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『『罪と罰』を読まない』岸本佐知子ほか著(文藝春秋)


抱腹必至。読まずに語り、読んで語る読書会
翻訳家、作家、作家であり装丁家の四人が名著『罪と罰』の内容を僅かな手がかりから推理、その後みっちり読んで朗らかに語り合う。
「読む」とは、どういうことか。何をもって、「読んだ」と言えるのか。ドストエフスキーの『罪と罰』を読んだことがない四人が、果敢かつ無謀に挑んだ「読まない」読書会。
(Amazon.jp)

岸本佐知子、 三浦しをん、吉田篤弘、吉田浩美、4名の方の座談会方式で、『罪と罰』について、まずは未読の状態で一部(と言っても本当に1~2ページだけ)を拾い読みし、あれこれと推理をめぐらせながらああだろうこうだろうとツッコミまくり、次に読後に答え合わせをしながら、ああだろうこうだろうとツッコミまくるという、たいへん愉快な本です。
というか、もうこの面子でこの題材でおもしろくないわけがないですね?

今内容紹介を引用させていただくために見たら、あまぞんさんのレビュー欄、地味に荒れてますね?(笑)(2015年12月20日現在)
いや、わたくし、この本、めちゃくちゃおもしろかったですけど。

教養主義が廃れて久しく、大学では文系教養課程を廃止してしまえとか、文系の学部名もいかにも即物的な(あるいは何を勉強するのかわからないようなイメージ先行の)名称に改名されたりして、実学にあらざれば学問にあらずという現在の風潮には、わたくしも危機感を覚える一人です。
「すぐ役に立つ知識はすぐに役に立たなくなる」と言っている方があり、この言葉には深く頷きます。

ですが、この本の面子を見、さらにタイトルを見て、それで「『罪と罰』すら読んだことがないってどうよ」という感想は、やはり筋違いかと思います。肉屋の店頭で「ここは大根も置いてないのか!」とキレられても困るというか、そういう芸風を披露する場じゃないというか、読んでいないことが後ろ暗い(笑)からこそ、こういう企画が持ち上がり、しかもそれが、文芸翻訳家だったり作家だったりするから面白いのではありませんか。
そのギャップを楽しむ本だと思います。

事実、読もうと思ったら、皆さんお忙しい御身の上でしょうに、またたくまに読んで、それをこれだけ突っ込めるくらい読み込んでくることができる方々なのですから。

そして、このある意味捨て身の芸(笑)は、『罪と罰』を未読の読者に読みたいと思わせれば成功だと思いますが、それも成功していると思います。

これだけ本離れ、活字離れが叫ばれている中で、
「そんな本も読んだことないのか(冷笑)」
と言われるのと、
「わたしも有名すぎてかえって読んだことがなかったんだけど、読んでみたらけっこうエンタメでさ、すごくおもしろいの! さすが世界の文豪の傑作だよね!」
と言われるのと、どちらがその本への興味や、読書のモチベーションが上がるか、火を見るより明らかだろうと思われます。
よほど負けん気が強いとか、踏んづけられたら燃えるとか気持ちいいとかいうシュミの方は別でしょうけれども。「そんな本も(冷笑)」派が、本離れに拍車をかけている可能性もなきにしもあらずです。
「北風と太陽」ですね。


Twitterで読書会の常連の方々や、本が好きな方のアカウントを複数フォローさせていただいているのですが、思ったのは、人生の時間は有限で、そんなに本ばかり読んでもいられないし、それでいいのだということです。
そして、いくら本が好きな人でも、好みもあります。好きだからこそ、自分の好きな本がもうだいたい見えてきてしまっているということもあります。
賞を取ろうがエライ先生が大絶賛してようが、今話題だろうが映画化されようが、どうしても食指が動かない本というのがある。

そして本読みの方には同意していただけるかと思いますが、機会に恵まれたかどうかということが、けっこう読書体験を左右します。

つまり、本とは「出会う」ものなのであって、いくら名作・傑作の呼び声が高い作品でも、自分がその本から「呼ばれ」なかったので長年読まなかったということが、いくらでもあるということです。giftsでありcallingsでもあるのですね。

そういうおまえは『罪と罰』読んだのかって? もちろん読んでいませんとも。(どや。)(コッラー!)
『罪と罰』どころかあれだけ『カラマーゾフの兄弟』が流行っていたころすら、いっこも気持ちが揺れませんでしたからね。

わたくしにも教養主義というか、「これだけは読まないとな世界の名作」みたいな時期がありました。
ですがそれも高校生くらいまででしたね。
しかもそのころなぜかクラスでフランス文学が流行っていて、『赤と黒』『狭き門』などあれこれ読みましたが、根がエンタメなわたくしは『三銃士』から大デュマ先生にめろめろになってしまい、文学青年だった祖父に「デュマなんか大衆小説や。そんなんばっかり読んで」と叱られる始末。(岩波文庫のピンクのカバーのやつならいいと思ってたんですよ当時は…。)
大学生のころは英文とアメリカ文学ばっかり読んでいて、もちろん平行して中学の時はまったSF、ミステリばかり読んでいて、今に至るというわけですよ。(どや。)(だからコッラー!)
児童文学は大人になってから改めて読み始めましたしね。子どものころも少しは読んでいましたが、子どもが歩いて行ける距離に図書館も本屋もなく、小学校の図書室か、親が買ってくれていた本棚にあった本を繰り返し読むしかなかったのです。(中学は図書室がしょぼすぎて話になりませんでした。)

そんなわたしでも、この本のおかげで、ぜひ『罪と罰』を読んでみたいと思いました。
生前祖父も「読めー読めーロシア文学読めー」って言っていましたしね、やっとその気になったわ、おじいちゃん。不肖の孫ですまん。
親族に言われても1ミリもわいてこなかった読む気がわいてきたのですから、この本に感謝です。
遠くの親戚より近くの他人ですね!(きっと違う。)




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by n_umigame | 2015-12-20 21:45 | | Trackback | Comments(0)

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