・インチ、ポンド・オンスは割れている。

・カバーイラストは途中からリクエストを出すようになって、「エジプト~」のときはプールサイドのエラリーにしてって言ったけど通らなかった。(なんという残念な。)「チャイナ~」はクイーン父子とジューナの食事シーンがいいと言ったけど、バランスが悪かったらしく現行のイラストに。

・Halfway Houseのタイトルの訳について。

・『災厄の町』がシリーズ中一番好き。

・Calmity Townは来年カナダで舞台化される。

・『九尾の猫』を新訳で出すならぜひ『十日間の不思議』もという希望があった。(そうでしょうね。)次に新訳を出すなら「十日間~」を出したい。


という感じで、あっという間の1時間半。とても楽しく充実した時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。


■当日配布・紹介された資料など。

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配布物。関西エリアの読書会の案内と、クイーンがお題だったときのレジュメなど。サイン会もあったのですが、前回サインはいただいたので、今回はご遠慮申し上げました。

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でももちろん、当日発売されたばかりの『中途の家』はGET。「ローマ~」が2冊あるのは、1冊は前回のイベントの際にサインしていただくために改めて購入したからです★

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当日紹介された資料。左から、
①”Blood Relations: The Selected Letters of Ellery Queen 1947-1950”
ダネイとリーがちょうど『九尾の猫』を執筆中だった頃の書簡集。今ならKindleで357円、Amazonプライム会員なら無料で読めますぜ、お客さん。

そういうおまえは読んだのかと問われると、
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……なんか最初の方だけ付箋貼ったあとが。今改めて内容をパラ見しましたが、これはクイーンファンには宝物のような一冊です。だからがんばれ、わたし。

②『エラリイ・クイーンの世界』フランシス・M.ネヴィンズ Jr.著/秋津知子訳(早川書房)
現在品切れ。フラットで良い評論集だと思います。

③『エラリー・クイーン論』飯城勇三著(論創社)
著者は、EQFC会長で、新訳クイーンの充実の解説でもおなじみの飯城勇三氏。
FCの末席を汚す身の上で会長に向かって申しわけありませんが、かなりのマニア向けです。
作品のネタバレがあるということもありますが、ファンのひいき目が強すぎて、引いてしまう人もいると思われます。かく言う自分も、クイーンは好きですが、好きだからこそ、ファンの裾野を広げるためにも、ごりごり褒めればいいというわけではないと思っています。

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左から、
①『エラリー・クイーン Perfect Guide』飯城勇三著(ぶんか社)
②『エラリー・クイーン パーフェクトガイド』飯城勇三著(ぶんか社文庫)ぶんか社

②は①の改訂増補・文庫版です。内容的にはほぼ同じですが、②の方が充実しています。現在どちらも品切れ中。イベントでは文庫版だけ紹介がありました。
①が出たときJETさんの表紙が物議をかもした(笑)のを覚えています。国名シリーズの頃の生意気でチャラいむっつりスケベのくせにエエカッコしいのエラリイの雰囲気が良く出ていると思うのですが、頭悪そうというご意見もありました。でも個人的に「エラリイってほんとに頭いいのか」と思うこともなくはなかったので、それも含めていいのではないでしょうか。(そうなのか。)

内容は、やはり、ひいきの引き倒し的なクイーン万歳なところが多少ひっかかりましたが、クイーンに関するデータベースとしてこれ以上のものが出ていないので、絶版は残念です。

イベントではご紹介がなかった中では、評論集ではないのですが、クイーンのエッセイとしてこちらもおすすめいたします。
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『クイーン談話室』エラリー・クイーン著/谷口年史訳(国書刊行会)
こちらは現在在庫有りの模様です。



***

以下、余談です。

いや、しかし、関西でクイーンのイベントが行われる日が来るなんて、ファンになったときは思いもしなかったですよ。今回は、これが最後になるかもしれないし(おい)行こうよ行こうよと自分を励まして申し込みました。
「座って先生のお話を聞いてるだけのイベントだろ、なんでそんなにハードル高いんだ」ですって?

だって、今回は、受付開始時間前なのにちゃんと会場開いてるよ。(前回参照)狭い入り口に誰もたむろしてないよ。(前回参照)前回は階層がわかりにくいグランフロントの中をてくてく突っ切って、たどりついたと思ったら受付時間過ぎてるのに誰も受付してくれてなかったし(しつこいよ)、チケットもぎりの書店のスタッフさんがシフトに穴埋めで入ってオール勤務連続何日目だと思ってるんですか?みたいなお疲れのご様子だったのに(おい)、今回は途中で案内のスタッフさんがいるわ、そのスタッフさんがまぶしいくらい愛想がいいわ親切だわ、もぎりのスタッフさんも元気だわ笑顔だわ、売店のスタッフさんもさわやかだわ可愛いわ、学習したんですね。(ちょっとちょっと。)
早めに行ってもまたアレかもなと、ぎりぎりまでうきうき立ち読みし回っててすみませんでした紀伊國屋書店さん。(買えよ、本。いや買いましたけど。)
案ずるより産むが易しだね。(もう黙れ。)

受付、侮るなかれ。全然その後の印象が違います。

次回もまた楽しみにしております。
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by n_umigame | 2015-07-29 21:22 | *ellery queen* | Trackback | Comments(0)
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